クズ男と別れたら、ヤンデレ化して執着されました

ノルジャン

文字の大きさ
18 / 25
番外編 すれ違う再プロポーズ

1-1

しおりを挟む

 夜景の綺麗な高層ホテルのレストランの窓際で、拓斗くんと向かい合って座っている。拓斗くんもにっこり笑って幸せそうで、私も嬉しくなって頬が赤らんだ。
 

 私のこっちからフラれよう作戦は大失敗に終わり、――失敗して良かった……――拓斗くんが私のことを本当に好きなんだと再認識できた。
 
 大変だったのはその直後。拓斗くんに久しぶりに抱かれて、久しぶりすぎたからなのか、ものすごく感じて乱れてしまった。恥ずかしいほどにあられもない声と姿を大好きな人の前で晒してしまい、経験の少ない私にはキャパオーバーだった。彼の腕の中にいる間はずっと訳もわからず快感を受け止めることしかできなかった。
 
 以前付き合っていた時に抱かれた時とは全く別人のような拓斗くんの愛撫をこの身体全身で私は受け止めた。拓斗くんも溜まっていたものを吐き出すかのようにめちゃくちゃに私を抱いた。
 気を失うまで。

 確かに遠慮しないでとは言ったけど……!

 起きてすぐに拓斗くんをベッドの上で正座させて、ごめんなさいさせた。「もう気を失うまではしないでって約束してしてね」と言ったのに、拓斗くんは「彩綾の嫌がることはしないよ」と言った。私は拓斗くんの反省した様子に満足して、その場では納得しちゃったけどちょっと時間がたってから「あれ?」と思った。
 拓斗くんを問いただそうと思ったのに、なんだかそういう雰囲気になっちゃって、また拓斗くんとシしてしまった。結局そのことについては再度問いただす事もなかった。

 拓斗くんのプロポーズは本当に嬉しかった。びっくりしすぎて夢かと思った。だって、フラれようしてたし。拓斗くんにフラれる気満々で、覚悟を決めていたから。

 私のことを1番に、ううん、私今度はだけを好きでいてくれるんだ。
 こんなことってあるんだ。
 
 ずっとずっと好きだった。
 最初に付き合ってる時も、私のほぼ片想いみたいな感じだったし。
 拓斗くんが精神的にも身体的にも落ち込んじゃって、泣いて縋って私と再度付き合ったのも、拓斗くんのプライドを取り戻すためだと思っていた。拓斗くんが満足して私がフラれるまでのお付き合いだと割り切ろうとしていた。

 プロポーズで指輪も準備してくれて、お互いの両親に挨拶までして結婚式の日取りも準備も進めてくれれば、流石の私も、拓斗くんが本気なんだって実感できた。

 本気で私のことを好きで、結婚してくれるんだ。
 私だけの一方的な想いじゃなく。
 こんなに、大好きな人と両思いで以前とは違って大事に大事にしてくれる。
 彼に対する大好きがもっと溢れてくる。

 気持ちも、そして身体も拓斗くんに満たされて、私の全てがとろけそうだ。



 

 金曜日の夜の2人だけの特別なディナー。拓斗くんは席を立って、私に近寄って跪いた。

大健おおだて彩綾さあやさん、俺と結婚してください」

 薔薇の花束を前に差し出されて、照れたようにはにかむ拓斗くんがとても可愛くて、格好良くて。ぶわっと幸せな気持ちで心が満たされた。

「はい、私とずっと一緒にいてください」

 花束を受け取ってそう返事した。

 ふわふわと2人だけの時間が流れて、幸せな心地だった。

 ディナーコースの最後にウェイターがデザートを運んできてくれた。そのウェイターは、私の指に嵌っている輝くダイヤモンドの婚約指輪と花束を見て、

「ご婚約おめでとうございます」

 と言ってくれた。
 その言葉に、私はさらに嬉しくなった。

「はい、ありがとうございます」

 ウェイターの人もにこにこと給仕をして下がっていった。
 緩んだ頬がどうしても元に戻らずに花束と指輪をじっと見つめてしまった。
 薔薇の花束なんか初めてもらった。とても綺麗に飾り付けられていて、キラキラしている。花びらにもラメが装飾されているようだ。

 受け取った花束をじっくりと堪能して、ウェイターが花束を置くように用意してくれた籠にそっと入れた。

 色とりどりに飾り付けられたデザートプレートを食べ進める。ちょっと食べるのが勿体無いくらいにおしゃれだ。
 ディナーの方も美味しかったけど、このデザートは見た目も味も高級ホテルの名に恥じないほど素晴らしい。
 再度プロポーズしてくれた後に食べているからということもあるからだろうか。
 本当に美味しくて幸せをひとくちひとくち噛み締めた。

「拓斗くん、デザートもおいしいねぇ」
「あぁ、……」
「……?」

 なんだか拓斗くんは急に口数が少なくなったような気がして少し違和感を覚えた。

 ひとめがあまりない高級なホテルのレストランだったが、公共の場でこんな大きな薔薇の花束を持ちながら跪くなんて男性にとってはやはり恥ずかしかったのだろうか。

 でもそれにしては照れているという感じではない。表情は取り繕おうとしているが、なんだか不機嫌そうな、そんな雰囲気が滲み出てしまっている。

 一体どうしたのだろう。

 さっきまでの幸せな気持ちが一気に落ちていった。
 そして急に不安な気持ちが迫り上がってきて、ネガティブな考えが脳裏に浮かんで消えてくれない。

 やっぱり私なんかとの結婚なんて考えられなくなったとか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

処理中です...