クズ男と別れたら、ヤンデレ化して執着されました

ノルジャン

文字の大きさ
6 / 25

2-2

しおりを挟む

 縋るような声と姿に思わず許してしまいそうになるが、もう彼とは別れたのだ。また同じことを繰り返して苦しみたくない。

「それは無理だよ……。拓斗くん」
「なんで……っ。いやだ、いやだっ……!」
「大事にするだなんて簡単に言わないで」
「っ……、ほんとに、ごめん……!」

 彼にとって私は大切にする価値もない存在だった。
 
「でも、いやだよ。さよならなんて……」
「……」
「他に、好きな人が出来たなんて言わないよね?ねぇ?!」

 好きでいるのに疲れちゃったなんていいたくなくて、まだ好きだって気持ちがあるのを誤魔化そうとして思わず口から出まかせが流れ出た。
 
「……そうだよ。私もう付き合ってる人いるから、結婚も考えてる」
「っ……うそだ、なんでそんなっ……!」

 悲痛な声にちょっと罪悪感を感じつつも、もう言ってしまった言葉は取り消せない。

「ねぇ……じゃあ2番目、……俺2番目でもいいからぁ……!お願い、彩綾の2番目にしてくれ……っ。好きなんだ、そばにいたいんだよ……」
「無理だよ……、私そんな…器用なこと出来ない」

 私の腕に弱々しく縋りついてきたと思ったけど、手の圧力はすごく強かった。掴まれた腕が跡がつきそうなぐらい痛い。
 
 何で私なんかにこだわるんだろう?やっぱり私から振ったのがよくなかったのかな。平凡な私に振られた結果になってしまったことが、彼のプライドが傷ついてしまったんだろうか。
 
「拓斗くんは私のことなんて好きじゃないよ。だから付き合えない……」
「俺はほんとにお前が好きなんだよっ!」
 
 そもそも付き合ってって私から告白したけど、恋人らしく扱って貰ったことはほとんどなかったから、付き合ってたなんて言えないと思う。

 (一体私をどうしたいの……)

「なぁ…信じてよ。お前のためなら俺………何でもするから。変わるから」

 今までそんな私のことを気にかけてくれたことなんてなかった。
 
「……これからはもっと一緒に過ごそうよ。もうお前を置いていったりしないから……」

 いつもいつもいつも!友達優先でデートもろくにしてこなかった。したとしてもいつも中断して、私はいつも置いてけぼり。もう辛いよ。

「浮気も本当にごめん。本当………どうかしてた俺、ごめん…」

 そんなの、今更謝られたって困る。どうしようもないじゃないか、過去のことなんて。そんな泣きそうな声を出しても絆されてなんかやらない。わたしは何度も左右に首を横に振った。

「どうしたらまたそばにいられる?お前がいないなんて無理だ!辛くて……耐えられない………!」

 私の頑なな意志を感じて、押してももうダメだと思ったのか、拓斗くんは本当に泣き出した。ポタポタと床に透明な雫が落ちていったけど、それを見ないように目を背けた。
 
「……お前の側にいられないなら、もう俺、死ぬから」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...