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第8章

レアな当たりは続く。

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負ける気がしない。
その言葉に偽りはなかったのだけれど
.....結果はこの有様だ。

「壮絶な爆死だなレオナルド」
「.........(言葉が見つからない)」

最初の十連でまず一回目の爆死。
続けざまに十連を二回チャレンジして
見事に爆死ロイヤルストレートフラッシュだ。

暖房関連のアイテム排出率は確かに高いのだが
その内容には色々と問題があり

“魔術カイロ”
“魔術カイロ(使い捨て)”

この二つが異常な確率で登場する。
紛らわしい名前をしているが魔術暖房の一種で
かつて日用品として大量生産されていた物だから
出るわ出るわ...

「全部で十二個もあったよー!」
「詐欺だ。運営許されない」

運営が在庫一掃を狙っているとしか思えない。
他にもヒートグローブやマフラーも当たったが
俺達に必要なのは暖房器具だ。
雪山ならまだしも室内で凍死なんて少しも笑えない。

「ここで暮らせばいいじゃないかぁ~」
「謹んでご遠慮致します」
「つれないなぁ...昔は仲良く暮らしてただろ?」

それは早く消し去りたい黒歴史である。
布団に入ってくるし...風呂覗かれるし...他にも...
アカデミー卒業まで俺は散々な目にあったから
いまの家で暮らす方がよっぽどマシだ。

「もう単発しか回せないか...どうしよう」
「私がやってみるっ!」「あぁ...まあいいけど」

流れが悪い時は変化も必要。
女神にもすがる思いで残りの石を託す。

「いっくよ~!えーいっ!」
ブオン...“Grand Challenge System Assign”

シュゥン...シュワワーン...シュルルン...シャキーン
(モーションが長いから期待できるかも...)

フォン...“小型魔術ファンヒーター”

小型ってところが売りの商品。
寒い洗面所やトイレなどで大活躍してくれる
ピンポイントで暖める為のヒーターだ。
違う...コレじゃない。

「もう一度投げてみるよ。えいっ!」

シュゥン...シュワン...シュゴゴン
黄金に輝いて砕け散る石。
これはレア確定のパターン!!

ブォン...“コタトゥ”

コタトゥ?
テーブルにしては低すぎる謎の大型家電。
試しに魔術電源を入れてみると

「なんだかボーッとするよぉ」
「俺も意識が遠のいて...うご...動けない...」
「呪いだなレオナルド...やばい...ぞ...これは...」

最初はとても暖かく居心地も良かったのだけれど
フィオが救出しなければ危うく死んでいた。
なんて恐ろしい呪いなのだろうか。

「あぶなかったねぇー。じゃあもう一回!」
「もうそれで最後の石だよ。慎重にいかないと...」
「レアな当たりは続くっていうし、いいんじゃないか?」

止める間もなくカレンは石を投げ入れた。
もうどうにでもなれ。

フォン...“大判魔術毛布(厚手)”

名前の通り魔術で暖かくなる大きな毛布。
これなら寒さに凍えながら眠らなくてよさそうだ。
結局魔術ヒーターは出なかったけれど
石が貯まるまで暫くはこれらで我慢するしかない。



「みてこれ当たったの~!」
「綺麗な扇子ですね。この前の姫ガチャですか?」

カレンが遺跡の時に当てた扇子を取り出した。
開いたり閉じたりして鑑定を始めるフィオ。
そんなに貴重な代物なのだろうか?

「それは貴族の装飾品とかでしょ?」
「違いますよ。これは立派な“武器”です」

まさかこれが武器だと思わなかったけれど
フィオが庭でお手本を見せてくれるという。

「私の持っている封魔扇子は小さめなのですが」
「...少し離れていた方がいいですよ」

火炎鬼気乱舞ファイアーロンド
ブォウ...ズワァァァァァァァ!!!

扇子を広げて勢いよく振り上げると同時に
攻撃系の火魔法を発動。
炎はグルグルと渦を巻いて空へ駆け上がり
彼女が扇子を片手に持って妖艶に舞い踊ると
仰ぐのを止めるまで延々と燃え続けた。

ブォウゥゥ...シュゥゥゥゥ

これは通常と全く異なる威力だ。
つまり“武器”による“特殊能力”が付加されている。

「杖と同じように扇子から魔法を発動します」
「女性には軽くてオススメの武器ですよ!」
「知らなかった...」

ウェザーなら風魔法での使用が相性良いらしい。
まだ覚えるのは先かもしれないけれど
カレンは嬉しそうに何度も空を扇いでいた。
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