「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

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第8章:王都の影と目覚めし者たち(前編)

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王都アルセリア――白壁に囲まれたその都は、晴れやかな空に映えていた。だがその輝きとは裏腹に、ハルトたちの胸には重い緊張が渦巻いていた。

「……見張り、多いな」

サラが呟く。街道の入口には、以前にはなかったほどの衛兵が立ち並び、通行人一人ひとりを厳しく検分している。

「例の“影従者”と関係してるかも。王都の中でも何かが起きてる」

リアナが帽子を深くかぶりながら歩を進めた。

「お嬢さん、顔を上げてくれ」

門兵が目を細め、リアナに手を伸ばした瞬間――

「すみません。妹は病弱でして、人混みが苦手なんです。これ、通行証です」

ハルトが懐から一枚の証を差し出す。ミルが器用に耳で衛兵の注意を逸らし、サラがこっそり護衛を無力化する準備を整えていた。

「……よし、通っていい。ただし、変な動きはするなよ」

そのまま、彼らは難なく門を通過した。

(やれやれ、さっそく波乱の匂いしかしねぇ)

ハルトは内心で溜め息をついた。

王都に入ると、喧騒と活気が彼らを包み込んだ。露店が並び、人々が忙しなく行き交う中、その裏にひそむ緊張感は明らかだった。

「なんだこの空気……笑ってるのに、どこか恐がってる」

レンが歩きながら周囲を見渡す。

「領主が変わったの。正確には“影の摂政”と呼ばれる人が、実権を握ってるって話」

リアナがぽつりと呟いた。

「影の……?」

「私の叔父よ。王が病に倒れ、次期王が不在の今、暫定政務官として王都を掌握してる。でも、急に現れたの。しかも、どこか……人じゃないみたいな感覚がするのよ」

「まさか……影従者と関係が?」

「それを、確かめたい」

リアナの決意に、ハルトたちは頷いた。

その夜、彼らはリアナの古い知人――かつての王城の文官だった老書記・エルドの元を訪ねた。

「お嬢様……! まさかご無事とは……!」

「エルド、あなたしか頼れる人はいないの」

エルドの話では、最近王城の地下で“何か”が目覚めたという噂があるという。それに伴い、不可解な魔力の流入と、消えた研究者たちの存在も……。

「その中心にいるのが、“影の摂政”。名をカリウスと申します。彼はまるで人形のように感情を見せず、触れた者の記憶すら歪めるとか……」

「記憶を、歪める……?」

「魔術師たちの間では、“虚無の眼”と呼ばれる禁呪が噂されています。もし本当なら、王国そのものが操られている可能性も……!」

リアナが拳を握りしめた。

「父が病に倒れたのも……本当に自然だったのか、確かめなきゃいけない」

その言葉に、ハルトはそっと手を添えた。

「なら、行こう。俺たちで、真実を見つけようぜ」

「もちろんだ。影に抗う風となろう」

レンが微笑み、サラも短剣を撫でた。

「情報、盗むの得意だしね」

新たな舞台――王都での戦いが、いま始まる。




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