俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第3章

いるはずのないもの②

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あきらめないでっ!」

髪を高く束ねた狩人のような女が立っていた。
むちのようなつるを竜の片脚に打ち込む。
それはグングンと伸びて絡みつき
奴の動きを留める事に成功した。

咄嗟とっさに俺はウェザーの“ポッケ”からピッピィ達を出し
彼女を担いで草原から出るように指示をする。

「早く行って!頼む!」
ピッピィ...ピッピィ...ピッピィ...ピッピィ...
瀕死の状態だったが取り敢えず戦線からは外せた。

絡まる蔓を引き千切って再び向かって来る。
女が小さな何かを奴に目掛けて投げつけると
空中で植物の芽が伸びてパチパチンッと弾けた。

ワウルゥルゥグゥオラァ.....!!!

顔に当てられ狼狽うろたえる竜。
畳み掛けるように彼女はショットガンを構える。
「ちょっと勿体無いけど...試すしかないか」

ボンッ...シュゥゥン.....バンッ!!
.....ギュシギュシギュシ

拳大の弾が竜の体に当たると
取り囲むように全身を無数の枝がおおって
完全に動きが止まった。

「早くトドメをさしてっ!」
女が俺を見て叫んだ。

走り出す。
枝でできたその塊に飛び乗り
隙間からのぞく本体目掛けて剣を突き刺した。

「ワァァァァァ!!!!!」
ズダン....

必死であまり覚えていない。
リザードファフニールの悲鳴が聞こえた後
キラキラと輝く光に包まれていた。


遅れて手足が小刻みに震える。
怖かった。怖かったのだ。
死ぬかもしれない、失うかもしれない
そういった恐怖感から解放された安堵なのだと思う。

「ほら、立って」

手を貸してもらい、剣を杖にして立ち上がる。
(ウェザー....そうだウェザーは....)
辺りを見回すと、草原の隅にピッピィ達がいた。
彼女の周りを囲んで心配そうにしている。

すぐさま体を引きずりながら側へ行き
ピッピィ達をよけて隣に座った。

息は細く、体は少し透き通ってきている。
俺はまだ残っていた“石”を一つ砕いた。
これで彼女の体力は全快するはずなのだが...

(.....どうして....どうしてだ!?)

回復したはずなのに状態は変わらない。
苦しそうに息をするウェザー。
俺は焦って、もう一度石を砕く。
もう一度。
もう一度。

「もうやめなさい」
「やめなさいって!それじゃダメだから」

女は落ち着かせようと両手で肩を掴み
俺の目を見てそう言った。

「これはハイチユーとかを使っても駄目なの」
「今から教授の所に連れて行きます」
ウェザーを背負うと、女は山奥へと歩き出す。

「大丈夫。彼は薬草学の権威ですから」
「あなたは歩けますか?」

黙って言うことを聞くしかなかった。
激しく取り乱していて、何が何だか理解出来ない。

“どうしてこんな事になってしまったのだろう”
“もっと他に逃れる方法があったのではないか”

俺は先を行く女の後を追いかけながら
答えのない答えを探していた。
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