上 下
29 / 29
2章: 最強への道

最強へ

しおりを挟む
 格下の相手に負けた事実より、まず彼女は自分の魔法が致命傷に至らしめたことを受け容れられずにいた。
「だから言ったでしょ? 先輩が雷魔法を使う時点で敗北は確定していたと」
「どうして、そんなことになるのよ!」
「雷魔法は上空の雲を制御して意図的に雷雲を作り出すのが発動原理。だから俺はそれを利用して、風魔法で雷雲の位置をずらしていたのです。それに気づかず先輩は雷を落とした。自分の上に雲が流されていることにも気付かず」
「そ、そんなことで・・・・・・」
「魔導士ならば、得意とする魔法の発動原理自体熟知しておくべきです。それが出来ない魔導士にAクラスでいる資格はありません」
「そ、そんな! 委員長~!!」
 麻痺して動けなくなってなお、リーナはエナメスに助けを求めた。そんな憐れな彼女にエナメスは背中越しに言った。
「負けなければよかったのですよ」
 仲間にまで裏切られたリーナは衆目の中号泣していた。
「審判、これ以上続けますか?」
「・・・・・・いえ、もう勝負はついています」
 二日目の公式戦は呆気ないほどに幕を引いた。

 三日後、シュロムに届いたのはBクラス昇格ではなくAクラス昇格の通知だった。
「やれやれ。これで当分は、パンチラショーのアルバイトはできそうにないな」
 もはや自分がグラン=アカデミーのトップに立っている以上、目立たない裏稼業こそ至難の業だ。
「自業自得なのです」
 途方に暮れるシュロムの前にティラが現れていた。
「何だ? リベンジか?」
「別に・・・・・・ちょっとお礼が言いたかっただけです」
「あの統制委員のやり方に腹が立っただけさ。俺はお世辞にも模範生になる柄じゃない。お前みたいにまじめに努力する人間が、グラン=アカデミーには必要なんだ。それに――」
「何ですか?」
「エナメス委員長の条件が気に食わなかったさ。女子全員をスカートを履かせずに登校させるだと? そんなの御免だ」
「どういう風の吹き回しですか? あなただったら喜ぶと思っていたのです」
「あれはパンチラとは呼ばない。パンモロだ。俺が見たいのはパンチラなんだよ」
「同じではないのですか?」
「パンツってものは、スカートの中から見えてこそ興奮するものなんだよ。見えてはいけないものを見てしまった時の背徳感というか、お茶目さというか・・・・・・」
「やっぱりあなたは変態なのです。いつかまた、Bクラスに戻れたらリベンジしてやるのです」
 ティラは復讐心を誓った。しかしその前に、学園最強と次第に噂されるシュロムには更なる強敵が次々と待ち構えているのだった。

(了)
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離縁するので構いません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:55,986pt お気に入り:634

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:61,455pt お気に入り:3,689

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:103,223pt お気に入り:2,274

初恋は儚く散りゆくが、また俺は君に恋をする

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:60

命の砂時計

SF / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...