俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第2章

西の森ノラ一掃。

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翌朝。俺が少し遅めに目を覚ました頃には
他の冒険者達はもう身支度を整えていた。

今日から西の森 ノラ一掃 討伐イベントの開始だ。
早いもの勝ちなので皆我先にと森の中へ入って行く。

俺はというと、若干の筋肉痛が残っており
無理せずゆっくり朝食の後に出発する事にした。
それともう一つやりたい事もあるし。

とりあえずお湯を沸かしてシビ珈琲を入れる。
あのシビレ草のタネを煎ったもので
葉のような滋養強壮効果はないが目は覚める。
そして飲みやすい。

「ウェザーって苦いのは平気なの?」
「こども扱いしないっ!」

そう言うと彼女は珈琲をグビグビと飲み干した。
性格が子供っぽく見えるけど
甘いものが嫌いなだけで苦味は大丈夫らしい。
俺は角砂糖を二つ溶かして飲んだ。

朝食も食べ終えて準備を整える。

テントは湯を沸かしている間に
手早く彼女が片付けてくれていた。
あとは身支度が終わったら完璧。

俺は“ポッケ”の中から装備品を取り出す。
“騎士の鎧”も鍛錬の成果で着れるようになった。
少し重たいけど。

ウェザーもこの間の絶妙なコーデに着替えたから
これで準備は万端だ。

「本当にトンガリ靴じゃなくていいの?」
「ブーツがいいの!」

そこはやはり譲らなかった。
女の子は山であってもお洒落が大事なのだ。

深い森を掻き分けながら進む。
だいぶ出遅れたが結構すぐに魔物と出くわした。
俺はフィオの忠告通りウェザーにトドメを撃たせる。

「えいっ!」バゴーンッ!!!
軽い一撃で倒せるのに容赦ない破壊力だ。
かわいそうだが、まあいいか。

すぐに地面から離さないと消えてしまうので
倒したら急いで冷蔵保存する。
幸いにも俺は“ポッケ”を持っているので
丸々一匹持ち運ぶ事が出来た。

「あっちにも美味しそうなのがいたよ!」
「あのおにくは美味しいよ!」

次々と食べられる奴を探し当てる...ちょっと怖いこの子。
まあ晩ご飯には違いないけれど。
この後、肉食の女神は黙々と狩り続けるのであった。

これまでの成果は七匹。
アイテムは“ローチユー”と魔石が数個。
ウェザーは経験値が上がって何か覚えたようだけど
まだ見せられないからと教えてくれなかった。

日も暮れたので討伐一日目は終了。
俺は延々と、ただひたすらに肉だけを焼き続けている。
美味しそうに頬張る彼女を横目に見ては
最適な火力を保つべく一人戦っているのだ。

「やっぱり魔法で焼くと美味しいね~」
そう言ってくれると嬉しい。
苦手な魔法を使う価値があるってものだ。

他でも冒険者達がひと段落ついたのであろうか。
辺りはいい匂いが立ち込めている。
今日出遅れてしまった分を取り戻すために
俺達はその人達より少し早めに眠る事にした。

......横になって眠りにつく前。
ふと今朝やろうと思っていた事を思い出した。
それは前にガチャのジンクスだと噂に聞いた

“イベント会場で回すと出る”
(急いでいて結局忘れちゃったな...)

ー明日の朝はガチャを回すー
枕元にそうメモ書きを残し、テントの灯りを消した。
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