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第8章
不思議な生き物。
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♢朝明けのダンジョン
冒険者の朝は早い。
そして女子達は朝からガチャを回している。
「朝っぱらからキャーキャー騒がしいなぁ」
「見てよウォルター!綺麗な髪飾りっ」
今日は姫ガチャの日なんだとか。
お姫様に関連した魔導具が当たるらしいのだが...
「レオ、私もやりたいー!」
「ダメ。ガチャ禁して石貯めてるんだから」
「でもこの前ホテルで回してたよ?」
それを言われると反論できないから
一回だけの約束で石を渡した。
“Grand Challenge System Assign”
「えーいっ!(ポイッ)」
俺の開いた召喚陣に石を投げ入れるカレン。
ガチャは初めてだから嬉しそう。
シュウィン...シュワワ...ピシャン...
“封魔扇子”
暑い時に広げて扇ぐ扇子という代物のようだ。
日常雑貨系の魔導具なのだろう。
涼しいけれどただそれだけ。
「でもレースになっていて可愛いわね」
「うん!気に入ったよっ!」
女子は実用性より見た目の可愛さが重要なのだ。
満足したならそれでいいけど。
「冷めないうちに食えよ」
ニトが朝からドラゴンステーキサンドと
昨日のシチューの残りでスープを作ってくれた。
ボリューム満点で昼食は入らなそうだ。
「カレンも食べ終わったら荷造りして」
「はーい。(モグモグ)」「いい食いっぷりだな!」
先に荷造りを終えたクリスは髪を下ろして
リンツと一緒になにやら悪戦苦闘している様子。
「んー、なんかイメージと違うわ」
「まとめ髪って難しいよね」
片付けを終えたニトが近付いていく。
またちょっかいだすつもりじゃ...
「どれ。こうだろ...こっちから三つ編みにして」
「それで後ろに付けんだよ。ほれ完成」
まさかのヘアアレンジスキルを披露したニト。
編み込みはケモミミ族の伝統的なスタイルだから
元々得意なのだという。
「これで2、3割り増しに見えるっしょ!」
「あれ...なんで怒ってるんだ? 褒めただけだし」
(素直に可愛いって言えばいいのに)
それから帰路についての作戦会議。
予定していたワープホールが使えなくなったが
地道に降りるにはもう一日かかってしまう。
「行きの崖みたいにグリフォンで飛ぶとか」
「それは無理だ。この結界があるからな」
一度結界の外へ出ると戻ることが出来ないから
グリフォン案は却下。
荷物をまとめたものの動けない俺達。
トコトコ...トコトコ...
ウォルターの“ポッケ”からドラゴブリンが出てきて
「どうしたの?勝手に出てきちゃだ...」
グアル.....ビュイーン!!!
(なんだ!?)
眩しい光に飲み込まれた。
体が宙に浮く感覚となにもない景色。
(それに...それに...落ち...うわぁ!!!)
「カレン掴まって!(なんで笑顔なんだよ!)」
「わーい!なんだかたのしー!」
ぐるぐる回って気持ちが悪い。
吐き...吐きそうだ。
ダンッ!ズタァ.....
数秒ほど宙に浮いた後どこかへ不時着した。
「つぁ...みんな大丈夫か!リンツしっかりしろ!」
「う...うん。ボクは平気」
ウォルターはリンツを、ニトはクリスを抱えて落ちた。
俺も少し擦りむいた程度。
「目を覚ませクリス」「ん...うぅん...」
クリスは気を失っている様子だが
なんだかなぁ...
「レオナルド、なんだか暑いのは南国のせいか?」
「暑いっすよね。薄曇りなのに」
いつまで抱えているつもりなのだろうか。
非常に納得のいかない光景だ。
そしてすごく羨ましい。
ザッ...ザッ...誰か近付いて来る。
「お前たちか。懐かしいモノを連れ帰ったな」
「父様!オレ達さっきまで遺跡の最上階にいたら...」
「話は向こうで。その娘を休ませてあげなさい」
あの元勇者で経営者のケモミミ父(人間)だ。
大きな音と魔力を感じて駆けつけて来たのだ。
とりあえずコテージへと向かう。
「わけがわかんねーよ...父様何か知ってるだろ?」
「落ち着けニト。お前は落ち着きがないな」
大きな長いソファーにクリスを寝かせる。
俺達も椅子に腰掛けて出されたお茶を一杯飲んだ。
混乱していたがちょっと落ち着いた。
「コレはなんでも見様見真似で覚えるんだ」
「移動魔法か何かを使ったかい?」
「ボクがワープホールを...でもこんなに凄くない」
何百年、何千年と旅した化けドラゴブリンは
通常のソレとは違う次元を生きているらしい。
極めて精霊に近い存在なのだという。
「.......ユウ...ユウシャ...キタ...コナイ...キタ....」
「ああ、久しぶりだな。バスティ」
スゥ...そう呼ばれると女の姿に変わった。
勇者は懐かしむような目で彼女を見つめる。
「いまの主人はその子だろ?俺じゃない」
「リンツ...ムスンダ...ユウシャ...イッショニ...」
「悪いが旅はもうしないんだ。行けないよ」
ドラゴブリンは寂しそうな顔をしたが
元の姿に戻ってリンツの膝にちょこんと座った。
冒険者の朝は早い。
そして女子達は朝からガチャを回している。
「朝っぱらからキャーキャー騒がしいなぁ」
「見てよウォルター!綺麗な髪飾りっ」
今日は姫ガチャの日なんだとか。
お姫様に関連した魔導具が当たるらしいのだが...
「レオ、私もやりたいー!」
「ダメ。ガチャ禁して石貯めてるんだから」
「でもこの前ホテルで回してたよ?」
それを言われると反論できないから
一回だけの約束で石を渡した。
“Grand Challenge System Assign”
「えーいっ!(ポイッ)」
俺の開いた召喚陣に石を投げ入れるカレン。
ガチャは初めてだから嬉しそう。
シュウィン...シュワワ...ピシャン...
“封魔扇子”
暑い時に広げて扇ぐ扇子という代物のようだ。
日常雑貨系の魔導具なのだろう。
涼しいけれどただそれだけ。
「でもレースになっていて可愛いわね」
「うん!気に入ったよっ!」
女子は実用性より見た目の可愛さが重要なのだ。
満足したならそれでいいけど。
「冷めないうちに食えよ」
ニトが朝からドラゴンステーキサンドと
昨日のシチューの残りでスープを作ってくれた。
ボリューム満点で昼食は入らなそうだ。
「カレンも食べ終わったら荷造りして」
「はーい。(モグモグ)」「いい食いっぷりだな!」
先に荷造りを終えたクリスは髪を下ろして
リンツと一緒になにやら悪戦苦闘している様子。
「んー、なんかイメージと違うわ」
「まとめ髪って難しいよね」
片付けを終えたニトが近付いていく。
またちょっかいだすつもりじゃ...
「どれ。こうだろ...こっちから三つ編みにして」
「それで後ろに付けんだよ。ほれ完成」
まさかのヘアアレンジスキルを披露したニト。
編み込みはケモミミ族の伝統的なスタイルだから
元々得意なのだという。
「これで2、3割り増しに見えるっしょ!」
「あれ...なんで怒ってるんだ? 褒めただけだし」
(素直に可愛いって言えばいいのに)
それから帰路についての作戦会議。
予定していたワープホールが使えなくなったが
地道に降りるにはもう一日かかってしまう。
「行きの崖みたいにグリフォンで飛ぶとか」
「それは無理だ。この結界があるからな」
一度結界の外へ出ると戻ることが出来ないから
グリフォン案は却下。
荷物をまとめたものの動けない俺達。
トコトコ...トコトコ...
ウォルターの“ポッケ”からドラゴブリンが出てきて
「どうしたの?勝手に出てきちゃだ...」
グアル.....ビュイーン!!!
(なんだ!?)
眩しい光に飲み込まれた。
体が宙に浮く感覚となにもない景色。
(それに...それに...落ち...うわぁ!!!)
「カレン掴まって!(なんで笑顔なんだよ!)」
「わーい!なんだかたのしー!」
ぐるぐる回って気持ちが悪い。
吐き...吐きそうだ。
ダンッ!ズタァ.....
数秒ほど宙に浮いた後どこかへ不時着した。
「つぁ...みんな大丈夫か!リンツしっかりしろ!」
「う...うん。ボクは平気」
ウォルターはリンツを、ニトはクリスを抱えて落ちた。
俺も少し擦りむいた程度。
「目を覚ませクリス」「ん...うぅん...」
クリスは気を失っている様子だが
なんだかなぁ...
「レオナルド、なんだか暑いのは南国のせいか?」
「暑いっすよね。薄曇りなのに」
いつまで抱えているつもりなのだろうか。
非常に納得のいかない光景だ。
そしてすごく羨ましい。
ザッ...ザッ...誰か近付いて来る。
「お前たちか。懐かしいモノを連れ帰ったな」
「父様!オレ達さっきまで遺跡の最上階にいたら...」
「話は向こうで。その娘を休ませてあげなさい」
あの元勇者で経営者のケモミミ父(人間)だ。
大きな音と魔力を感じて駆けつけて来たのだ。
とりあえずコテージへと向かう。
「わけがわかんねーよ...父様何か知ってるだろ?」
「落ち着けニト。お前は落ち着きがないな」
大きな長いソファーにクリスを寝かせる。
俺達も椅子に腰掛けて出されたお茶を一杯飲んだ。
混乱していたがちょっと落ち着いた。
「コレはなんでも見様見真似で覚えるんだ」
「移動魔法か何かを使ったかい?」
「ボクがワープホールを...でもこんなに凄くない」
何百年、何千年と旅した化けドラゴブリンは
通常のソレとは違う次元を生きているらしい。
極めて精霊に近い存在なのだという。
「.......ユウ...ユウシャ...キタ...コナイ...キタ....」
「ああ、久しぶりだな。バスティ」
スゥ...そう呼ばれると女の姿に変わった。
勇者は懐かしむような目で彼女を見つめる。
「いまの主人はその子だろ?俺じゃない」
「リンツ...ムスンダ...ユウシャ...イッショニ...」
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