俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第6章

クレーム対応は迅速に。

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パチパチパチ...カチ
熱心にログのニュースを読んでいるカレン。
チェックしているのは何故か気象関連の記事。

「雨が降らなくて困ってるんだってー」

最近の異常気象で南部は雨不足。
市場で野菜の価格が急激に高騰しているのも
大干ばつが影響しているのだとか。

「ウェザーって天気も動かせるんでしょ?」
「まあねー。でも基本はやっちゃダメなんだよ」

自然を勝手に変えることは
すなわち神の決定に逆らうことと同義だから
精霊であっても倫理的な部分があるらしい。

「前に大洪水になちゃったんだぁ~あははっ」
(.....それは笑い事じゃないよね?)

いま位のレベルならそんなに心配はないけれど
以前の彼女は相当女神にまで近付いていたようで
ちょっと加減を間違えてしまうと
えらい大災害を引き起こしてしまうのだとか。

天災を引き起こすのもウェザーであるが
それをしずめるのが得意なのも彼女達である。
各地をふらふらと放浪しては
気紛れに人々の頼みを聞く自由人(精霊)だ。

「もっと役に立ちたいなぁ...」
「カレンは天気予報でちゃんと人の役に立ってるよ」
「そうかなー? そうだと嬉しいなっ(ニコリ)」

カレンの“天気予報フォーキャスト”は98%で外さないから
街の人達からは非常に感謝されている。
それを仕事にしている気象魔術師の中には

“そんな確率で当てられたら商売あがったりよ!”

なんて文句を言う人もいるけれど
ただの言いがかりにすぎない。

「そろそろ端末を閉じて。仕事に出かけるよ」

今日は雨だからゴム靴を履いて仕事へ行く。
でも傘は不要だ。

「アイウォールッ!」

シュカーァン...キラキラ
台風の目アイウォール”で俺達の周りだけ日光が燦々と降り注ぐ。
足元はぬかるんでいるから気を付けて歩くけど
それ以外はいたって快適。


♢ケニーの店に到着

カチャ...
「おはようございます」
「おはようレオナルド、カレンちゃん」

大雨で荷物の箱が少し濡れている。
店内の湿度も気持ちが悪いくらい高いけれど
これも彼女の“コンディショニング”で解消。

「カレンちゃんがいてくれて助かるよ」
「またお願いね」「はいっ!」

嬉しそうなカレン。
でも俺は攻撃魔法を覚えて欲しいのだが...
まあ、もうしばらくの我慢だ。

この後彼女はひたすら届いた荷物の乾燥をして
俺はそれを地下の倉庫に運び入れた。
それから一緒に近くの届け先へ歩いて配達。

「ケニー、今日の分は全部終わったよ」
「お疲れ様。今日もありがとう」

手渡されたコインの袋が割増賃金で重い。
雨の日はこれがあるから嬉しい。


♢仕事場からの帰り道。

行きの時よりは雨も勢いを弱めていた。
まだ早いけれど晩ご飯の食材を市場で買い出し。
カレンは行きつけの肉屋へと向かった。

「無駄遣いしちゃ駄目だよ?」
「わかってるよー!」

肉なら基本なんでも食べるけれど
高級なお肉はもちろん大好物だから困る。
これはダンジョンに出れば解決する問題なのだが
俺達だけで行くにはまだ無理がある。

(......そろそろパーティーに入ろうかな)

最近それを調べているのだけど
初心者歓迎の所は参加条件が厳しかったりして
仕事をしている俺には都合が合わないものばかり。
どうしたものか...さてと。

「これで買い出し終了。行くよカレン」
「うん!今日はドラゴンステーキだよー!」

勝手に高いやつ買ったなカレン.....
まあ、今日の給与は彼女のおかげでもあるし
肉屋も常連割引してくれたらしいから特別に許す。
俺もドラゴン肉は大好きだ。


家に着いてから貯蔵庫に食材を入れる。
ステーキは焼くだけだから仕込みも要らないし
あとは晩飯の時間になるまでの間
昨日届いたフローリアの曲でも聞こうかな...ん?

ピロン♪

“メッセージが届きました”
“レオナルド、悪いんだけれどすぐ戻ってくれる?”

ケニーから連絡が来た。
客を待たせているとも書かれている。
(これはクレーム対応で土下座コースか.....)

配達でミスったのだろうか。
小さなトラブルならお店が処理するはずだから
呼び出しをくらうなんて余程の事態。

一瞬頭が真っ白になったが
とりあえずカレンを連れて店まで急いだ。
こういう時は速さが重要だ。

カチャ...バタン

「レオナルド。帰ったのに呼び出してゴメンね」
「あんたに逢いたいってがいるんだけど...」

待合所のソファーの真ん中で
偉そうに足を組んで座っている女の子。
どうやらクレームとかではなさそうな感じだから
俺はホッと胸を撫で下ろした。
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