俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第4章

旧世界と魔術抗争。

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「この盾は極東にあった魔術クラブの作品ですね」

フィオが日頃研究している旧世界の歴史。
魔道具については俺もアカデミーで少しは習ったが
詳しいことは上級院に入学しなければ学ばない。

「魔道具というのは”魔道具師”が魔力を込めた物で」
「一般的に作った火薬銃や非魔力の武器とは異なります」

魔道具師...ケニーの家は祖父の代までが
魔道具を作る職人だったと聞いたことがある。
父は普通の傭兵になったが、祖父に似たケニーは
十六の時に一代で今のお店を起業したのだ。
それはそれで凄いけど。

「今から八十年程前の変異...これは有名な話ですが」

魔力は基本的に“誰でも持っている”もの。
強弱はあるが、旧世界は今より魔法の力が強大で
派閥同士が権力をめぐって魔術抗争を繰り広げた。

「大勢の優れた魔法使い達が命を落としました...」
「当然、濃い魔術の血は確実に薄れていったのです」

その事に人間達が気付いたのが“八十年前”
魔道具を作るには単に魔力の大きさだけではなく
才能や受け継がれた伝統ワザが必要となるが
職人達は優れた武器を作るがために拘束されたり
命を狙われたりしてその数を減らした。

薄くなった血、それに強力な魔道具を作る技術を失い
今では三十年前まで残っていた弱い魔力の技術も含め
完全にすたれてしまった。

「ケニーが時々自慢してるよー」
「すごかったんだってー」

彼は最後の魔道具師とも言われている。
彼女も彼女のお父さんも本当は継ぎたかっただろう。
醜い争いの末の悲劇だ。

しかし需要はあるので価値はみるみる上がり
それを奪い合う王国や帝国による第一次戦争が勃発。
その後今から十七年前まで絶え間無く続いた。

親に聞いても誰に聞いても皆一様に言葉を濁す。
思い出したくない程の過去なのだろう。

「だから“あの人”は世界を新しく変えたのでしょう」

争いが二度と起こらないように
ずっと昔の自由だった頃のように...

「そしてガチャの当たりとして亜空間に...だよね」
「そうですね。私達やモンスターも一緒に」

ちょっと染み染みしたが、話を戻す。

「じゃあアイテムとかは誰が作ったの?」
「それは錬金術師ですね。今は禁止されていますが」
「違法にだったら作り出せます」

時々無駄に頭の良い人が手を染めてしまうのだ。
ガチャの “石” 違法錬成の話しか知らなかったけど
チユーとかも魔石などから作れるらしい。※違法です

「今ガチャで出ているのは過去の物であるー」
あるいは一度使うと亜空間で再生されるという説ー」
「など色々ありますが私もそこまでしか...」

新世界・旧世界研究家の彼女でもかなり複雑で
断定は難しいのだと言う。

「低級と中級が治安のために飛ばされたよね」
「なぜ精霊や妖精族まで亜空間に閉じ込めたのかな?」

「それは...」

彼女は少し間を空けてから口を開いた。

「コレクターがいたからでしょうね...」

初めて聞く話だった。
魔術抗争が終わり貴族の時代。
貴重になった武器やアイテム収集が流行ると同時に
美しく珍しい“精霊”や“妖精”までもコレクションして
その価値にだけ酔いしれる者達が現れたそうだ。

屋敷に逃げられないように幽閉し
魔力封じのアイテムを使って見世物のように扱った。
魔力は彼女達の生命線である。
しばらくすれば当然弱って消えてしまうのだが
彼らはそんな事は構いもしなかった。


“いくらでも変わりは手に入る”
“もっと美しい物をっ!もっと珍しい物をっ!”


これが実情だ。
醜い人間はいつの時代も醜い。


「でも、人間の良い面も知っていますから」
彼女達の殆どは人を恨んだりしていないという。

「それに彼らは私が壊滅しましたので」

きっとメッタメタのボッコボコにしたのだろう。
いや、俺はそれを望んでいる。
また同じ事をしたら絶対に許さない。


“あの人”については諸説ありな感じで
二年経った現在でもまだ解明出来ていない。

「私はこの“世界”になって良かったと思いますよ?」

フィオが振り返って笑う。

「あなたに会うことができました」
「それにカレンさん、ウィンディ、皆さんにもー」

伯父が
”オレは?“ “ねえオレは!?”
っていうジェスチャーを後ろから送っているけれど
当然の如く彼女は華麗にスルーした。

「嫌いなわけではないですが、いつものオチなので」

なんとなくその気持ちが解る気がした。
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