神に同情された転生者物語

チャチャ

文字の大きさ
13 / 38

第11話:ギンと依頼

しおりを挟む
俺とギンは、昼過ぎにギルドに顔を出して依頼を探していた。
……が、なんだか周囲の視線が刺さるように痛い。

「なんか、目立ってない……?」

その原因は、俺の頭の上で大あくびしてる、もふもふの元凶――ギンだ。

〈ふぁぁ~。なぁ、まだ決まんないのかー?飽きたー〉
「今来たばっかだよ!」

掲示板を眺めていると、ガタイのいい冒険者がこっちにやってきた。

「おい、新人。……そいつ、従魔か?」
「え?あ、はい。ギンっていいます。可愛いでしょ?」

「うおお……さ、触ってもいいのか!?」

「ど、どうぞ!」

男はギンを両手でむぎゅぅと撫で、頬をとろけさせた。

「……ッッ、なにこの触り心地……天国……」

その瞬間からだった。ギルド中の冒険者が集まりはじめ、いつの間にかギンの“もふもふ会”が始まっていた。

ギルド職員が止めに来るかと思いきや、しれっと最後尾に並んでいる。

「……仕事しろよ、皆……」

ようやく静かになった頃、掲示板に張られた新しい依頼に目が止まった。

【ポイズンスパイダー討伐】
・Dランク
・猛毒の液を放つ危険な魔獣

「これにしよう。ギン、毒に気をつけてな?」

〈うん!やっつけてやるー!〉

 

* * *

 

ポイズンスパイダーが出没したという森に入り、すぐに“それ”は現れた。

「……でかっ……!」

体長は俺の身長を優に超える。黒紫の甲殻がギラつき、足音は地面を打つように重い。

俺は剣を構え、距離を詰める。

「うわっ!」

ブシャァッ――と、紫色の液体が一直線に飛んできた。咄嗟に避けると、毒液は地面をジューッと焼いて穴を空けた。

「……あぶねっ。ギンに気をつけろって言ったの、俺だったのにな……!」

横合いからギンが飛びかかる。風のような速さで、敵の背に乗ると一閃。
スパイダーは短い悲鳴を上げて崩れ落ちた。

「ギン、ナイス!」

〈へへっ、役に立ったかー?〉
「大活躍だったよ!マジで助かった!」

 

* * *

 

ギルドに戻って報告を終えると、報酬をもらってそのまま飯屋に直行した。

「今日は本当に助けられたな。ギン、いっぱい食べていいからな!」

〈わーい!お肉!お肉いっぱい食べるー!野菜はいらなーい!〉

「ダメ。野菜もちゃんと食べなさい。好き嫌いしてると大きくなれないぞ」

〈うぅ……母ちゃんみたいなこと言うなよー!ハルトだって野菜残してたじゃん!〉

「俺はもうこれ以上大きくならないからいいの!」

〈ズルいぞそれ!〉

「も~、仕方ないなぁ。今日だけ特別だぞ!」

〈やったー!〉

結局、ギンは肉だけぺろりと平らげて満足そうにしていた。

宿に戻る道すがら、俺はギンを頭に乗せながらぽつりと呟いた。

「俺、アマアマだなぁ……」

〈それがハルトのいいとこー〉

もふもふの感触に癒されながら、少し頬がゆるんだ。

 


---
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...