俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第5章

大切なものは側にある。

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2回目の“飛行タイプ”ガチャ。

シュバーン...「ヒッピィ♪」

またアイツか.....ん?ちょっと違う。
似ているけどピッピィの背中に羽が付いた
中級の“ヒッピィ”だ。

「わかってるよ。好きにして」
「......えぇーと、この子は要らないかも!」

微妙に違うから仲間に入れてあげないらしい。
心なしか悲しそうな顔をするヒッピィ。
女神は時に恐ろしく残酷だ。

(いつか、また会おうな...)
俺はそう慰めると静かに“ポッケ”にしまった。

そして二つ目の当たりは“トビグスリ”
液体の飛行薬。

三つ目と四つ目は普通の魔石のカケラが出て
この後もハズレが続いた。

(あと2回だな...そろそろ来てもいい頃だ)

何の根拠もないがそう思った。
祈りながら陣の中で回転する石を見つめる。
シュウィーン...シュバーン...ワァーン

........現実はそう甘くはないようで
俺が貯めてきた石とボーナス分の石は底をついた。
つらい。


もうすぐフェスティバルガチャ終了の時間。
俺は諦めきれずに質屋のテントへと駆け込んだ。

商魂逞しい彼らはガチャ会場のすぐ側で営業中。
同じような人達から需要があるのだ。

「魅惑のマンドリンはこれくらいです」
「...レオナルド、本当にこの金額で良いのですか?」

普通の店より返却価格は足元を見られてる感じ。
でも背に腹はかえられない。

「あとこのヒッピィもお願いします」

「ヒッピィ.....(寂しそうな目)」
「亜空間でも元気でな...」

俺達は堅い握手を交わし
ヒッピィは親指を立てながら笑顔で消えた。
あいつの為にも次は絶対に負けられない。

コインで石を購入して広場へと戻る。
もう時間はないから急いで召喚陣を開いた。
チャンスはあと3回分。


“Grand Challenge System Assign”
ブヲン...シュンシュンシュン...

黄金の光を帯びながら小刻みに爆発する石。
それは時に火花、時に炎をあげて何度も回転した。


シュルウ...グワァー...シュガー...ガアアアアアア

“ロングリフォン“
..........ヴィアッ!ヴィアアアアァッ!


来たっ!これだ!
飛べるし乗れる系のレア魔獣グリフォン。
しかも長距離飛行に特化しているときた!

シュルシュルシュル...

いつものように一度縮む。
両手に乗るくらいのサイズで普通の鳥みたいだ。

ピピッ!ピピッ!

「すぐ大きくなるさ。鳥は成長が早いからなぁ」
「そうだといいけど.....(結構縮んだな)」

もうこれで十分満足だ。
残りの分の石は次に残すことにした。

「ピピッって鳴いたよ!ピッピィのお友達だね!」
(ヒッピィ...運命って残酷だな.....)


そうして俺達の感謝祭は無事終了した。
今夜の花火は一段と華やかに夜空を照らしている。
この一ヶ月半を振り返ると良い事もあり
悪い事もあったけれど、なんとか乗り越えた気がする。

「ウィンザー!」「うぃんざぁー!」

もっと遠くへ行きたい。
限りある人生の中で何かを掴みたい。
それはヒトの本能であって誰にも止める事は出来ない。

「終わっちゃったねー」
「そうですね...とても綺麗で感動しました」

でも俺は決して忘れない。
大切なものや守りたいものは
いつだって自分の側にあるのだから。

「レオなんで泣いてるの?」「.....泣いてない」
「涙出てるよー?」「.....涙じゃないよ」

暗い夜道を二人で歩く。
感謝祭の終わった街はとても静かで
虫のが心地よく響いていた。
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