俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第7章

良い肉は適切な温度で焼く。

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「焼きは任せて下さいっ!」
「.....ってか何でここにいるの?」

家まで付いてきたケモミミ。
当然のようにキッチンに立って手を綺麗に洗う。
被毛が濡れて水を吸っているから
手を拭いたタオルがビショビショだ...

「サラダ作ってもらえます?」
「...だから何でここにいるんだって」

伯父のおかげで面倒な事には慣れているけれど
けっこうイレギュラーな事態だと思う。
彼女は手際よくスパイスと塩を振りかけると
フライパンでじっくりと肉を焼き始めた。

「今夜話し合って明日返事するからー」
「黙っててください!今重要なところなので」

肉と睨めっこしている。
言うことを聞きそうもないから肉は任せて
先にサラダを運んでパンを切り分けた。

「まだかなぁ~まだかなぁ~」

焦がしたら温厚なカレンでもきっと怒るだろう。
高い肉だから俺は少し心配になった。

「お待たせしましたっ!」
「外はパリパリ、中はフニャフニャですよっ!」

その表現はどうかと思うけれど
すごく美味しそうな焼き目がついている。

「たべよたべよー!」

狩猟民族なだけあって肉の扱いを心得ているためか
パリッとしっかり焼いてある表面と
中は適度なレア加減で噛むと広がる旨味と甘み...
一流の料理人にも負けず劣らずの焼き加減。

「おいしい?それは良かったです」

ただ座ってジッと食事を見守るケモミミ。
一応客人なのにこの状況は悪いから
食器をもう一セット出して俺の肉を半分あげた。

「はいどうぞ。一緒に食べよう」
「本当にいいんですか!?」
「私のお肉も少しあげるねー」

カレンも自分の皿からひと切れ提供。
嬉しくて耳をパタパタさせるケモミミ。

「なんだか申し訳ないですなぁ」
「おおっ!この旨味...そして肉汁も素晴らしい」

大きな獣の手をしているけれど
器用にナイフとフォークを使って食べている。

ペロリ...「ごちそうさまでした」
さすが肉食獣なだけあってすぐに食べ終わった。
お腹が満たされて満足そうな顔を浮かべている。

「そういえば君の名前聞いてなかったよね?」
「わたしはケモミミ族のミトと申します」

食後のお茶を飲みながら色々と話を聞いた。
彼女の家は家族でコテージを経営しているのだが
ツリーハウスのような作りをしているため
元の木が干ばつで弱って倒壊の危機なのだとか。

「一刻も早くお越しいただきたいのです」
「週末に観たいネットがあるからなぁ...」
「ヒドイですよぉ~!倒壊の危機ですよ!?」

森の中は魔術ネットの繋がりが悪い事が多い。
フローリアのファーストライブ生中継をとるか...
困っている人達(獣人)を助けるか...非常に悩む。

「別館のホテルならネットが繋がりやすいですよ」
「全室無料Wi-Fiを完備してますので」

Wizard-Fidelity (ウィザード・フィデリティ)
魔術ネットワークの利用は魔力を消費するのだが
回線の弱い場所だと魔力消費は格段に増える。
それを他の魔術師達が負担して
速度も快適に繋げてくれるサービスの事である。


これで問題は解決だ。
特に断る理由もなくなったから
明日にでも南部の密林地帯に出向くことにした。

「もう遅いし泊まっていけば?」
「いやいやいやいやぁ.....ではこのへんで」

断るのかと思いきやソファーで横になる。
最初からそのつもりだったのだろう。
そうじゃなきゃ家まで押しかけて来ないし。

「じゃあカレンも支度しておいてよ」
「うん...レオ、あのさぁー」
「やっぱりなんでもない。おやすみなさい」

カレンの様子に少し違和感を覚えたけれど
疲れていたから何も聞かずに眠ってしまった。


♢朝日が差し込むキッチン

翌朝ミトはまだソファーで丸くなっていたから
起こさないよう静かに簡単な朝食を作る。
ボンゴリのベーコンに卵をのせて...ジュゥゥ

「ベーコンエッグですねっ!」
「うわぁ!ビックリしたぁー」

また気配を消して背後から現れた。
肉のいい匂いで起きたのだろうけれど
心臓に悪いからやめてほしい。

「おはようございます。レオ様」
「お皿をテーブルまでお持ちします」

相変わらず彼女はとても手際が良くて
俺がシビ珈琲を淹れて戻るまでの間に
お洒落なテーブルセッティングと
中央には綺麗な花まで飾られていた。
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