転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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170・来週のご予定は

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 俺とミマ、騎士サマたち全員、そしてジルコンと、おまけでコラル。
 大小取り揃えたイケメン+αですし詰めの控え室は、しかし人の多さとは裏腹に、静かで張り詰めた空気に満ちていた。

 ルビーノはドア横の壁に寄りかかり、まるで自分が戦うかのように目を閉じて精神を集中させている。サフィールも同様に、剣の柄についたサファイアをじっと見つめて気を落ち着かせているようだ。スマラクトは一通りの事前問診を終えたあと、口をつぐんで黙り込んでしまった。いつもなら我関せずとばかりに好き勝手しているアメティスタですら、今日は楽屋の鏡を覗き込んだまま微動だにしない。ランジンは空いてる椅子にも座らずに、部屋の隅で膝を抱えてしまっている。会場準備に忙しく立ち働いていたトパシオも、ここに戻ってきてからは表情が硬い。緊張した雰囲気はジルコンの隣に陣取るミマと、その肩のコラルにも伝染してしまっているようだ。騎士サマたちの前でこんなに笑顔のないミマを、俺は初めて見た。
 その中で、一人だけ。リラックスした表情で革張りのソファに足を組んで、決闘を告げる号外に目を通しているのは、一番の当事者であるジルコン本人だ。
 そして俺はと言えば、ジルコンの対面に席を取り、持ってきた案内板をチェックしている。自分でも不思議に思うくらい、いつもと変わらない気分で。

 初め別室で時間を待つつもりだった俺たちを、わざわざこの部屋に呼び寄せたのはジルコン本人だ。正直な話、最初はちょっと心配した。もしかしたら心の奥底では、ジルコンも不安になっているんだろうか。だから万一のことがある前に、みんなの顔を見ておきたかったんだろうかって。そしてもしそれが事実なら、俺は俺にできる全力で支えてやるつもりだった。なんて、自分でも女房気取りかよって思うけど。
 けどそんな不安は、部屋に入って彼の顔を見た瞬間に吹き飛んだ。

「ああ、そうだ。一つ忘れていた」
「ん?」

 不安や期待を煽るような、センセーショナルな見出しに飽きたのか。号外を放り出したジルコンが、いつも通りの声音で俺に声をかける。顔を上げた俺から彼はひょいと案内板を取り上げて、にっこりと優しげな笑みを浮かべた。

「来週のご予定は、いかがなさいますか。チュー太郎様」
「……は?」

 ジルコンの隣のミマが、呆れたように眉をひそめる。こんなときに何言ってんの、とでも言わんばかりに。構わず俺は答えを告げた。この日が来るずっと前から、そうするって決めていた予定を。

「お休み。ジルコンと過ごす、で」
「かしこまりました。ではそのように手配いたしましょう」
「ん。それで」

 静まり返った室内に、当然ながらその会話は筒抜けだ。どっか呆れたような視線が俺たちに降り注ぐ。あーあー、何とでも言え。でも緊迫感は薄れた気がする。それがいいことなのかどうかはわかんねーけど。

「……まったく。つくづく我らが殿下には困ったもんだ」

 苦笑するルビーノの呟きに、サフィールが深刻そうな顔で頷いた。たぶん、さっきまでの深刻さとは別の意味で。
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