勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する

6章: いよいよ族長へ

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　俺は彼女と同じように片目を閉じる。
　ひとまず話は聞いてやろうという意思表示だ。
「行きます！　覚悟！　てやっ！！」
　それを見たエルフの少女が踏み込んで俺に斬りかかってくる。
　もとより遅い剣だが、俺に害意を込めていないという意味でその速度は更に低下していた。
　俺は剣の柄を握り、エルフの少女と肩を違える。
「・・・・・・あの、あなたにお願いがあるのですが」
「何だ？」
「どうか私達だけは、見逃してくれないでしょうか」
「見返りは？」
「族長を好きにして構いません」
「とんでもない護衛だな」
「いえ、主にそもそも不満がありますから。休みはないし、お給金だってそれほど」
「なるほど・・・・・・そういうことならば休戦協定を結んでやろう。ただし、族長を俺の元に連れてこい」
「？　それはどういう」
「ぽっくり殴ってここまで引きずってこい」
「・・・・・・わかりました」
　俺はエルフの女を突き放す。
　彼女は他の護衛と目配せをした。
「何をしている！　早くその男を・・・・・・何だ？」
　それまで俺に向けられていたミスリルの刃が、一気に翻った。
「族長様。御許しを」
「な、何を馬鹿な！　私は族長だぞ！　どうするつもりだ？」
「このままでは全員、敵の手に掛かって処女を奪われます。一族の血を汚さないためには、一人でも純潔のエルフを残すべきです」
「そ、それならば、わらわがいるではないか」
「いえ、このままでは私達も突破され、族長もまた辱めを受けるのが必至。そうなる前に、族長自ら、一族の誇りを守るためのご英断を賜りたく」
「馬鹿な！　わらわをいけにえに差し出すなど！　エルフの戦士として恥を知れ！」
「いずれにしても、恥を知ることになるのは目に見えています！」
「いやじゃ、いやじゃ！　わらわがそのような、男に犯されるなど、あり得ん！」
「従っていただけないようであれば、致し方ありません。族長を、ひっとらえろ！」
　護衛兵達が主たるエルフの族長に襲い掛かる。
　族長は丸腰だった。
　あっという間に配下に両肩を固められ、こちらに引きずられてくる。
　両足を踏ん張って抵抗するが、やがてはその二本の足も他の護衛に抱え上げられ、四肢を担がれた状態で運ばれてくる。
「この、放せ！　放せ！　わらわはまだ・・・・・・なんてな！」
　族長の表情に不敵な笑みが宿った。
「痴れ者ども、眠るがよい！　スリープ！」
「え？・・・・・・ふわぁ」
「何、急に眠気が・・・・・・」
　族長の周囲に虹色の靄が広がったかと思えば、彼女を拘束するエルフ達が急に眠り込んだ。

「こ、これは！」
「伊達に族長など務めておらぬわ！　我が魔力、存分に思い知るがよい！　スリープ！！」
　今度は少し離れた護衛達の群衆の辺りに同じ靄が広がった。
「皆、散るのよ！」
　反射的に何人かは逃れたが、逃げ遅れた護衛は同じように眠りに落ちた。

「さあ、どうする？　もうお前達だけだぞ？」
　残り少なくなった反逆の部下達に向かって、族長は問いかけた。
　全滅しないよう、互いに離散した護衛達は歯を噛みしめながら族長と向かい合った。
「族長！」
　口を開いたのは俺に最初に交渉に応じた護衛だ。
「申し訳ございませんでした！　族長の偉大さ、改めて思い知りました！」
「ほう」
「実は私、他の護衛に脅されて仕方なく謀反に加担させられたのです！」
「ちょっと！　せこいじゃない！」
「そうよ！　元はアンタが！」
「黙れ！　この私に謀反を共謀させようとしたこと、後悔するがいい！」
「よし、お前はその娘をやれ。こっちは私が片付ける」
「御意に！」
「卑怯よ！　あふん！！」
「お、覚えてなさいよ・・・・・・ふわぁ」

　こうしてエルフ達の醜い謀反はあっという間に鎮圧させられた。
「で、どうするんだ？」
「は！　コイツのこと、すっかり忘れていた！」
　本来の敵を今になって思い出した二人のエルフは抱き合って竦みあがった。