俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第6章

システムへの攻撃。

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♢更新障害から一晩

朝までにはメンテナンスが終わっていて
お詫びの石も届いていた。

「ちょっと少ないよなぁ...」

あれほどの騒ぎを起こしたのに微妙な数だけれど
まあ、何も貰えないよりはマシか。

「引いてみようよー!」

もちろんそのつもり。
最新のガチャジンクス...“メンテ後に全力で回す”
この法則ではシステムの混乱に乗じて
当たりが出易くなるとかならないとか.....らしい。


“Grand Challenge System Assign”
おお...普通にひらけただけでちょっと嬉しい。
これで一安心だ。

シュウィン...シュウィン...シュウィン...
(.......あれ?)

シュウィン...シュウィン...シュウィン...
(.......あらら?)


一向に石の回転が止まらない。
宙に浮いたままグルグルと回り続けている。
んーこれはもしかして...

プチンッ...シュゥゥゥゥ

石を取り込んだままの召喚陣が
唐突に強制解除された。
こんな事ってあり得るのだろうか?


慌てて無事に更新が終わった端末を開くと
運営のログには同じような書き込みがあふれていた。
もちろん批判的な内容が多いが
運営頑張れって優しい書き込みもある。
俺も石が返ってくるならそれでいいけれど...

しばらく書き込みを読んでいたら
運営@公式さんのコメントが流れて来た。


“通信負荷による一時的な障害は復旧しました”
“協議の結果、追加対応としてチケットの配布をー”


チケット!これは神対応だ。
さっそく召喚陣を広げて確認する。

ブウォン...“障害の追加対応:召喚チケット×3”

石の配布をし過ぎると換金する人が増えるため
チケットでの対応なのだと思う。
さっき使った石も元に戻っていた。
(......運営、許されたな)

そのチケットを使ってガチャを回す。
ジンクスでは石で引く時よりチケットの方が
レアの確率が高いと言われていたりする。


“Grand Challenge System Assign”

いつも通りの青白い光。
黄金のチケットはヒラヒラと陣の中を舞い
強い閃光と共に消え去った。


シュウン...“ 鬼神の首飾り”


これは銀で出来てるっぽくて
細かい細工やいぶし加工が最高にカッコいい!
新しいシリーズの当たりかもしれない。

この勢いで残りのチケットも回したが失敗。
良い当たりは続かないとわかっていたけれど
つい欲が出てしまった。

それでもレアが出ただけ良かった。
見た目ゴツいから俺が首に付けてみる。


「うーん...なんだろうねぇー?」
「はっきり言ってもいいんだよカレン...」

「似合ってないと思うよっ!」


はい、その通りですよ。
ベビーフェイスな俺には全然似合っていない。
(でもせっかくの当たりだからなぁ...)

カシャン...カンカンカン...

工具箱の中から使えそうな金具を探して
ウォレットチェーンに作り変えた。
残念な使い方だけれど首に巻くよりはマシだ。


運営のログには続々と当たり報告や
外れたという報告が届いていた。

天界シリーズを当てた人も何人かいて
なんだか凄く強そうな剣や
黄金の弓矢などの写真を載せている。

「私も欲しいなぁー」
「今日はおしまい。また今度ね」

流れが悪い時は止まる勇気も必要。
カレンには悪いけれど石は次回に残す事に。


そのあと今回のバグについて公式発表があった。
一部の人はアイテムが消えるなどの被害をうけたが
運営によって無事に返還されているようだ。

原因は調査中とだけ書かれていたけれど
噂では不正ツールを使った集団が
一斉にシステムへ攻撃を仕掛けたため
運営側が自らサーバーをダウンさせたらしい。

裏社会による違法行為。
この手の話は最近頻繁に聞くようになった。
現行システムに対する不満の現れなのか
それとも権力を失った元権力者達の悪足掻きか...

どちらにしろ真っ当に引いている俺からすれば
ただの子供の言い訳にしか聞こえない。
本当に迷惑な話だな。


「さあ、そろそろ飯でも食べに行こう」
「やったぁ!ごはん屋さんだ~!」

少し疲れて作るのが面倒だったから
カレンのご機嫌回復もかねてメシ屋へ。
店内は皆ガチャの話題で持ちきりの様子だけど

ズズッ...ズズズッ.....(モグモグ)

「おじさんっ、チャーシューのおかわりっ!」
「あいよっ」

カレンは相変わらず旨そうに音を立てて
パタパタの麺をすすっていた。
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