俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

文字の大きさ
44 / 92
第4章

旧世界と魔術抗争。

しおりを挟む
「この盾は極東にあった魔術クラブの作品ですね」

フィオが日頃研究している旧世界の歴史。
魔道具については俺もアカデミーで少しは習ったが
詳しいことは上級院に入学しなければ学ばない。

「魔道具というのは”魔道具師”が魔力を込めた物で」
「一般的に作った火薬銃や非魔力の武器とは異なります」

魔道具師...ケニーの家は祖父の代までが
魔道具を作る職人だったと聞いたことがある。
父は普通の傭兵になったが、祖父に似たケニーは
十六の時に一代で今のお店を起業したのだ。
それはそれで凄いけど。

「今から八十年程前の変異...これは有名な話ですが」

魔力は基本的に“誰でも持っている”もの。
強弱はあるが、旧世界は今より魔法の力が強大で
派閥同士が権力をめぐって魔術抗争を繰り広げた。

「大勢の優れた魔法使い達が命を落としました...」
「当然、濃い魔術の血は確実に薄れていったのです」

その事に人間達が気付いたのが“八十年前”
魔道具を作るには単に魔力の大きさだけではなく
才能や受け継がれた伝統ワザが必要となるが
職人達は優れた武器を作るがために拘束されたり
命を狙われたりしてその数を減らした。

薄くなった血、それに強力な魔道具を作る技術を失い
今では三十年前まで残っていた弱い魔力の技術も含め
完全にすたれてしまった。

「ケニーが時々自慢してるよー」
「すごかったんだってー」

彼は最後の魔道具師とも言われている。
彼女も彼女のお父さんも本当は継ぎたかっただろう。
醜い争いの末の悲劇だ。

しかし需要はあるので価値はみるみる上がり
それを奪い合う王国や帝国による第一次戦争が勃発。
その後今から十七年前まで絶え間無く続いた。

親に聞いても誰に聞いても皆一様に言葉を濁す。
思い出したくない程の過去なのだろう。

「だから“あの人”は世界を新しく変えたのでしょう」

争いが二度と起こらないように
ずっと昔の自由だった頃のように...

「そしてガチャの当たりとして亜空間に...だよね」
「そうですね。私達やモンスターも一緒に」

ちょっと染み染みしたが、話を戻す。

「じゃあアイテムとかは誰が作ったの?」
「それは錬金術師ですね。今は禁止されていますが」
「違法にだったら作り出せます」

時々無駄に頭の良い人が手を染めてしまうのだ。
ガチャの “石” 違法錬成の話しか知らなかったけど
チユーとかも魔石などから作れるらしい。※違法です

「今ガチャで出ているのは過去の物であるー」
あるいは一度使うと亜空間で再生されるという説ー」
「など色々ありますが私もそこまでしか...」

新世界・旧世界研究家の彼女でもかなり複雑で
断定は難しいのだと言う。

「低級と中級が治安のために飛ばされたよね」
「なぜ精霊や妖精族まで亜空間に閉じ込めたのかな?」

「それは...」

彼女は少し間を空けてから口を開いた。

「コレクターがいたからでしょうね...」

初めて聞く話だった。
魔術抗争が終わり貴族の時代。
貴重になった武器やアイテム収集が流行ると同時に
美しく珍しい“精霊”や“妖精”までもコレクションして
その価値にだけ酔いしれる者達が現れたそうだ。

屋敷に逃げられないように幽閉し
魔力封じのアイテムを使って見世物のように扱った。
魔力は彼女達の生命線である。
しばらくすれば当然弱って消えてしまうのだが
彼らはそんな事は構いもしなかった。


“いくらでも変わりは手に入る”
“もっと美しい物をっ!もっと珍しい物をっ!”


これが実情だ。
醜い人間はいつの時代も醜い。


「でも、人間の良い面も知っていますから」
彼女達の殆どは人を恨んだりしていないという。

「それに彼らは私が壊滅しましたので」

きっとメッタメタのボッコボコにしたのだろう。
いや、俺はそれを望んでいる。
また同じ事をしたら絶対に許さない。


“あの人”については諸説ありな感じで
二年経った現在でもまだ解明出来ていない。

「私はこの“世界”になって良かったと思いますよ?」

フィオが振り返って笑う。

「あなたに会うことができました」
「それにカレンさん、ウィンディ、皆さんにもー」

伯父が
”オレは?“ “ねえオレは!?”
っていうジェスチャーを後ろから送っているけれど
当然の如く彼女は華麗にスルーした。

「嫌いなわけではないですが、いつものオチなので」

なんとなくその気持ちが解る気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

処理中です...