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しおりを挟む縋るような声と姿に思わず許してしまいそうになるが、もう彼とは別れたのだ。また同じことを繰り返して苦しみたくない。
「それは無理だよ……。拓斗くん」
「なんで……っ。いやだ、いやだっ……!」
「大事にするだなんて簡単に言わないで」
「っ……、ほんとに、ごめん……!」
彼にとって私は大切にする価値もない存在だった。
「でも、いやだよ。さよならなんて……」
「……」
「他に、好きな人が出来たなんて言わないよね?ねぇ?!」
好きでいるのに疲れちゃったなんていいたくなくて、まだ好きだって気持ちがあるのを誤魔化そうとして思わず口から出まかせが流れ出た。
「……そうだよ。私もう付き合ってる人いるから、結婚も考えてる」
「っ……うそだ、なんでそんなっ……!」
悲痛な声にちょっと罪悪感を感じつつも、もう言ってしまった言葉は取り消せない。
「ねぇ……じゃあ2番目、……俺2番目でもいいからぁ……!お願い、彩綾の2番目にしてくれ……っ。好きなんだ、そばにいたいんだよ……」
「無理だよ……、私そんな…器用なこと出来ない」
私の腕に弱々しく縋りついてきたと思ったけど、手の圧力はすごく強かった。掴まれた腕が跡がつきそうなぐらい痛い。
何で私なんかにこだわるんだろう?やっぱり私から振ったのがよくなかったのかな。平凡な私に振られた結果になってしまったことが、彼のプライドが傷ついてしまったんだろうか。
「拓斗くんは私のことなんて好きじゃないよ。だから付き合えない……」
「俺はほんとにお前が好きなんだよっ!」
そもそも付き合ってって私から告白したけど、恋人らしく扱って貰ったことはほとんどなかったから、付き合ってたなんて言えないと思う。
(一体私をどうしたいの……)
「なぁ…信じてよ。お前のためなら俺………何でもするから。変わるから」
今までそんな私のことを気にかけてくれたことなんてなかった。
「……これからはもっと一緒に過ごそうよ。もうお前を置いていったりしないから……」
いつもいつもいつも!友達優先でデートもろくにしてこなかった。したとしてもいつも中断して、私はいつも置いてけぼり。もう辛いよ。
「浮気も本当にごめん。本当………どうかしてた俺、ごめん…」
そんなの、今更謝られたって困る。どうしようもないじゃないか、過去のことなんて。そんな泣きそうな声を出しても絆されてなんかやらない。わたしは何度も左右に首を横に振った。
「どうしたらまたそばにいられる?お前がいないなんて無理だ!辛くて……耐えられない………!」
私の頑なな意志を感じて、押してももうダメだと思ったのか、拓斗くんは本当に泣き出した。ポタポタと床に透明な雫が落ちていったけど、それを見ないように目を背けた。
「……お前の側にいられないなら、もう俺、死ぬから」
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