1 / 29
序章: 夕暮れの街にて
スカートを弄ぶ風
しおりを挟む
エストガルド王国随一の先駆的魔法研究機関、グラン=アカデミー。
その設立理念は魔法技術の研究開発と魔導士を目指す学生の教育と謳われ、約千人の教員、研究スタッフと数千人の学生達が日々研鑽に励んでいる。
従って不純な動機に基づく魔法の研究や使用など、到底許されることはない。
そんな高尚な学院の所属の証であるコバルトブルーの制服に身を包む学生二人が、近隣の商業街、ソフィシエント一郭の石畳の路地を歩いていた。
いずれも十代後半の少女で、一人は黒髪を朱のリボンで後ろに縛り、もう一人は茶髪をボブに切り揃えている。どちらの容貌もそれなりに愛らしい。
「何か、お腹空いちゃったねぇ」
「あ、そういえば、大通りの南に新しいケーキ屋さんが出来たんだよ!」
プリーツの少ないミニスカートから瑞々しい太腿を絶妙な距離で晒す二人は談笑に夢中で、周囲はおろか足元への警戒心は薄れている。
――いいぞ、そのまま来い
路地に入り組んだ建物の隙間から、そんな彼女達を虎視眈々と見つめる視線があった。
気配を殺し、彼女達が気づかず傍を通り過ぎるのをひたすらに待ち続ける一人の青年。
白く長い彼女達の脚が射程圏内に踏み込んだ瞬間、彼は掌に小さな風の渦を巻き起こす。
青年の手を離れた風の渦は次第に成長して、路地の真ん中に躍り出てとぐろを巻くが、当然のことながらその姿は無色透明。
わずかな砂塵と一枚の木の葉がその存在を仄めかしてはいたものの、遊びに気を取られている彼女達がその存在を察知することはなかった。
こうして巻き上がる風は少女達を待ち構え、俄然蛇が鎌首をもたげるように尾を引いて襲い掛かる。
「きゃっ!」
夕日を照り返して艶を帯びた黒髪のポニーテールと金髪のボブカットが同時に荒ぶる。
前髪の乱れを懸念した彼女達は反射的に両手を頭に持ってくる。
下半身への配慮は当然、おろそかになる。
これこそが青年の企みだった。
――よし、もらった!
髪をなびかせるのとは別の風の通り道が、今度は少女達の足元から一気に吹き上がる。
自然の風では決してあり得ない、全く上向きの風。
短いスカートはひだを広げて舞い上がり、その下の布切れはおろか、ブラウスの裾とへそまでが露わになる。
「ちょっと、ルカ!! パンツ丸出し!」
「エイミーこそ! ウサギさん、完全に見えちゃってるよ!」
二人は慌てて各々のスカートの裾を抑える。
詳細に描写すれば、ポニーテールの方は両手でスカートの前部分を抑え、ボブカットの方は片手でそれぞれ前後をガードした。
だがどちらも守りとしては不十分だ。百八十度めくれ上がるスカートの全面を、細くて華奢な少女の腕だけで守りきることはできない。
ポニーテールはボリュームのある尻がめくれ上がり、ボブカットもふくよかな腰回りの左右から下着のレースがちらりと見える。
「いや~~ん! 何なのよ、この風!」
「ちょっとぉ、勘弁! 勘弁ってばぁ!! ホント、恥ずかしいから~!」
耐えきれなくなった二人は防御姿勢を止めて一目散に路地を逃げ出した。
その設立理念は魔法技術の研究開発と魔導士を目指す学生の教育と謳われ、約千人の教員、研究スタッフと数千人の学生達が日々研鑽に励んでいる。
従って不純な動機に基づく魔法の研究や使用など、到底許されることはない。
そんな高尚な学院の所属の証であるコバルトブルーの制服に身を包む学生二人が、近隣の商業街、ソフィシエント一郭の石畳の路地を歩いていた。
いずれも十代後半の少女で、一人は黒髪を朱のリボンで後ろに縛り、もう一人は茶髪をボブに切り揃えている。どちらの容貌もそれなりに愛らしい。
「何か、お腹空いちゃったねぇ」
「あ、そういえば、大通りの南に新しいケーキ屋さんが出来たんだよ!」
プリーツの少ないミニスカートから瑞々しい太腿を絶妙な距離で晒す二人は談笑に夢中で、周囲はおろか足元への警戒心は薄れている。
――いいぞ、そのまま来い
路地に入り組んだ建物の隙間から、そんな彼女達を虎視眈々と見つめる視線があった。
気配を殺し、彼女達が気づかず傍を通り過ぎるのをひたすらに待ち続ける一人の青年。
白く長い彼女達の脚が射程圏内に踏み込んだ瞬間、彼は掌に小さな風の渦を巻き起こす。
青年の手を離れた風の渦は次第に成長して、路地の真ん中に躍り出てとぐろを巻くが、当然のことながらその姿は無色透明。
わずかな砂塵と一枚の木の葉がその存在を仄めかしてはいたものの、遊びに気を取られている彼女達がその存在を察知することはなかった。
こうして巻き上がる風は少女達を待ち構え、俄然蛇が鎌首をもたげるように尾を引いて襲い掛かる。
「きゃっ!」
夕日を照り返して艶を帯びた黒髪のポニーテールと金髪のボブカットが同時に荒ぶる。
前髪の乱れを懸念した彼女達は反射的に両手を頭に持ってくる。
下半身への配慮は当然、おろそかになる。
これこそが青年の企みだった。
――よし、もらった!
髪をなびかせるのとは別の風の通り道が、今度は少女達の足元から一気に吹き上がる。
自然の風では決してあり得ない、全く上向きの風。
短いスカートはひだを広げて舞い上がり、その下の布切れはおろか、ブラウスの裾とへそまでが露わになる。
「ちょっと、ルカ!! パンツ丸出し!」
「エイミーこそ! ウサギさん、完全に見えちゃってるよ!」
二人は慌てて各々のスカートの裾を抑える。
詳細に描写すれば、ポニーテールの方は両手でスカートの前部分を抑え、ボブカットの方は片手でそれぞれ前後をガードした。
だがどちらも守りとしては不十分だ。百八十度めくれ上がるスカートの全面を、細くて華奢な少女の腕だけで守りきることはできない。
ポニーテールはボリュームのある尻がめくれ上がり、ボブカットもふくよかな腰回りの左右から下着のレースがちらりと見える。
「いや~~ん! 何なのよ、この風!」
「ちょっとぉ、勘弁! 勘弁ってばぁ!! ホント、恥ずかしいから~!」
耐えきれなくなった二人は防御姿勢を止めて一目散に路地を逃げ出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる