俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第7章

密林のコテージ。

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♢ケモミミ族の村へ

身支度を整えて出発
村まではかなり距離があるけれど
乗り換えが無いから寝台の高速馬車にした。
多少揺れるが横になれるから鉄道より楽かも。

バスの中で一泊。
翌朝には一番近い停留所に到着。
坂道を少し登るとケモミミ族の村が見えてきた。

「あれがウチのコテージですよ」

赤いランタンがそこここにつる下がっていて
異世界の雰囲気に似ている...似ている?

「これ異世界の竜と紅い月だよね」
「そう。ロケ地なのです」

なるほど。
それ繋がりで“あの店”で働いていたのか。
山奥なのに聖地巡礼に訪れる観光客も多くて
なんだか活気に満ち溢れている。
それにしても...

「暑い...すごく蒸し暑いんだね密林地帯って」
「いつもは木陰に入ると涼しいのですが...」

雨が降らずに高温化していて
陽の当たらない場所でも暑さがハンパないけれど

「コンディショニング!」
「ありがとうカレン」

彼女がいればなんて事ない。
湿度がなくなり暑さはだいぶ緩和した。

「中へどうぞ。ジュース飲みます?」

イメージしていたコテージと全然違う。
雑誌に出てくるようなお洒落なデザインで
まさに南国リゾート感が漂っている。

「昨年は旅ログ人気の宿100選にも選ばれました」
「すごーい!天井も高いよー!」

旅ログのページを覗いたら高得点が並んでいた。
でも最近の評価は...

“サービスは良かったけど蒸し暑い”
“素敵だけど暑くて全然寝れない”

なんて書き込みがいくつかあった。

「だからピンチなんですって」
「大変だね (ゴクゴク...このジュースうまいな)」

快適すぎて動きたくないけれど
ケモミミの願いを叶えるべく地下室へと移動。
そこにはコテージを支えている大木の根があって
池のように水が溜まっていた。

「この水瓶が枯れたら木も...という訳なのです」
「ウェザー様、さあ出番でございますっ!」
「・・・・・・・」

沈黙のカレン。
そして気まずそうに苦笑いを浮かべる。
そういえばアレだな。

「カレン、雨の魔法はまだ使えないんだよね」
「そうそう。そうなんだよ~!」
「それじゃ駄目じゃないですかぁぁぁぁ!!!」

絶句するケモミミ。
そのショックは計り知れない。

「でも明日から大雨が降るから大丈夫」
「.....本当でしょうか」「間違いないよっ!」

到着後に“天気予報フォーキャスト”で調べていたカレンによると
明日から二日間まとまった雨が降るらしい。
あまり来た意味がなかったな...

「じゃあ俺達は帰るよ」
「いえいえっ!ぜひ泊まっていってください」
「ステーキのご恩も返しておりませんし...」

何もしてなくて申し訳ないが
せっかくなので宿泊することにした。
中々広い部屋で魔術モニターも付いているから
端末を繋げればネットサーフィンも快適。

コンコンコン...
「バーベキューの準備ができましたよ」

テラスに出ると色々なケモミミが集まっていた。
獣人族は多胎児だから兄弟が多くて
彼女は十二人いる兄弟の上から三番目の長女。
従業員は雇わず家族経営をしているそうだ。

「兄様のニトで隣が妹のヨツ。それとロクにヤト...」
(......うん。これは覚えられそうにない)

母親と何人かは狩りに出ているらしい。

「ミトが世話になったとか」
「好きなだけ泊まっていきなさい」

一際大柄な男が食材を持って現れた。
でも見た感じ普通の人間?

トト様は人間で勇者様なのです」
「正しくは“元勇者”だ。今は“経営者”だからな」

風格が...なんというか全然違う。
優しさと強さが満ち溢れていて圧倒された。
これが勇者(元)なのか...

「そうかそうか!冒険者志望とは素晴らしい」
「後でお手合わせ願えるかな?」

こんなチャンスは滅多にないから
俺は食事を早々に済ませて剣を構えた。

ジャギン....ギンッ...シュギン...ギンッ...ジャキン.....

フィオの剣筋とはまた違って
重く力強い返しに手がズシンと痺れる。

「レオ頑張って~!(モグモグ)」
「父様無理するなよー!若くないんだから」

皆がまだ宴を続ける中
俺と勇者(元)は夢中で剣を振るう。
もちろん手加減はされていたのだけれど
センスが良いと我が子のように褒めてくれた。
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