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3章: 威厳なき名家
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アトロネーゼが遠い未来に発展することはまだ知らず、レムダ達は二週間の配属実習を終えて士官学校への帰路についていた。
「レムダ・・・・・・その、ありがとうございました」
「どうしてフェリスさんが感謝を?」
「私だったら、あの野盗達を討伐できたとしても、こんな形で村人達を幸せにすることはできませんでしたから。また、あの時と同じ失敗をするところでした」
「いや、フェリスさんにも十分助けられたと思います」
「私など、今回に関しては何も・・・・・・軍人だというのに、情けない話です」
「でも最初に村を守ってくれたのはフェリスさんですよね? あの時野盗に攻められたら、僕は手の出しようがありませんでした」
「それは、最初だけのことでしょう?」
「いいえ。僕達が村に滞在する間、野盗が最初の一回を除いて一度も現れなかったのはなぜだと思いますか?」
「それは・・・・・・もしかして、あの時に?」
「そうです。僕がガウリゼン男爵に会いに行ったのは、何もアトロネーゼの売買契約を取り付けるためだけではありません。僕達が士官学校の配属実習として二週間村に留まることを伝えれば、ガウリゼン男爵はグルになっている野盗達に二週間、村を襲わないよう手を回すと知っていたからです。フェリスさんやシアに実力で勝てないことを別としても、帝国士官学校の学生が自身の領土でトラブルに巻き込まれたと知れたら、中央政府から何らかの責任追及があるはずですからね。お陰で僕達は、その間に野盗達から妨害を受けることなく売買交渉を進めることができた、というわけです」
「そこまで考えて、あのような行動に?」
「それを成すのも一人では心許なかったと思います。正直、フェリスさんがいなければ今回の契約は成功しませんでした。だからむしろ、僕の方からお礼を言わせて下さい。本当は、感謝の言葉だけでは足りないくらいだと感じていますから」
「・・・・・・だったら、お礼の代わりに」
フェリスは紅潮しながら肩をすくめた。
「何です?」
「その、これからも私と、良き隣人であってくれれば、それでいいのですから」
「それだけで、いいんですか?」
「私はこれでも、今は名家の人間ですから、それくらいで構いませんわ!」
「わかりました。よろしくお願いしますよ」
「ねえ、ってことは、今回は私にもご褒美が出るってことだよね!」
シアが目を輝かせて割り込んできた。
「まあ、一応野盗の頭はぶっ飛ばしてくれたから」
「じゃあ~、私は・・・・・・お腹一杯ご飯が食べたい」
「それは、学校に言ってくれ」
レムダが呆れたように返事を返した。
「レムダ・・・・・・その、ありがとうございました」
「どうしてフェリスさんが感謝を?」
「私だったら、あの野盗達を討伐できたとしても、こんな形で村人達を幸せにすることはできませんでしたから。また、あの時と同じ失敗をするところでした」
「いや、フェリスさんにも十分助けられたと思います」
「私など、今回に関しては何も・・・・・・軍人だというのに、情けない話です」
「でも最初に村を守ってくれたのはフェリスさんですよね? あの時野盗に攻められたら、僕は手の出しようがありませんでした」
「それは、最初だけのことでしょう?」
「いいえ。僕達が村に滞在する間、野盗が最初の一回を除いて一度も現れなかったのはなぜだと思いますか?」
「それは・・・・・・もしかして、あの時に?」
「そうです。僕がガウリゼン男爵に会いに行ったのは、何もアトロネーゼの売買契約を取り付けるためだけではありません。僕達が士官学校の配属実習として二週間村に留まることを伝えれば、ガウリゼン男爵はグルになっている野盗達に二週間、村を襲わないよう手を回すと知っていたからです。フェリスさんやシアに実力で勝てないことを別としても、帝国士官学校の学生が自身の領土でトラブルに巻き込まれたと知れたら、中央政府から何らかの責任追及があるはずですからね。お陰で僕達は、その間に野盗達から妨害を受けることなく売買交渉を進めることができた、というわけです」
「そこまで考えて、あのような行動に?」
「それを成すのも一人では心許なかったと思います。正直、フェリスさんがいなければ今回の契約は成功しませんでした。だからむしろ、僕の方からお礼を言わせて下さい。本当は、感謝の言葉だけでは足りないくらいだと感じていますから」
「・・・・・・だったら、お礼の代わりに」
フェリスは紅潮しながら肩をすくめた。
「何です?」
「その、これからも私と、良き隣人であってくれれば、それでいいのですから」
「それだけで、いいんですか?」
「私はこれでも、今は名家の人間ですから、それくらいで構いませんわ!」
「わかりました。よろしくお願いしますよ」
「ねえ、ってことは、今回は私にもご褒美が出るってことだよね!」
シアが目を輝かせて割り込んできた。
「まあ、一応野盗の頭はぶっ飛ばしてくれたから」
「じゃあ~、私は・・・・・・お腹一杯ご飯が食べたい」
「それは、学校に言ってくれ」
レムダが呆れたように返事を返した。
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