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FILE2: 警告と禁忌
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獣道をしばらく歩くと川岸の建物が見えてきた。
渓流を流れる川に面して縁側が造られ、開け放たれた戸によって内装も外装も外から丸わかりだ。
人が中にいる気配はなく、電気も通っていないのか灯さえ点けられていない。
「何だろう、ここ。山道の休憩所かな?」
「いや、それにしては」
部外者向けの休憩施設にしては、内装がよそよそしかった。
地獄絵図のような、珍妙な生き物に人が襲われる絵画の掛け軸。
欄干に打ちつけられた紙人形。
仏教なのか、神道かさえもわからない、鬼の偶像を祀る祭壇。
アリシアは昼食休憩にと提案したが、鈴奈と莉子の反対によって三人は先を目指すこととした。
「待ちな」
謎の建物を回り込んで坂を昇ろうとした三人に、男の声が掛かる。
振り返ると、作業着に草刈り鎌を携えた中年男性が見咎めていた。
こんな人気のない山道に女子高の制服を着た三人組がうろつくのだから、不審に思われても致し方ないが、彼の目は明らかに、鈴奈達の目的を見透かしているような気がした。
「あの、何か?」
「お嬢ちゃん達、悪いけどここから先は入れないぞ」
「どうしてですか?」
莉子が不愛想に返す。
「この先の山は征六山と言ってな、昔の言い伝えで女人禁制の地とされているんだよ。つまりは、お嬢さん方は入れないってわけだが」
「でもそれを私達に強制する権利って、あなたにはないですよね?」
「ああ、ないさ。だけど、山の怒りに触れるんだよ。この山の名前は元々――」
「ソンナノ差別デース!」
アリシアが途端に叫んだ。
「女性ニダッテ、山ヲ登る権利アリマース! 国土ハ男女平等ニ解放サレルベキデス!」
「外人のお嬢さんが言いたいことはわかるさ。でも、ここは本当に駄目なんだ。だから、女人禁制とはいっても実際は男だって近寄らない場所だ」
「アナタハ日本ノ悪シキ風習ニ洗脳サレテマース! 私ハソレヲ『ノー』トイウタメニキマシタ」
「頼むから、本当に話を聞いてくれ。最近、都会からお嬢さんみたいな女の子が肝試しのつもりで来て、何人も失踪しているんだぞ?」
「・・・・・・わかりました。ですが、せっかく来たのですから、せめてこの辺りの写真だけでも撮らせてくれませんか?」
平行する議論に、鈴奈が口を開いた。
「ちょっと、柏原さん? ここまで来て何を言い出すの?」
「地元の人がここまで警告しているんです。話を聞いたら、危険みたいだから奥へ入るのは止めましょう」
「エー! 私、楽シミダッタノニ・・・・・・」
「この先にしばらく進むと古い鳥居がある。脇に女人禁制地と書かれているが、そこまでなら行っても構わない。絶対に、鳥居より先に進んでは駄目だ」
「わかりました。忠告に感謝します。二人とも、行きましょう」
鈴奈は一礼すると、二人を率いて鳥居を目指した。
渓流を流れる川に面して縁側が造られ、開け放たれた戸によって内装も外装も外から丸わかりだ。
人が中にいる気配はなく、電気も通っていないのか灯さえ点けられていない。
「何だろう、ここ。山道の休憩所かな?」
「いや、それにしては」
部外者向けの休憩施設にしては、内装がよそよそしかった。
地獄絵図のような、珍妙な生き物に人が襲われる絵画の掛け軸。
欄干に打ちつけられた紙人形。
仏教なのか、神道かさえもわからない、鬼の偶像を祀る祭壇。
アリシアは昼食休憩にと提案したが、鈴奈と莉子の反対によって三人は先を目指すこととした。
「待ちな」
謎の建物を回り込んで坂を昇ろうとした三人に、男の声が掛かる。
振り返ると、作業着に草刈り鎌を携えた中年男性が見咎めていた。
こんな人気のない山道に女子高の制服を着た三人組がうろつくのだから、不審に思われても致し方ないが、彼の目は明らかに、鈴奈達の目的を見透かしているような気がした。
「あの、何か?」
「お嬢ちゃん達、悪いけどここから先は入れないぞ」
「どうしてですか?」
莉子が不愛想に返す。
「この先の山は征六山と言ってな、昔の言い伝えで女人禁制の地とされているんだよ。つまりは、お嬢さん方は入れないってわけだが」
「でもそれを私達に強制する権利って、あなたにはないですよね?」
「ああ、ないさ。だけど、山の怒りに触れるんだよ。この山の名前は元々――」
「ソンナノ差別デース!」
アリシアが途端に叫んだ。
「女性ニダッテ、山ヲ登る権利アリマース! 国土ハ男女平等ニ解放サレルベキデス!」
「外人のお嬢さんが言いたいことはわかるさ。でも、ここは本当に駄目なんだ。だから、女人禁制とはいっても実際は男だって近寄らない場所だ」
「アナタハ日本ノ悪シキ風習ニ洗脳サレテマース! 私ハソレヲ『ノー』トイウタメニキマシタ」
「頼むから、本当に話を聞いてくれ。最近、都会からお嬢さんみたいな女の子が肝試しのつもりで来て、何人も失踪しているんだぞ?」
「・・・・・・わかりました。ですが、せっかく来たのですから、せめてこの辺りの写真だけでも撮らせてくれませんか?」
平行する議論に、鈴奈が口を開いた。
「ちょっと、柏原さん? ここまで来て何を言い出すの?」
「地元の人がここまで警告しているんです。話を聞いたら、危険みたいだから奥へ入るのは止めましょう」
「エー! 私、楽シミダッタノニ・・・・・・」
「この先にしばらく進むと古い鳥居がある。脇に女人禁制地と書かれているが、そこまでなら行っても構わない。絶対に、鳥居より先に進んでは駄目だ」
「わかりました。忠告に感謝します。二人とも、行きましょう」
鈴奈は一礼すると、二人を率いて鳥居を目指した。
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