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1章: こんな所でくたばるわけにはいかないのよ
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念願の聖女の座を手にし、これでようやく好き勝手ができると思いきや、就任後わずか半年にしてのクーデター勃発である。
帝国政権は完全に打倒され、イシリアは今、新しい共和政府による政治裁判で裁かれる側の人間として、法廷に一人立たされていた。
もはや判決など待つ必要もないのだが、民主政治を掲げる新共和国政府にとって、形骸的にだけでもこうした場を設ける必要があるということだろう。
陪審員席には憎たらしい商工ギルドのメンツはもちろんのこと、なぜか昨夜までは帝国陣営だった人間の顔もあった。
「以上の供述から、聖女イシリア=ヘンデルクは旧帝国臣民を惑わし、アーネット教最高峰の地位を乱用して市民に理不尽な重税を課し、私腹を肥やしていた。被告に何か異議はあるか?」
「大有りよ! 私まだ聖女に就任して半年なんだけど! まだ何もしていないんだから、責められるべきは前任の聖女じゃないの?」
「静粛に! 前任の聖女だとしても、現職の貴殿にはそれを廃止する権限もあったのではないのかな?」
「朝令暮改じゃあるまいし、そう簡単にコロコロ変えられるわけないでしょ! 二、三年掛けて改革しようとしたにせよ、アンタ達がクーデターを起こしたばっかりに台無しになったんじゃない!」
「言い訳だ! この女は聖女になったら特権を乱用して庶民に税金を掛けようとしたんだ!」
「そうだ、火炙りにしてしまえ!」
「ちょっと、アンタらは黙っていなさいよ!」
「・・・・・・実際、商工ギルドへの税率を上乗せしようと陛下に進言したのは貴殿であると、複数の関係者が証言しているが?」
「・・・・・・それは、富を貧しい農民層にも分配するため」
「嘘を言うな! 本当は懐に入れるつもりだったんだろ!」
「そもそも我々が稼いだ金を、なぜ他人にバラまくようなことをするのだ! ふざけるな!」
「わかってないわね! アンタ達の言う利益至上主義のお陰で、何人の農民が割を食っていると思っているの? 無理な価格競争のためだとか言って、人が苦労して作った作物をはした金で買い叩いて。私はただ、そういう人達を・・・・・・」
「静粛に!・・・・・・議題を変えるとしよう。先日のクーデターの折、共和国政府軍に抵抗する陣頭指揮を執ったのは、貴殿だという話だが? 我々は革命に勝利したとはいえ、それでも蜂起によって甚大な被害を被った。その責は帝国陣営側の最高指揮官に負わせるべきだと考えるが?」
「そんなの! 貴族や皇帝が降伏も徹底抗戦もせずに宮殿に籠って煮え切らない態度を取ったから、こっちが出るしかなかったんじゃないの」
「ということは、貴殿は共和国軍に少なからず被害を与えたことを認めるのか? 兵士の証言では、貴殿は陣頭指揮のみならず、自ら剣を手に戦場へ出向いて数多の将兵を殺害したとのことだが?」
「仮にも帝国からおまんま食わせてもらっているんだから、命張るのは筋ってもんでしょうが!」
「聞いたか! 聖女自ら人を殺めたというのだぞ!」
「とんでもない、魔女め!」
「今すぐ首を切り落とせ!」
「だから、外野は黙っていなさいよ! そもそも仕掛けてきたのはそっちでしょ! 聖女だからって、正当防衛の権利くらいは保障されるべきよ!」
「静粛に!・・・・・・以上の証言から判決を言い渡す。聖女イシリア=ヘンデルクは、聖女在任期間における恣意的な利益追求と、共和国軍に与えた被害を鑑みて、極刑を言い渡す」
「きょ、きょきょきょきょきょ・・・・・・極刑ですって!?」
「左様。陪審員で判決に異議のある者は?」
誰も手を挙げようとしない。それどころか、イシリアと視線を通わせようとさえしなかった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。落ち着いて話しましょ、ね? 仮にも私、聖女よ? 聖女を処刑にして、ただで済むと思っているの? 私を殺せば、アーネット神様の罰が当たるわよ?」
「これは理性と民意に基づく共和国政府の総意である。これまでのアーネット神の権威による独裁政治を脱却せねばなるまい」
「だから見せしめに私を殺すっての? 私まだ十八歳の女の子よ?」
「腐敗政治に身を置き、殺戮にまで手を染めた悪女が何を言うか?」
「え~、待ってよ! 本当に許してくれないの? お願いします! 何でもしますから、命だけはご勘弁を!」
「刑の執行は三日後、宮殿前広場で実施する。国民全員に通達を」
「この野郎! 覚えていろよ! 私を殺したって、地の底から何度でも這い上がってやるんだから!」
もはや聖女というより、勇者に討伐される魔王の捨て台詞を残して、イシリアは幽閉棟にぶち込まれた。
帝国政権は完全に打倒され、イシリアは今、新しい共和政府による政治裁判で裁かれる側の人間として、法廷に一人立たされていた。
もはや判決など待つ必要もないのだが、民主政治を掲げる新共和国政府にとって、形骸的にだけでもこうした場を設ける必要があるということだろう。
陪審員席には憎たらしい商工ギルドのメンツはもちろんのこと、なぜか昨夜までは帝国陣営だった人間の顔もあった。
「以上の供述から、聖女イシリア=ヘンデルクは旧帝国臣民を惑わし、アーネット教最高峰の地位を乱用して市民に理不尽な重税を課し、私腹を肥やしていた。被告に何か異議はあるか?」
「大有りよ! 私まだ聖女に就任して半年なんだけど! まだ何もしていないんだから、責められるべきは前任の聖女じゃないの?」
「静粛に! 前任の聖女だとしても、現職の貴殿にはそれを廃止する権限もあったのではないのかな?」
「朝令暮改じゃあるまいし、そう簡単にコロコロ変えられるわけないでしょ! 二、三年掛けて改革しようとしたにせよ、アンタ達がクーデターを起こしたばっかりに台無しになったんじゃない!」
「言い訳だ! この女は聖女になったら特権を乱用して庶民に税金を掛けようとしたんだ!」
「そうだ、火炙りにしてしまえ!」
「ちょっと、アンタらは黙っていなさいよ!」
「・・・・・・実際、商工ギルドへの税率を上乗せしようと陛下に進言したのは貴殿であると、複数の関係者が証言しているが?」
「・・・・・・それは、富を貧しい農民層にも分配するため」
「嘘を言うな! 本当は懐に入れるつもりだったんだろ!」
「そもそも我々が稼いだ金を、なぜ他人にバラまくようなことをするのだ! ふざけるな!」
「わかってないわね! アンタ達の言う利益至上主義のお陰で、何人の農民が割を食っていると思っているの? 無理な価格競争のためだとか言って、人が苦労して作った作物をはした金で買い叩いて。私はただ、そういう人達を・・・・・・」
「静粛に!・・・・・・議題を変えるとしよう。先日のクーデターの折、共和国政府軍に抵抗する陣頭指揮を執ったのは、貴殿だという話だが? 我々は革命に勝利したとはいえ、それでも蜂起によって甚大な被害を被った。その責は帝国陣営側の最高指揮官に負わせるべきだと考えるが?」
「そんなの! 貴族や皇帝が降伏も徹底抗戦もせずに宮殿に籠って煮え切らない態度を取ったから、こっちが出るしかなかったんじゃないの」
「ということは、貴殿は共和国軍に少なからず被害を与えたことを認めるのか? 兵士の証言では、貴殿は陣頭指揮のみならず、自ら剣を手に戦場へ出向いて数多の将兵を殺害したとのことだが?」
「仮にも帝国からおまんま食わせてもらっているんだから、命張るのは筋ってもんでしょうが!」
「聞いたか! 聖女自ら人を殺めたというのだぞ!」
「とんでもない、魔女め!」
「今すぐ首を切り落とせ!」
「だから、外野は黙っていなさいよ! そもそも仕掛けてきたのはそっちでしょ! 聖女だからって、正当防衛の権利くらいは保障されるべきよ!」
「静粛に!・・・・・・以上の証言から判決を言い渡す。聖女イシリア=ヘンデルクは、聖女在任期間における恣意的な利益追求と、共和国軍に与えた被害を鑑みて、極刑を言い渡す」
「きょ、きょきょきょきょきょ・・・・・・極刑ですって!?」
「左様。陪審員で判決に異議のある者は?」
誰も手を挙げようとしない。それどころか、イシリアと視線を通わせようとさえしなかった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。落ち着いて話しましょ、ね? 仮にも私、聖女よ? 聖女を処刑にして、ただで済むと思っているの? 私を殺せば、アーネット神様の罰が当たるわよ?」
「これは理性と民意に基づく共和国政府の総意である。これまでのアーネット神の権威による独裁政治を脱却せねばなるまい」
「だから見せしめに私を殺すっての? 私まだ十八歳の女の子よ?」
「腐敗政治に身を置き、殺戮にまで手を染めた悪女が何を言うか?」
「え~、待ってよ! 本当に許してくれないの? お願いします! 何でもしますから、命だけはご勘弁を!」
「刑の執行は三日後、宮殿前広場で実施する。国民全員に通達を」
「この野郎! 覚えていろよ! 私を殺したって、地の底から何度でも這い上がってやるんだから!」
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