俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

文字の大きさ
74 / 92
第7章

密林のコテージ。

しおりを挟む
♢ケモミミ族の村へ

身支度を整えて出発
村まではかなり距離があるけれど
乗り換えが無いから寝台の高速馬車にした。
多少揺れるが横になれるから鉄道より楽かも。

バスの中で一泊。
翌朝には一番近い停留所に到着。
坂道を少し登るとケモミミ族の村が見えてきた。

「あれがウチのコテージですよ」

赤いランタンがそこここにつる下がっていて
異世界の雰囲気に似ている...似ている?

「これ異世界の竜と紅い月だよね」
「そう。ロケ地なのです」

なるほど。
それ繋がりで“あの店”で働いていたのか。
山奥なのに聖地巡礼に訪れる観光客も多くて
なんだか活気に満ち溢れている。
それにしても...

「暑い...すごく蒸し暑いんだね密林地帯って」
「いつもは木陰に入ると涼しいのですが...」

雨が降らずに高温化していて
陽の当たらない場所でも暑さがハンパないけれど

「コンディショニング!」
「ありがとうカレン」

彼女がいればなんて事ない。
湿度がなくなり暑さはだいぶ緩和した。

「中へどうぞ。ジュース飲みます?」

イメージしていたコテージと全然違う。
雑誌に出てくるようなお洒落なデザインで
まさに南国リゾート感が漂っている。

「昨年は旅ログ人気の宿100選にも選ばれました」
「すごーい!天井も高いよー!」

旅ログのページを覗いたら高得点が並んでいた。
でも最近の評価は...

“サービスは良かったけど蒸し暑い”
“素敵だけど暑くて全然寝れない”

なんて書き込みがいくつかあった。

「だからピンチなんですって」
「大変だね (ゴクゴク...このジュースうまいな)」

快適すぎて動きたくないけれど
ケモミミの願いを叶えるべく地下室へと移動。
そこにはコテージを支えている大木の根があって
池のように水が溜まっていた。

「この水瓶が枯れたら木も...という訳なのです」
「ウェザー様、さあ出番でございますっ!」
「・・・・・・・」

沈黙のカレン。
そして気まずそうに苦笑いを浮かべる。
そういえばアレだな。

「カレン、雨の魔法はまだ使えないんだよね」
「そうそう。そうなんだよ~!」
「それじゃ駄目じゃないですかぁぁぁぁ!!!」

絶句するケモミミ。
そのショックは計り知れない。

「でも明日から大雨が降るから大丈夫」
「.....本当でしょうか」「間違いないよっ!」

到着後に“天気予報フォーキャスト”で調べていたカレンによると
明日から二日間まとまった雨が降るらしい。
あまり来た意味がなかったな...

「じゃあ俺達は帰るよ」
「いえいえっ!ぜひ泊まっていってください」
「ステーキのご恩も返しておりませんし...」

何もしてなくて申し訳ないが
せっかくなので宿泊することにした。
中々広い部屋で魔術モニターも付いているから
端末を繋げればネットサーフィンも快適。

コンコンコン...
「バーベキューの準備ができましたよ」

テラスに出ると色々なケモミミが集まっていた。
獣人族は多胎児だから兄弟が多くて
彼女は十二人いる兄弟の上から三番目の長女。
従業員は雇わず家族経営をしているそうだ。

「兄様のニトで隣が妹のヨツ。それとロクにヤト...」
(......うん。これは覚えられそうにない)

母親と何人かは狩りに出ているらしい。

「ミトが世話になったとか」
「好きなだけ泊まっていきなさい」

一際大柄な男が食材を持って現れた。
でも見た感じ普通の人間?

トト様は人間で勇者様なのです」
「正しくは“元勇者”だ。今は“経営者”だからな」

風格が...なんというか全然違う。
優しさと強さが満ち溢れていて圧倒された。
これが勇者(元)なのか...

「そうかそうか!冒険者志望とは素晴らしい」
「後でお手合わせ願えるかな?」

こんなチャンスは滅多にないから
俺は食事を早々に済ませて剣を構えた。

ジャギン....ギンッ...シュギン...ギンッ...ジャキン.....

フィオの剣筋とはまた違って
重く力強い返しに手がズシンと痺れる。

「レオ頑張って~!(モグモグ)」
「父様無理するなよー!若くないんだから」

皆がまだ宴を続ける中
俺と勇者(元)は夢中で剣を振るう。
もちろん手加減はされていたのだけれど
センスが良いと我が子のように褒めてくれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...