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4章: 再来
感謝と疑念
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「怪我、もういいのか?」
隠すようにエルキュリエの剣を鞘に収めながら、ニールは適当な話題を振る。
「うん、まるで戦いになっていなかったし」
会話はそこでいったん途切れた。意を決したフェミアが、
「最初に御礼、言っておくね。助けてくれて、ありがとう」
感謝のはずがどこかよそよそしい態度だった。
「あのさ、聞いてもいいかな。キミが持っていた剣のこと――それは、妖剣エルキュリエだよね?」
「・・・・・・そうだ」
今更隠しようのない答えに、ニールは素直に答えた。それでも躊躇する気持ちはあった。
「エルキュリエは、七年前までラキエ王女が持っていた剣だよね? キミが使った魔力剣はまさに兄さんが言っていたのと同じだ。刀身の輝きを灼熱の炎に変える力。つまりキミは、ラキエ王女からその剣と技を譲り受けたっていうことでしょ?」
「そういうことになる」
「キミがどういう経緯でラキエ王女からその剣を託されたかはともかくとして、一つだけ教えて欲しいことがある。キミはその剣を使って、この大戦で何をしようとしているの?」
「ラキエ姉ちゃんに代わって帝国を倒すまでだ」
「それは手段であって本当の目的とは違うんじゃないの? キミはここに来る時、手柄を立てることに拘っていた。帝国軍の分隊を一人で撃退したキミなら、本当にデオロクス皇帝を倒しても何の不思議もない。でもその先はどうするの? エレベナウス三号勅令の下、キミはセルマ王女と結婚して、グラウツ王家に入り込んでどうするつもりなの?」
ニールは答えなかった。苦しそうな表情を浮かべたフェミアがおどおどしながら唇を開く。
「まさか追放されたラキエ王女の敵討ち、なんて考えてないよね?」
「・・・・・・俺の母親は、王国の近衛兵に虫けらみたいに殺されたんだ。あの夜のことは今も忘れられない。あれは丁度、ラキエ姉ちゃんが無実の罪を擦り付けられて王国軍に命を狙われていた時だった」
「無実の罪?」
隠すようにエルキュリエの剣を鞘に収めながら、ニールは適当な話題を振る。
「うん、まるで戦いになっていなかったし」
会話はそこでいったん途切れた。意を決したフェミアが、
「最初に御礼、言っておくね。助けてくれて、ありがとう」
感謝のはずがどこかよそよそしい態度だった。
「あのさ、聞いてもいいかな。キミが持っていた剣のこと――それは、妖剣エルキュリエだよね?」
「・・・・・・そうだ」
今更隠しようのない答えに、ニールは素直に答えた。それでも躊躇する気持ちはあった。
「エルキュリエは、七年前までラキエ王女が持っていた剣だよね? キミが使った魔力剣はまさに兄さんが言っていたのと同じだ。刀身の輝きを灼熱の炎に変える力。つまりキミは、ラキエ王女からその剣と技を譲り受けたっていうことでしょ?」
「そういうことになる」
「キミがどういう経緯でラキエ王女からその剣を託されたかはともかくとして、一つだけ教えて欲しいことがある。キミはその剣を使って、この大戦で何をしようとしているの?」
「ラキエ姉ちゃんに代わって帝国を倒すまでだ」
「それは手段であって本当の目的とは違うんじゃないの? キミはここに来る時、手柄を立てることに拘っていた。帝国軍の分隊を一人で撃退したキミなら、本当にデオロクス皇帝を倒しても何の不思議もない。でもその先はどうするの? エレベナウス三号勅令の下、キミはセルマ王女と結婚して、グラウツ王家に入り込んでどうするつもりなの?」
ニールは答えなかった。苦しそうな表情を浮かべたフェミアがおどおどしながら唇を開く。
「まさか追放されたラキエ王女の敵討ち、なんて考えてないよね?」
「・・・・・・俺の母親は、王国の近衛兵に虫けらみたいに殺されたんだ。あの夜のことは今も忘れられない。あれは丁度、ラキエ姉ちゃんが無実の罪を擦り付けられて王国軍に命を狙われていた時だった」
「無実の罪?」
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