転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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163・わたしのIはなんのアイ

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 城壁の一角から飛び出した、円形の物見塔。長いらせん階段を上った先の屋上には、城下町を見下ろす展望台がある。中天を過ぎてなお強烈な日が当たるその場所に、サフィールは俺を連れてやってきていた。
 塔と言っても高さ自体はそれほどでもない。現代の建物と比べたら、5、6階建ての駅ビル程度だろうか。けれどそもそもこの世界では、二階建て以上の家すら珍しい。周囲の平坦さと比べれば、この高さでもちょっとしたもんだ。
 胸の高さにある手すりから、身を乗り出して下界を見渡す。三角屋根の家々と、その向こうにはきらめく海。反対側には濃い緑の森が広がっている。ほー、と声を漏らしながら眺めていると、後ろからサフィールが声をかけてきた。

「良い施設だろう。過去軍事用として使われていた場所だが、現在は日によって一般市民にも開放している」
「んー、いいねえ、絶景絶景。あ、この望遠鏡は星見る用?」
「そうだ。以前の星見会でも使ったものだな」
「あー、アメティスタ呼んでたやつね」
「ああ。そう言えばあの時はなぜか、途中で全員が居眠りをしてしまったのだったな。アメティスタにも申し訳ないことをした」
「……おー」

 こいつ、気づいてないのかよ。そこはさすがに不自然だと思おう? まあ、今さら余計なことを言って、彼らの関係にヒビが入るのも困るので黙っておく。

「んで……話って、何」
「……ああ」

 大事そうに望遠鏡を撫でていたサフィールが、手を離して俺の方を向く。途端に空気がピリッと張り詰めるのを感じた。思わず背筋を伸ばした俺に、サフィールは眉間にしわを寄せて問いかけた。

「率直に問おう。貴方はジルコンを……エーデルシュタイン王国第十王子ディアマンテ=ジルコニアス=エーデルシュタイン殿下を、愛しているのか」
「あぃっ……!?」

 その言葉を聞いた瞬間、膝の力がかくんと抜けた。あい。あい? ……愛!? え、マジで!? そんなん少女漫画と恋愛ゲームの中にしか存在しない言葉じゃん!? いやでもすっかり忘れてたけど、そういやそうだこれ恋愛ゲームだ!!
 崩れ落ちそうな体を手すりに預けつつ、サフィールの顔をまじまじと見やる。彼の表情にてらいや冗談は見当たらず、むしろ真面目すぎるほど真面目に俺の様子をじっと観察している。マジか。……マジか。

「えっと……その愛は、親愛の愛とか、友愛の愛とかではなく」
「当然、恋愛の愛だ」
「……デスヨネ」

 うん、逃亡失敗。よろよろと立ち上がり、必死で頭を巡らせる。おふざけで終わらせることも、やろうとおもえばできなくはない。なにしろ相手はこのサフィールだ。テキトーな言葉遊びでケムに巻くのも簡単そうな気はする。けど……だけど。
 視線は下に向けたまま、どうにか姿勢を正した。

「……正直、その……俺今まで愛だの恋だのに縁がなさすぎてさ。いまだによくわかってないっつーか、お前の考える恋愛……的なサムシングとは食い違ってる可能性大なんだけど、それでもいい?」
「ああ。現時点での貴方の、素直な思いを聞かせてほしい」

 頷くサフィールは真摯な表情を崩さない。最低限、笑われるとか馬鹿にされることはなさそうだ。ちょっと安心。
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