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2章: 最強への道

昇格

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 統制委員本部には、二人の姿があった。一人はこの部屋の主であるエナメス委員長。そしてもう一人は彼女の傍らで従者のごとく控える紫髪のツインテールの少女。派手な印象が色濃いエナメスと異なり、まるで人形のように微動もせず個性が感じられない。
 そんな彼女の冷淡な視線を浴びながら、シュロムとティラはリーナに背中を押されるように入ってきた。
「急な呼び出しで悪いわね」
「いいえ、もう慣れていますから」
 エナメスが愛想よく笑う一方でシュロムは苦笑いを浮かべた。
「今日の公式戦、実に見事だったわ。あんなに凄い戦い、久し振りに見せてもらったわ」
「はあ・・・・・・では、今日は何の用で?」
「そんなに緊張しなくていいわよ。決してあなたにとって悪い話じゃないから」
「処分、ではないのですか?」
「そんなわけないじゃない。公式戦で四ランク上のBクラスに勝ったのよ。そんなに優秀な生徒をどうして処分するの?」
 エナメスが嘘を言っているようには思えなかった。それどころか、彼女に嘘をつく理由などないはずだ。スカートめくりを摘発して、今すぐシュロムに退学処分を下せばいい。
 こんな回りくどいやり方をする必要はないはずだ。
「ということは、俺はBクラスに昇格と考えていいのですか?」
 公式戦でランク下の生徒が上の生徒に勝利した場合、原則的に両者のランクが入れ替わると考えてよい。今回の場合、シュロムがBクラスのティラに勝利したので、昇格はBクラスまで飛ぶことになる。
「そうね。あなたの実力を鑑みればAクラスに昇格も有りと考えてはいるけど、さすがにそれは面倒事になりそうだから、Bクラスで我慢してくれないかしら? 昇格には手続きがあるから、正式にBクラスへの転属は三日後ということになるけど」
 案の定、エナメスはBクラス昇格を勧告した。ただ、そんな話ならば後日書面で通知すればよいだけで、わざわざ統制委員の本部に呼び出したりはしないはずだ。恐らく本題はまだ始まっていない。
「話はそれだけ、ではないですよね?」
「魔法を使いこなす上に頭まで切れるのね、あなたは。そうね、実はあなたを呼んだのは、統制委員に勧誘するためなのよ」
「は?」
 シュロムもティラも唖然とした。リーナは口笛を吹いた。エナメスの横に立っている生徒は相変わらず無反応だった。
「魔力を必要最小限に抑えての効果的な魔法の発動、空気の層を利用した屈折率の計算、どれをとっても風魔法であなたの右に出る者はこのグラン=アカデミーにいないというのが私の見解よ。そんな優等生にこそ、ぜひとも他の生徒の見本になるべく統制委員になって欲しいの」
「買い被りです。それにあなたは知っているのでしょう。この学院の近隣でひそかに起きているパンチラ事件の真相を」
「な、何を!」
 ティラが声を上げた。
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