俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

文字の大きさ
25 / 92
第3章

森の中の草原。

しおりを挟む
翌日早朝にはもう雨が上がっていた。

ラファエルは元々今日で引き上げる予定だったから
フレンドになったばかりで残念だが、ここでお別れだ。

「登録そのままにしとくから、今度一緒に行こうな」
「もちろん!その時はお願いします」

フレンド登録は一定の人数までは登録自由。
外す事も出来るが、フレンド同士だと連絡が取れたり
ギルドに行って正式なメンバー募集をかけた時などは
お知らせが届くようになっていたりするのだ。

「じゃ、俺行くわ」

ラファエルはヒョイっと木に登ると
跳躍力が強化された靴を履いているらしく
颯爽と枝と枝を縫うように跳び移り去って行った。

「行っちゃったね」
「さあ、俺達もそろそろ行こうか」

野営にも慣れて来た気がする。
手際よく準備をして次の目的地へと向かう。

「わぁ~すごく広~い!」

少し歩くと森の中に突然穴が空いたかのように
そこだけ円形に広がる草原が現れた。
地図上にあるポッカリ草原で間違いなさそうだ。

魔獣や魔物の姿は見当たらないが
ここには様々な動物達が集まっている。
人が管理しているのか、井戸がぽつんと建っていて
その周りの湿った土を子連れのモリジカが食べていた。
さながら憩いの広場といったところか。

(......目を離した隙に乗ってるし。)

さすが自然と共生している“精霊”なだけあり
怒らすと恐い雄のモリジカを乗りこなしている。
なんて自由。フリーダムなんだ君は。

「レオも乗せてあげるよ~?」

いや、俺は結構です。
それよりせっかく井戸があるのだから水を補給する。
この辺りはミネラル質が多いからか
お茶を入れようとお湯を沸かすと白く結晶が浮いた。

「もう行くよー。早く降りて来て」
「待って~!あと一周だけ~キャハッ、キャァ」

動物と戯れる精霊。
差し込む光で幻想的なエフェクトが効いている。
女神っぽくて...良い。カメラ持って来ればよかった...
なんて、一瞬思ってしまった。


いいかげん草原を出て魔物を探す。
林の陰からごそごそと音がして
急に飛び出してきたのは“ピノラッド”だ。

選択肢には“にげる”しかないという
ピッピィと同じく戦うの好きじゃないんで系の
本来なら討伐しなくても影響がない奴。

だがしかし。今回の討伐は“一掃”が目的であるため
申し訳ないが取り逃がす訳にはいかない。
Uターンして必死で後を追ったのだが
逃げる能力が高いのでポッカリ草原の中に入り込む。

背の高い草に隠れて見つからない。
後方からウェザーがモリジカに飛び乗り走り出した!

確かに上からなら丸見えだ。
モリジカの細かいステップでピノラットを追い詰めると
片手に持った剣の腹でスコーンと打ち上げた。
(...なんかこんな競技あった気がする。)

残念ながら草原の外まで飛ばしてしまったため
アイテム回収は難しいから諦める。
後でちゃんと報酬は貰えるから良しとしよう。


出発から早四日。
準備の日も入れたらもう五日も経過している。
帰るのにも結構時間がかかるし
ケニーがくれた一週間の休みをを超えてはマズイので
余裕をもって今回の討伐から離脱する事にした。

木漏れ日がキラキラと輝く森の中。
俺達は来た道の半分位を目指して引き返す。
今日も色々な発見があった。
彼女にまさか“騎乗スキル”があるとはね。
しかも馬じゃないし。

パカ...パッカ...パカ...パッカ...パカ...パッカ...
実はまだ乗っている。

飼いたいとか言い出しそうで心配だったが
ウェザーは目的地に到着すると
ねぎらうように優しく鼻を撫でてから放った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...