傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う

ノルジャン

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20 真実

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「血は繋がってなくても、この子に何かしてやりたい。それを許して欲しい」

 ずっと望んでいた、あなたから欲しかった言葉。

 熱いものが胸に込み上げてくる。もう彼に隠してなんておけない。隠したままにすることは、これ以上できなかった。
 ずっと言いたくても言えなかった真実を告げる時がきてしまったと思った。

 我が子を抱き抱えながら、血は繋がっていなくても支えていきたいと願う気持ちに、彼の傲慢さは見えなかった。
 ただ純粋に、私の子どもを愛してくれている。真摯に向き合う彼の姿が見えた。

 言葉に詰まりながらも私はランドルフに告げた。

「あなたの、子どもなの」

 ピタリ、と彼の動きが止まる。

「この子はあなたの子どもなのよ」

 もう一度、彼に言った。私は奥から込み上げてくる熱い涙が止まらなくなった。
 
「俺たちの子どもは、亡くなってしまったはずだ。あの時、君が階段から転げ落ちて……」

 私たちの子を抱きしめている彼の指が震える。声も震えて、怯えているようにも聞こえた。

「旦那様、私のせいです。お子は流産してしまったことにしようと奥様に提案したのは、私なのです」

 クリスティーナは涙で顔をくしゃっとさせながらランドルフに訴えた。

「あの時の旦那様は正気ではありませんでした。このまま妊娠中の奥様が屋敷に残れば、きっと大変なことになると、そう思ったのです。だから、流産したことにして離縁をと奥様に……。うぅ、申し訳ございません……っ」

 全ての真実を話した。
 経緯も全て。
 
 まだランドルフの手は震えていたが、落ち着いた様子を見せていた。

「……そう、だったのか。謝るのは俺の方だろう。追いつめたのは俺だ。クリスティーナもすまなかったな。ジュリア、産んでくれて、こんなに素敵な天使を育ててくれてありがとう。……ありがとう」

 全てを許してくれたランドルフ。前の彼であれば考えられなかっただろう。
 戦場へ赴き、死と隣り合わせになったことで、彼の中の何かが変わったのだ。

 見えない目から涙を流して私たち2人の娘を抱きしめていた。優しく、しっかりと。
 そしてランドルフは指先で、娘の目や鼻や耳を触って確かめていた。彼のしっかりした手つきに娘への愛情を確かに感じる。

「俺の可愛い天使……もっとしっかりと、顔を……姿を見ておくのだった……っ」

 肩を小刻みにゆらし後悔の思いを吐き出していた。

「全て、俺自身のせいだ。君は俺に、この子が取られると思ったんだろう? だから、真実を話せなかったんだ。俺とセーラを会わせないようにしていたんだ」

「ごめんなさい」

 ごめんなさい、ランドルフ。こんなことになるなんて想像もしていなかった。

 彼の目はもう二度と、娘の姿を見ることは叶わないのだ。こんなことならば、真実を話しておくべきだった。恐れずに、この子はあなたの子だと、そう言えばよかった。そうしたら、ランドルフはしっかりと娘の姿を目に焼き付けれたかもしれないのに。
 戦場へ行く最後の日に、娘と会わせることもできたかもしれない。けれどもう過ぎてしまったこと。何を後悔しても遅い。

「でも、いいんだ。……例え、もう二度と見ることができなくてもまた生きて君たちに会えた」

 何も見えていないはずなのに、彼は上を向いてそこに神がいるかのように懸命に祈りを捧げた。

 
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