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「これ俺だけじゃ食べきれないからみうちゃん、俺と一緒にお昼食べよ?」
「いえ、……それは先輩のお昼ですから」
「どうせ多めに買ったからさ、ね?一緒に食べてよー」
食べると言うまで離さない、という強い意志を掴まれた腕から感じる。
「あれー?綾人!昼飯一緒に食わねえの?」
横から先輩とつるんでいるヤンチャボーイズが現れた。チャラチャラと派手な服をした派手な頭の学生たち。耳元にはバチバチに開いたピアスたちが並んでおり、金髪やらピンクやら刈り上げていたり、とにかく派手な見た目だ。
成撮先輩自体はそんなに派手な見た目ではない。髪は黒髪だし、垂れ目だし、服装もそんなに派手と言うわけではない。けれど先輩もこの人たちの中に入ってしまえば私はもう恐ろしくて近寄れもしない。
「今日は彼女のみうちゃんと食うわ」
「えっ!それが綾人の例の彼女?へー可愛いじゃん」
「なになに?綾人の彼女ー?うわ、ちっちゃくて小動物みてー」
ヤンチャボーイズはみんなニヤニヤと下卑た目で私を見ていた。じわっと嫌な汗を背中にかきはじめた。
そのうちの一人が成撮先輩に絡んで肩を抱いて耳元で何か言っているのがこちらまで聞こえてきた。
「で?お前らまだなのかよ?セックス」
「うっせーな」
先輩は抱かれた腕を乱暴に振り解いた。
弾かれた腕を庇いながら、いてーと言いながらもニヤニヤとした顔を貼り付けたままだ。
「おいおい、俺今夜ヤるに賭けてんだがらさー。頼むぞ綾人~」
「俺は今すぐヤるに賭けよっかな!」
「お前らもう黙れよ」
「ギャハハ」
下品な笑い声が耳に障る。
やっぱりあの時聞いたことは事実だったんだ。先輩は私を対象にして賭けを、ゲームをしているんだ。
じくじくと心臓が痛い。
先輩たちは賭け事が進んでいってるのがそんなに楽しいのか、内輪だけでワイワイと盛り上がっている。
――あぁ、ほんと最悪。
最低だよ。
ニヤついた顔が頭にこびりつき、笑い声は耳に反響している。
「……私、一人で食べます」
これ以上その場にいたくなくて踵を返して逃げ出した。
「ちょっ、みうちゃん」
先輩の制止も聞かずに走り出す。がむしゃらに足を動かして目的地もないまま前を進んで行った。
――お昼は我慢かな……。
大学のメインキャンパス裏の庭に着いて一人ベンチに座る。ぐうぅとお腹が鳴った。先輩に付き纏われてから碌なことがない。単位は落とすし、お昼は食いっぱぐれるし。とんだ災難だ。
泣きたい気持ちになったけど、ここはまだキャンパス内。変な目で見られたくない。
しばらくここで休んでから教室へ戻ろう。
すると、後ろからぬっと男性の腕が伸びてきてあっという間に抱きしめられた。
「みうちゃん、見つけた……」
ぎゅうぎゅうと締め付けるように腕に力が込められて逃がさないように腕を取られた。
「せ、せんぱい」
「もうあいつらにはみうちゃんに話しかけんなって言っといたから。俺のみうちゃんに、見るな触るな喋るなって。ごめんな?あんなやつらに話しかけられて怖かったよな?もう大丈夫だから」
怖かったには怖かったけれど、そういうことじゃない。
「先輩、もうやめてください」
「なにを?」
「もう、私をからかうのはやめて欲しいんです。付き合ってるとか、彼女とか……。違いますから。だから、もう」
「でもみうちゃんは俺の」
「そういうのです!もうやめて!」
叫ぶように先輩に投げつけた言葉。私の悲痛な声が届いたのか、先輩は大人しく手を解いた。
「……みうちゃん」
「ほんとに、……やめてください……むりです、私……お願いします」
「…………わかった。もうやめるよ。じゃあ最後にさ、デートしてくれない?」
「それで最後にしてくれますか?」
本当に最後にしてくれるだろうかと疑うように前に立つ先輩を見上げた。
先輩の顔。目元は笑っているのに、何の感情も読み取れない。
「うん、それで付き纏うのやめるよ。もうしつこくしない」
「わかりました。だったらデートしましょう。そしたらもう、私に声かけないでください」
「うん、今日講義が全部終わったら迎えにいくから、連絡して?」
「はい」
先輩は思ったより呆気なくわかってくれた。あんなにしつこく連絡してきたり、声をかけてくるからもっとごねたりするかもしれないと思ったのに。でも当然か。私とのことは先輩にとってはどうせゲームなんだし。
――……声かけるな、なんてちょっと言い過ぎたかな。
でもこれでいいんだ。やっと解放される。
去っていく先輩の後ろ姿を見つめながら、胸がざわざわとざわついたが私は知らないふりをした。
人があまりいない裏門で待っていてとの連絡が入っていた。講義が全て終わり、「今から向かいます」と連絡を一言入れてから、身支度をして裏門へ向かう。
「みうちゃん」
先に待っていた先輩に声をかけられた。いつもよりも甘い笑顔の先輩なのに、なんだか落ち着かない気持ちにさせられる。
手を差し出されたが、その手を掴めないでいた。
少し戸惑っているうちに手首を掴まれ、がっちりと固定された。
「っ!……」
腕を引こうにも力の差があり過ぎて、私の腕は微動だにしない。
得体の知れない恐怖に体が支配され始めた。
「みうちゃん、おいで」
とろとろに甘い蜜のような声で誘い込むように私の名前を呼ぶ。私は彼の黒い黒曜石のような瞳に吸い込まれそうになった。
――ついていっちゃいけない……。
手首は掴まれたまま肩を抱かれ、先輩との体格差をまざまざと感じた。怯んで動けなくなり、完全に彼に支配されてしまった。
「いえ、……それは先輩のお昼ですから」
「どうせ多めに買ったからさ、ね?一緒に食べてよー」
食べると言うまで離さない、という強い意志を掴まれた腕から感じる。
「あれー?綾人!昼飯一緒に食わねえの?」
横から先輩とつるんでいるヤンチャボーイズが現れた。チャラチャラと派手な服をした派手な頭の学生たち。耳元にはバチバチに開いたピアスたちが並んでおり、金髪やらピンクやら刈り上げていたり、とにかく派手な見た目だ。
成撮先輩自体はそんなに派手な見た目ではない。髪は黒髪だし、垂れ目だし、服装もそんなに派手と言うわけではない。けれど先輩もこの人たちの中に入ってしまえば私はもう恐ろしくて近寄れもしない。
「今日は彼女のみうちゃんと食うわ」
「えっ!それが綾人の例の彼女?へー可愛いじゃん」
「なになに?綾人の彼女ー?うわ、ちっちゃくて小動物みてー」
ヤンチャボーイズはみんなニヤニヤと下卑た目で私を見ていた。じわっと嫌な汗を背中にかきはじめた。
そのうちの一人が成撮先輩に絡んで肩を抱いて耳元で何か言っているのがこちらまで聞こえてきた。
「で?お前らまだなのかよ?セックス」
「うっせーな」
先輩は抱かれた腕を乱暴に振り解いた。
弾かれた腕を庇いながら、いてーと言いながらもニヤニヤとした顔を貼り付けたままだ。
「おいおい、俺今夜ヤるに賭けてんだがらさー。頼むぞ綾人~」
「俺は今すぐヤるに賭けよっかな!」
「お前らもう黙れよ」
「ギャハハ」
下品な笑い声が耳に障る。
やっぱりあの時聞いたことは事実だったんだ。先輩は私を対象にして賭けを、ゲームをしているんだ。
じくじくと心臓が痛い。
先輩たちは賭け事が進んでいってるのがそんなに楽しいのか、内輪だけでワイワイと盛り上がっている。
――あぁ、ほんと最悪。
最低だよ。
ニヤついた顔が頭にこびりつき、笑い声は耳に反響している。
「……私、一人で食べます」
これ以上その場にいたくなくて踵を返して逃げ出した。
「ちょっ、みうちゃん」
先輩の制止も聞かずに走り出す。がむしゃらに足を動かして目的地もないまま前を進んで行った。
――お昼は我慢かな……。
大学のメインキャンパス裏の庭に着いて一人ベンチに座る。ぐうぅとお腹が鳴った。先輩に付き纏われてから碌なことがない。単位は落とすし、お昼は食いっぱぐれるし。とんだ災難だ。
泣きたい気持ちになったけど、ここはまだキャンパス内。変な目で見られたくない。
しばらくここで休んでから教室へ戻ろう。
すると、後ろからぬっと男性の腕が伸びてきてあっという間に抱きしめられた。
「みうちゃん、見つけた……」
ぎゅうぎゅうと締め付けるように腕に力が込められて逃がさないように腕を取られた。
「せ、せんぱい」
「もうあいつらにはみうちゃんに話しかけんなって言っといたから。俺のみうちゃんに、見るな触るな喋るなって。ごめんな?あんなやつらに話しかけられて怖かったよな?もう大丈夫だから」
怖かったには怖かったけれど、そういうことじゃない。
「先輩、もうやめてください」
「なにを?」
「もう、私をからかうのはやめて欲しいんです。付き合ってるとか、彼女とか……。違いますから。だから、もう」
「でもみうちゃんは俺の」
「そういうのです!もうやめて!」
叫ぶように先輩に投げつけた言葉。私の悲痛な声が届いたのか、先輩は大人しく手を解いた。
「……みうちゃん」
「ほんとに、……やめてください……むりです、私……お願いします」
「…………わかった。もうやめるよ。じゃあ最後にさ、デートしてくれない?」
「それで最後にしてくれますか?」
本当に最後にしてくれるだろうかと疑うように前に立つ先輩を見上げた。
先輩の顔。目元は笑っているのに、何の感情も読み取れない。
「うん、それで付き纏うのやめるよ。もうしつこくしない」
「わかりました。だったらデートしましょう。そしたらもう、私に声かけないでください」
「うん、今日講義が全部終わったら迎えにいくから、連絡して?」
「はい」
先輩は思ったより呆気なくわかってくれた。あんなにしつこく連絡してきたり、声をかけてくるからもっとごねたりするかもしれないと思ったのに。でも当然か。私とのことは先輩にとってはどうせゲームなんだし。
――……声かけるな、なんてちょっと言い過ぎたかな。
でもこれでいいんだ。やっと解放される。
去っていく先輩の後ろ姿を見つめながら、胸がざわざわとざわついたが私は知らないふりをした。
人があまりいない裏門で待っていてとの連絡が入っていた。講義が全て終わり、「今から向かいます」と連絡を一言入れてから、身支度をして裏門へ向かう。
「みうちゃん」
先に待っていた先輩に声をかけられた。いつもよりも甘い笑顔の先輩なのに、なんだか落ち着かない気持ちにさせられる。
手を差し出されたが、その手を掴めないでいた。
少し戸惑っているうちに手首を掴まれ、がっちりと固定された。
「っ!……」
腕を引こうにも力の差があり過ぎて、私の腕は微動だにしない。
得体の知れない恐怖に体が支配され始めた。
「みうちゃん、おいで」
とろとろに甘い蜜のような声で誘い込むように私の名前を呼ぶ。私は彼の黒い黒曜石のような瞳に吸い込まれそうになった。
――ついていっちゃいけない……。
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