俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第2章

フレンドは大切にしよう。

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朝から酷い雨。
殆どの冒険者がテントから動かないでいるのか
魔法を使う音や魔物の声など一切聞こえてこない。

俺はウェザーの “フォーキャスト” で予め知っていたから
なるべく地面の乾いた所にテントを張っていた。

「雨やまないね~」
暇そうに彼女は呟いているが、ただ今大活躍中だ。

昨日教えてくれなかった新しいスキル。
それが “台風の目アイウォール” だ。

スキルを究極まで上げれば気象自体を変えられるらしいが
それには相当な時間と経験値が必要であろう。
しかし狭い範囲だけであればこの “台風の目アイウォール” で
大雨を回避する事が可能だ。

小雨であればこの能力を使って進めるのだが
俺が想定していたより雨風が強く
この先のぬかるんでいる地面は乾かないと大変危険な為
今日は結局ここでビパークする事にした。

つかの間の休日を有意義に過ごそうと
燦々と降り注ぐ太陽を利用して洗濯をしたり
やり忘れていたガチャのジンクス
 “イベント会場で回すと出る” を試したりした。

結果は昨日焼いて食べた魔物と同じ種類の奴を当てるという
何とも気まずいハズレであったが、それも旅の思い出だ。

ザッ...ザッ...ザッ...
午後二時頃だろうか。
この大雨の音に混じって“何かが歩いて来る足音”がすると
ウェザーが日光浴をしながら寝ていた俺を起こした。

急いで装備を身につけ、右の拳に剣を握る。
モンスターか野盗か。
視界の悪い中、背の高い草木を掻き分けて
確実に近づいて来るその“何か”に警戒する...

「おっ!凄え...そこだけ晴れてるし」

バンッ!
ずぶ濡れになった男が現れて駆け寄るが
厚い魔法壁により弾き飛ばされた。

「すみません。一応これは結界魔法らしいので」
「いや、俺も急に入ろうとして悪かったよマジで」

同じ討伐に参加している冒険者だった。
テントも持たずに木の上で野宿していたが
予定外の雨で木から落ちてしまったり
その他色々あったりと大変だったらしい。

結界の中に入れるため、俺達はフレンド登録をした。
これは正式なパーティーとは違って制約がある。
アイテムや武器等の貸借りは不可。
一緒に戦ったり魔法をお互いに使用したりは可能だ。

「ラファエルだ。よろしくなっ」

俺より年上な感じの彼は白魔法の心得があり
一宿一飯のお礼にと貴重な回復魔法をかけてくれた。

泥だらけの服は洗ったが、時間が遅くて生乾き。
それもウェザーが “コンディショニング” を使って
テント内で一時間ほど干して乾かした。

「すっげえー!二つ同時に魔法かけてるのこれ!?」

そう言われて彼女は少し得意げな顔をした。
レベルが上がってから魔法の範囲設定も調節が効くし
威力も桁違いに変わった気がする。

夕飯の片付けを終えた後
同じ冒険者だから情報交換したり
ガチャのあるある話で盛り上がったりして
楽しい時間はあっという間に過ぎた。

「なんか気があうな俺達さぁ」
「俺達ってウェザーも入れて三人のことだぞ?」
「もちろん。だってもうフレンドだよっ!」

それを聞いて彼女とハイタッチをするラファエル。
(あれ?今日は人見知りしてなさそうだな...)

知らない人とでも仲良くなれる。
これも旅の醍醐味なのだろう。

降り続く雨の中。
ここから見上げる夜空にだけ星が輝いていた。
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