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第6章
獣人族とケモナーは違う。
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♢仕事場の待合室
「あんたに逢いたいって娘がいるんだけど...」
ピクピクッ...
小刻みに耳をパタつかせる少女。
色白で黒髪ショートカット。
年は見た目カレンくらいに見えるから
俺より年下なのだろうか。
...どうしてもチラチラと見てしまう。
大きな獣の耳とフサフサの手袋をしていて
明らかに普通の人間ではなさそうだ。
「レオナルド、あの娘は獣人族だよ」
「へぇ...初めて見るよ」
ケニーと小声で話していたが
聴こえているのか片耳をこちらに向けていた。
「これは手袋じゃない。手だからな」
俺達の方に顔を向けると
証拠とばかりに手をグーパーしてみせる。
たしかに立派な肉球...
この世界には人間以外にも
亜空間に飛ばされなかった生き物がいる。
精霊や魔獣に近いが家庭を持っているもの
獣人族(ケモミミ族)やエルフ族などがそうだ。
精霊や魔物、魔獣が“自然”から生まれるのに対して
これらは人間と同じように“繁殖”する。
おそらく家族を引き離すのは倫理的にマズいので
人間と同じ様にこのシステムへ参加させたのだろう。
もちろん彼らもガチャを引くし
魔法関連の物や財産なども例外なく没収された。
その姿から差別されることもあるけれど
言葉も通じるからわりと普通の暮らしをしている。
「初めまして。カワイイね、その耳」
ジャキンッ!!
いま俺の鼻ギリギリのところに槍の先がある。
そして凄く睨まれている。
「オマエ...次ソノ言葉ヲ言ッタラ...コロスッ!!」
黒かった瞳が金色に変わっていて
それは獣の目をしていた。
「デリカシーがないね...レオナルドは」
「な.....なんかごめんなさい」
「まあ、この通り悪気はないんだ。許してやって」
よくわからないけれどケニーと一緒に謝った。
シュゥゥ...元の黒眼に戻る。
「言葉には気を付けてください」
(...呼び出しておいて上から目線かよ)
後で聞いたところによると
彼ら獣人族には“可愛い”が差別的に聞こえるらしい。
とてもプライドが高い種族だ。
「我々は誇り高き獣の血を継ぐ者」
「ケモナーとは違うのだからなっ!」
ケモナーとは獣装束が趣味の人。
獣人族は人間っぽいけど本物の獣で狩猟民族。
耳や手など部分的に獣の身体をしている。
この娘は耳と手以外はヒトと変わらない姿で
可愛いと言ったらまた怒るだろうけど、可愛い。
「ところで俺に何か用ですか?」
「お前には用はないぞ」
「後ろのそのお方に用があるのだっ!」
........ん?
後ろには指をさされてキョトンとするカレン。
「カレン・ウェザー様に用があるのだっ!」
ウェザー様って...
こいつなんでカレンのこと知ってるんだ?
そういえばどこかで見かけた気がする。
「あ、君は娘娘で働いていた子だよね?」
「...........いえ人違いです」
彼女は顔を背けてそう否定したが間違いない。
映画の登場人物に似せた格好なのかと思っていたが
まさか本当の獣人族だったとは...
どうやらその時の会話から偶然ウェザーだと知り
更に地域のログから探して職場を特定したらしい。
しかも今日は配達中の俺達を密かに尾行して
本当に“ウェザー”なのか確認していたのだという。
ストーカーっぽくて怖いな。
「我ら一族を代表してウェザー様にお願いします」
「どうか一緒に村までお越しください」
そう言うと深々と頭を下げたケモミミ。
南部は例の異常気象で晴天が続いていて
農作物が育たないのはもちろん
木々も枯れ始めている状態なのだという。
だからカレンに雨を降らせて欲しいとの依頼だ。
「でもシフトも入っているからなぁ...うーん」
「行ってあげなよ。ウチは閑散期だしさ」
「雨かぁ...雨ねぇ...んー」
後ろで何かブツブツと独り言を呟くカレン。
やはり天気を変える事はマズイという事だろう。
「どうかお力を貸して下さいウェザー様!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!
何度も額を床に叩きつけるケモミミを
慌ててケニーが止めた。
必死さは伝わったが腫れて血が滲んでいる。
ここまでされては...
「少しだけ考えさせてもらってもいいかな」
「ではお返事は今夜中にお願いしますね?」
「.......それは無理だと思う」
急に偉そうな態度に戻った。
もう晩御飯の時間だから今日は諦めてもらい
明日以降に返事をすることになった。
♢二度目の帰宅
カチャ...バタン
(ふぅ...なんだか疲れたな)
晩飯が焼くだけのステーキでよかった。
さっそく貯蔵庫から肉を取り出して焼こうっと...
「おぉ!それはドラゴン肉ですねっ」
店からずっと尾行されていたのか
振り返ると部屋の真ん中に
嬉しそうに耳をパタつかせるあの娘が立っていた。
「あんたに逢いたいって娘がいるんだけど...」
ピクピクッ...
小刻みに耳をパタつかせる少女。
色白で黒髪ショートカット。
年は見た目カレンくらいに見えるから
俺より年下なのだろうか。
...どうしてもチラチラと見てしまう。
大きな獣の耳とフサフサの手袋をしていて
明らかに普通の人間ではなさそうだ。
「レオナルド、あの娘は獣人族だよ」
「へぇ...初めて見るよ」
ケニーと小声で話していたが
聴こえているのか片耳をこちらに向けていた。
「これは手袋じゃない。手だからな」
俺達の方に顔を向けると
証拠とばかりに手をグーパーしてみせる。
たしかに立派な肉球...
この世界には人間以外にも
亜空間に飛ばされなかった生き物がいる。
精霊や魔獣に近いが家庭を持っているもの
獣人族(ケモミミ族)やエルフ族などがそうだ。
精霊や魔物、魔獣が“自然”から生まれるのに対して
これらは人間と同じように“繁殖”する。
おそらく家族を引き離すのは倫理的にマズいので
人間と同じ様にこのシステムへ参加させたのだろう。
もちろん彼らもガチャを引くし
魔法関連の物や財産なども例外なく没収された。
その姿から差別されることもあるけれど
言葉も通じるからわりと普通の暮らしをしている。
「初めまして。カワイイね、その耳」
ジャキンッ!!
いま俺の鼻ギリギリのところに槍の先がある。
そして凄く睨まれている。
「オマエ...次ソノ言葉ヲ言ッタラ...コロスッ!!」
黒かった瞳が金色に変わっていて
それは獣の目をしていた。
「デリカシーがないね...レオナルドは」
「な.....なんかごめんなさい」
「まあ、この通り悪気はないんだ。許してやって」
よくわからないけれどケニーと一緒に謝った。
シュゥゥ...元の黒眼に戻る。
「言葉には気を付けてください」
(...呼び出しておいて上から目線かよ)
後で聞いたところによると
彼ら獣人族には“可愛い”が差別的に聞こえるらしい。
とてもプライドが高い種族だ。
「我々は誇り高き獣の血を継ぐ者」
「ケモナーとは違うのだからなっ!」
ケモナーとは獣装束が趣味の人。
獣人族は人間っぽいけど本物の獣で狩猟民族。
耳や手など部分的に獣の身体をしている。
この娘は耳と手以外はヒトと変わらない姿で
可愛いと言ったらまた怒るだろうけど、可愛い。
「ところで俺に何か用ですか?」
「お前には用はないぞ」
「後ろのそのお方に用があるのだっ!」
........ん?
後ろには指をさされてキョトンとするカレン。
「カレン・ウェザー様に用があるのだっ!」
ウェザー様って...
こいつなんでカレンのこと知ってるんだ?
そういえばどこかで見かけた気がする。
「あ、君は娘娘で働いていた子だよね?」
「...........いえ人違いです」
彼女は顔を背けてそう否定したが間違いない。
映画の登場人物に似せた格好なのかと思っていたが
まさか本当の獣人族だったとは...
どうやらその時の会話から偶然ウェザーだと知り
更に地域のログから探して職場を特定したらしい。
しかも今日は配達中の俺達を密かに尾行して
本当に“ウェザー”なのか確認していたのだという。
ストーカーっぽくて怖いな。
「我ら一族を代表してウェザー様にお願いします」
「どうか一緒に村までお越しください」
そう言うと深々と頭を下げたケモミミ。
南部は例の異常気象で晴天が続いていて
農作物が育たないのはもちろん
木々も枯れ始めている状態なのだという。
だからカレンに雨を降らせて欲しいとの依頼だ。
「でもシフトも入っているからなぁ...うーん」
「行ってあげなよ。ウチは閑散期だしさ」
「雨かぁ...雨ねぇ...んー」
後ろで何かブツブツと独り言を呟くカレン。
やはり天気を変える事はマズイという事だろう。
「どうかお力を貸して下さいウェザー様!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!
何度も額を床に叩きつけるケモミミを
慌ててケニーが止めた。
必死さは伝わったが腫れて血が滲んでいる。
ここまでされては...
「少しだけ考えさせてもらってもいいかな」
「ではお返事は今夜中にお願いしますね?」
「.......それは無理だと思う」
急に偉そうな態度に戻った。
もう晩御飯の時間だから今日は諦めてもらい
明日以降に返事をすることになった。
♢二度目の帰宅
カチャ...バタン
(ふぅ...なんだか疲れたな)
晩飯が焼くだけのステーキでよかった。
さっそく貯蔵庫から肉を取り出して焼こうっと...
「おぉ!それはドラゴン肉ですねっ」
店からずっと尾行されていたのか
振り返ると部屋の真ん中に
嬉しそうに耳をパタつかせるあの娘が立っていた。
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