継承のエルキュリエ

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6章:新たな戦い

戦友

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 ニールの敵はデオロクス帝国であると同時に、エルキュリエを狙うグランド・クロスの刺客でもある。ラダイカ都市同盟軍の破竹の勢いで戦線は徐々に西へ移っているが、後者はいつこの王宮に忍び込んでも不思議ではないのだ。この場に留まろうとそうでないと、戦いは避けられない。
「お気をつけて。私にはこんな事しか言えませんが」
「それでいいんだ。セルマ王女まで自分を戦いに投じる必要なんかない。これはある意味でエルキュリエが引き寄せた因果の鎖かもしれないけど、だったら俺自身の力でそれを断ち切って見せる」
「でも忘れないで下さい。あなたの戦いの奥に明るい未来があるということ。姉が授けた剣には、あなたをそこへ導く意味も含まれているのだと思います」
「そうだな。フェミア、行くぞ」
「じゃあね、セルマ王女」
 戦場に赴くとはとても思えないいつもの快活さでフェミアはニールと肩を並べる。
「本人の前では言えなかったけどさ、やっぱりセルマ王女ってラキエ王女と似ている部分があるよね」
 フェミアは頭の後ろで手を組みながらニールの方を向く。
「そうか?」
「顔形は大分違うけど、周りのことを考え過ぎるところとか、だからキミは王女と距離を取ったんだろ? 彼女に気を遣って」
「あんな優しい顔には笑顔が一番似合うからな。ラキエ姉ちゃんが最後の頃は笑っていたのを見て、俺にはそれがよくわかるんだ。だから今度はセルマ王女にそれを取り戻して見せる」
 腕を振るって歩くニールの前には、出撃を控えたグラウツ国軍の軍旗が整然と白日の下に並んでいた。これから自分が戦いに行くべき敵はデオロクス帝国とグランド・クロス。それにセルマを娶ろうと目論む他国の勇士達とも競わなければならない。ニールの前に立ちはだかる敵はまだまだ多い。

(了)
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