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第25話「手をつなぐ距離、心がほどける午後」
しおりを挟む午後の陽射しが、菜園の緑をやわらかく包んでいる。
「……うん、いい感じ」
ひまりは鍬を置き、土についた手を軽く払った。にんじんの苗が、しっかりと根付いているのを確認して、満足そうに微笑む。
「やっぱり、土いじりって落ち着くなぁ」
隣では、ユウトくんが手際よく支柱を立てていた。数日前から一緒に畑仕事をするようになって、少しずつ息も合ってきた気がする。
「こっちはもうすぐ終わるから、あとは水やり頼んでもいい?」
「うん、任せて!」
じょうろを手にしたひまりは、苗の根元にそっと水を注ぐ。ユウトくんが微笑む。その穏やかな表情に、心がふわっと軽くなる気がした。
まるまるちゃんはといえば、畑の隅でお昼寝中。ふわふわの体を丸め、のんびりと寝息を立てている。その姿に思わずひまりは口元を緩めた。
「のんびりできるって、やっぱり幸せだね」
「うん。……オレ、こんな風に毎日過ごせたらいいなって思うよ」
不意にユウトくんがそんなことを言った。ひまりは少し驚いて、顔を上げた。
「え?」
「えっと……その、急にごめん。でもさ、ひまりとこうして並んで、畑仕事したり、ごはん食べたりするの、すごく居心地いいんだ」
まっすぐな眼差し。真面目で、ちょっと照れくさそうなその顔に、ひまりの胸がどきんと鳴る。
「……わたしも、そう思ってるよ」
気づけば自然と、ひまりの頬は赤らんでいた。
これが、恋かもしれない。
ただの好感や親しみじゃない、もっとあたたかくて、奥深い気持ち。
けれど、今はまだ——「ユウトくん」と呼びたい。この気持ちがちゃんと確かになったとき、きっと自然に名前を呼び捨てにできると思うから。
*
夕方、家に戻る途中。
二人で並んで歩いていると、ユウトくんがふと立ち止まった。
「ひまり」
「ん?」
「その……手、つないでいい?」
一瞬、鼓動が止まりそうになった。でも、彼の手がそっと差し出されたのを見て、ひまりはそっと自分の手を重ねた。
「うん」
手と手が触れ合う。その温もりが、心の奥まで染みこんでいくようだった。
「ありがとう。……ちゃんと、大事にするよ」
「ふふ。なんか、照れるね」
でも、心は不思議と穏やかで。あたたかな風が二人の間を通り過ぎていく。
丘の上から見えた夕暮れは、オレンジとピンクが混ざり合っていて、とてもきれいだった。
まるで、明日が優しく包んでくれるような、そんな空の色だった。
---
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