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4章: 再来
思わぬ助け
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侍女に身をやつしたセルマだったが、こんな状況は想定していなかったので下着だけは普段のものをつけていた。衣類の市場価値をセルマは知る由もないが、ともすれば上物のそれを見られて自分の正体を露呈する可能性があるのではないか。陰部を晒すことよりも、最悪の事態への発展を恐れたセルマは反射的に足を突き出した。
「ぐへえ!!」
突き出した膝は不運にも男の顔面にめり込んだ。仰向けになった男は顔を真っ赤にして起き上がる。
「このアマァ!!」
野太い声を飛ばしながら拳を固めたその時、兵士の背後に別の影があった。
「何だよ? お前」
兵士達は不機嫌そうな顔でその影を睨んだ。よく見ると兵士のようだが、背中に剣を背負っているだけで兵士の恰好をしていない。それどころか体格も彼らとは一回りほど小さく、あどけない容貌は自分と同い年であってもおかしくはない。
「そこで何をしているんだ?」
体格では圧倒的に劣ってなお、恐怖の一切を感じさせない少年の声が兵士達に降りかかる。快楽を邪魔された兵士達は当然、仏頂面を向けた。
「お前には関係ないだろ。引っ込んでいろ」
「確かに俺には関係ないが、軍規からすれば重罪だぞ」
「お前! 正規軍に垂れ込むなよ! そんなことすればどうなるか――」
兵士はそこで言い淀んだ。背の低い方の男が何かを思い出したように口を開く。
「コイツ、噂のあれじゃないか! 騎士じゃないかって奴! 一人で帝国兵を何人も倒したとか・・・・・・」
「ま、まさか!」
「でも奴の背中のあれって」
「悪いけど、聞こえなかったよ。上官に報告したらどうなるかって?」
「な、何でもねえ! 行くぞ!」
兵士達は幽霊でも見たかのように蒼白な表情を浮かべながらそそくさと退散した。身の危険が去った所でセルマは足腰が急に脱力した。
「ぐへえ!!」
突き出した膝は不運にも男の顔面にめり込んだ。仰向けになった男は顔を真っ赤にして起き上がる。
「このアマァ!!」
野太い声を飛ばしながら拳を固めたその時、兵士の背後に別の影があった。
「何だよ? お前」
兵士達は不機嫌そうな顔でその影を睨んだ。よく見ると兵士のようだが、背中に剣を背負っているだけで兵士の恰好をしていない。それどころか体格も彼らとは一回りほど小さく、あどけない容貌は自分と同い年であってもおかしくはない。
「そこで何をしているんだ?」
体格では圧倒的に劣ってなお、恐怖の一切を感じさせない少年の声が兵士達に降りかかる。快楽を邪魔された兵士達は当然、仏頂面を向けた。
「お前には関係ないだろ。引っ込んでいろ」
「確かに俺には関係ないが、軍規からすれば重罪だぞ」
「お前! 正規軍に垂れ込むなよ! そんなことすればどうなるか――」
兵士はそこで言い淀んだ。背の低い方の男が何かを思い出したように口を開く。
「コイツ、噂のあれじゃないか! 騎士じゃないかって奴! 一人で帝国兵を何人も倒したとか・・・・・・」
「ま、まさか!」
「でも奴の背中のあれって」
「悪いけど、聞こえなかったよ。上官に報告したらどうなるかって?」
「な、何でもねえ! 行くぞ!」
兵士達は幽霊でも見たかのように蒼白な表情を浮かべながらそそくさと退散した。身の危険が去った所でセルマは足腰が急に脱力した。
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