転生実況はじまりました ~異世界でも仲間と一緒に~

緋月よる

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第21章《嵐を越えて》

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KILO
「本当にここで合ってんのか?」

KILOは槍を肩に担ぎ、
険しい表情で足元を見つめた。

イソクマ
「間違いないっすよ!
カイラッドさんが教えてくれたんすから!」

目の前には嵐の尾根が広がる。
狭い道と急な崖、強風が吹き荒れ、
遠くには雷鳴が轟いていた。

KILO
「冗談だろ……。これ、マジで進むの?」

イソクマ
「行くしかないっすよ!
ここを越えたら、きっと
よるさんたちに会えるっすから!」

KILO
「はぁ……命懸けだな。
どうして俺たちがこんな目に……」

イソクマ
「KILOさん、文句言うより
歩いた方が早いっすよ!」

KILO
「イソさん……
その楽観的な性格、羨ましいわ!」

二人は崖沿いの狭い道を歩き始めた。
時折、足元の小石が風に飛ばされ、
下の谷底へ落ちていく。

KILO
「……これ、落ちたら即死だよな。」

イソクマ
「だから慎重に行きましょう!
でも、見てくださいよ、すごい景色っす!」

KILOはため息をつきながら、
崖の向こうを一瞥した。広がる大地に、
夕日の光がかすかに映える。

KILO
「確かに……綺麗だな。
でも俺はもう、帰りたいぞ。」

イソクマ
「だからこそ急ぎましょう!
よるさん達が、待ってるっすよ!」


KILO
「……風、どんどん強くなってきたな」

イソクマ
「いやー、これぞ冒険って感じっすね!
ちょっとテンション上がるっす!」

KILO
「お前、バカだろ……。
崖下に落ちたら洒落にならねぇぞ」

イソクマは弓を握り直し、笑顔を崩さない。
その軽口がかえって緊張をほぐしていた。

イソクマ
「大丈夫っすよ、KILOさん。
俺たち、モンスターとも戦えるぐらい
強くなったじゃないっすか!」

KILO
「そりゃそうだけど……。
問題はモンスターじゃなくて、この道だよ!」

道幅は狭く、両側には深い崖が続く。
突風が吹き荒れるたびに、
二人はその場で立ち止まらざるを得なかった。

KILO
「イソさん、少し休憩しよう。
これ以上進むのは無理だ」

イソクマ
「ええー、まだ体力余ってるっすよ!
でも、KILOさんがそう言うなら……」

二人は岩陰に身を寄せた。
風を防ぎつつ、KILOが険しい顔でつぶやく。

KILO
「この尾根、俺らだけじゃないかもな」

イソクマ
「え、どういう意味っすか?」

KILO
「いや、気のせいかもだけど……。
なんか、どっかから足音聞こえた気がする」

イソクマは弓を握り直し、
表情を真剣に変えた。

イソクマ
「いやー、それヤバいっすね。
モンスターっすか?」

KILO
「……そうかも。でも、
こんな狭い道で出られたら……」

その時、遠くから唸り声が響いた。
二人は息を飲み、音の方向に構える。

KILO
「……今の声、
間違いなく何かいる!」

イソクマ
「確定っすね、ヤバいやつ。
でも、どこにいるんすかね?」

二人が息を潜めると、
遠くの岩場が突然崩れ落ちた。
そこから現れたのは、巨大な影だった。

KILO
「……豚?」

イソクマ
「いやいやいや!デカすぎるっす!
これ、オークじゃないっすか?」

KILO
「まじかよ……。
しかも、かなりでかいぞ」

イソクマ
「鑑定っすか?KILOさん!」

KILOはすぐに槍を構え、
鑑定スキルを発動させた。
目の前に情報が映し出される。

――――――――――――――――――
【鑑定結果】
名称: バーサーカーオーク
分類: 豚頭種
危険度: 不明
特徴: 巨大な体躯を持つ豚型の獣人モンスター。
凶暴性が高く、力任せの攻撃が特徴。
備考: 一定以上のダメージを受けると狂暴化し、
攻撃力が増大する。
弱点: 素早さを生かした攻撃、毒属性、光属性魔法。
討伐報酬: 不明
――――――――――――――――――

KILO
「バーサーカーオークだって……。
力任せの攻撃がヤバそうだ」

イソクマ
「おお、見た目通りっすね。
弱点は素早さか毒か……光属性魔法!
でも、俺たち魔法使えないっすよ?」

バーサーカーオークがこちらを睨む。
その眼には明らかな敵意が宿り、
両手で持ち上げた大岩を振りかざした。

KILO
「おいおい、岩持ち上げてるぞ……!」

イソクマ
「ええー!どうすんっすか、これ!?」

KILO
「とりあえず避けよう!!」

二人は左右に散開し、
バーサーカーオークの岩が地面に叩きつけられる。
地響きと共に道が揺れ、崖際の石が崩れ落ちた。

イソクマ
「……っ!こんなとこで暴れられたら、
落ちるじゃないっすか!」

KILO
「だからヤバいんだって!」

バーサーカーオークは再び岩を持ち上げ、
二人に向かって突進を開始する。

KILO
「くそっ、こんな狭い場所じゃ……。
とにかく、足を狙って動きを止めるしかねぇ!」

イソクマ
「了解っす!それじゃ俺が矢で足狙うんで、
KILOさん、隙を作ってくださいっす!」

イソクマ
「KILOさん、矢撃ちますよ!足、狙うっす!」

KILO
「頼む、俺も行く!」

イソクマが放った矢が、
バーサーカーオークの太腿に突き刺さる。
巨体がわずかによろめいた。

イソクマ
「よし、今がチャンスっす!」

KILOは槍を構え、オークの足元へ突進する。
だが、突き出した槍を受けたバーサーカーオークは、
雄叫びを上げながら腕を振り回した。

KILO
「痛っ……!」

巨大な腕の一撃を受け、
KILOは地面に叩きつけられる。

イソクマ
「KILOさん!大丈夫っすか!?」

KILOは槍を支えに立ち上がるが、
足元がふらつき、息が荒い。

KILO
「全然、大丈夫じゃない!ヤバい!
あいつ、ますます怒ってんだけどっ!」

バーサーカーオークは突き刺さった矢を引き抜き、
さらに荒れ狂った動きを見せた。
その巨体が地面を踏み鳴らすたび、
崖沿いの岩が崩れ落ちる。

イソクマ
「なんか、やばい雰囲気っすね……。
これ以上暴れられたら、崖ごと落ちそうっす!」

KILO
「もう、つんだわ、
あいつの攻撃、止められる気がしない……」

バーサーカーオークは拳を振り上げ、
イソクマに向かって突進を始めた。

イソクマ
「うわっ、来るっす!」

間一髪で岩陰に逃げ込むイソクマ。
その直後、拳が地面を砕き、
割れた岩が宙を舞った。

KILO
「イソさん、無事!?」

イソクマ
「なんとかっす!でも、KILOさん、
こいつ相手にどうすんっすかね……」

KILOは槍を握りしめ、眉を寄せた。
荒れ狂うバーサーカーオークの姿に、
手の震えが止まらない。

KILO
「……正直、わからん。
けど、ここでやられるわけには……」

その時、遠くから剣が鞘を離れる音と、
鋭い風切り音が響いた。

イソクマ
「……え?なんっすか、今の音」

KILO
「誰か……来たのか?」

その時、夕日に照らされた崖道の向こうから、
二人の人影が現れた。

緋月よる
「お前ら、こんな所で何しての?」

KILO
「よるさん!?
それに……夜真さんまで!」

色瀬夜真
「やばいねー。あの豚、
めっちゃ暴れてるじゃん!」

緋月よるは疾風刀を構え、
バーサーカーオークの方向を睨む。

緋月よる
「……豚っていうか、オークやな。
めんどくさそうな相手やん」

イソクマ
「よるさん!手伝ってくださいよ!
こいつ、強すぎて……」

色瀬夜真
「もちろんっ!でもさー、すっごく大きいね。
よるちゃ、どうする?」

緋月よる
「俺が正面から突っ込む。
お前は……適当に援護頼むわ」

色瀬夜真
「適当って!」

緋月よるはため息をつきながら、
疾風刀を軽く振った。

緋月よる
「ええやん、この豚を黙らせたら、
ゆっくり文句聞いたるから」

その言葉と共に、緋月よるは
バーサーカーオークに向かって駆け出した。

KILO
「よるさん、危ねぇ!」

だが、緋月よるは迷うことなく、
疾風刀を一閃させた。鋭い風が巻き起こり、
オークの胴体に深い傷を刻む。

バーサーカーオークは怒りの咆哮を上げ、
振り返りながら拳を振り下ろした。

緋月よる
「おっそいねん、豚!」

よるは一瞬で間合いを詰め、
拳を避けながらさらに斬り込んだ。

色瀬夜真
「よるちゃ、凄いやん!じゃ、私も行くよ!」

夜真は拳を構え、バーサーカーオークの背後へ回る。
鋼拳がうなりを上げ、オークの膝を正確に撃ち抜いた。

バーサーカーオークは膝をつき、
荒い息を吐きながらも立ち上がろうとする。

イソクマ
「すごいっす!よるさんも夜真さんも!」

KILO
「……あの二人、強くなりすぎじゃね」

二人の加勢によって状況は好転し始めたが、
バーサーカーオークの瞳には、
さらに凶暴な光が宿っていた――。

緋月よる
「キロチャ、イソクマも!
見てないで手伝えって!」

KILO
「わ、わかりました!」

イソクマ
「しょうがないなぁ……、
よるさん!俺、足狙うっすよ!」

KILOとイソクマが同時に動き出す。
イソクマは崖際に回り込み、
弓を構えて矢を放った。

イソクマ
「いっけーっ!」

鋭い矢がオークの太腿を貫き、
巨体がわずかによろめく。

色瀬夜真
「ナイス!イソさん!その調子!」

KILOは槍を構え、突進した。
低い姿勢で間合いを詰めると、
オークの脇腹に槍を突き立てる。

KILO
「これでもくらえ!」

バーサーカーオークは痛みのあまり、
耳をつんざくような叫び声を上げた。
だが、その瞳はさらに赤く燃え上がり、
巨体を揺らしながら突進を始める。

緋月よる
「やっべ、暴走しやがった!」

色瀬夜真
「やばいね、これ!
でも、私らが抑えるしかないっしょ!」

緋月よる
「せやな!夜真、行くぞ!」

二人は連携を取りながら、
オークの動きを止めるために再び前線へ。
夜真が鋼拳で膝を狙い、よるが胴体を斬る。

緋月よる
「キロチャ、イソクマ!もう一押し頼む!」

イソクマ
「了解っす!これで決めるっす!」

KILO
「俺も行きます!」

イソクマが放った矢がオークの肩を貫き、
その隙を突いてKILOが槍を振り下ろす。

KILO
「おりゃああっ!」

槍が深々とオークの首元に刺さり、
その巨体が揺れながら崩れ落ちた。

バーサーカーオークは最後の一声を上げ、
地面に沈黙する。

緋月よる
「ふぅ……なんとか倒せたな」

KILO
「はぁ……やっと終わった」

イソクマ
「すごいっすね、よるさんたち!
俺らも、少しは役に立てたっすか?」

緋月よる
「うん、助かったわ」

色瀬夜真
「いやー、マジで助かった!
みんな無事でよかったよ!」

4人は疲れた体を支えながら、
崖道に腰を下ろした。風はまだ吹き荒れているが、
戦いの緊張感は薄れつつあった。

イソクマ
「いやー、ホント助かったっす!
よるさんと夜真さんが来てなかったら、
マジで終わってたっすよ」

KILO
「……本当にありがとうございました。
俺たちだけじゃ、あのオークには……」

緋月よる
「礼はええねんけど、
次からはもっと気をつけろよ」

緋月よるは軽く笑いながら
疾風刀を納め、二人に視線を向けた。

緋月よる
「それはええとして、次や。
お前ら、この先の計画あんの?」

KILOとイソクマは顔を見合わせ、
少し困った表情を浮かべた。

KILO
「俺達は、よるさんと夜真さんを探して、
ここまでで来たんよ……。だから
正直、この尾根を越えた後のことは……」

緋月よる
「マジか!同じ理由やん!
んな、こっからは、一緒に行動するか」

イソクマ
「えっ、ホントっすか!?」

緋月よる
「うん、カイラッド?って人から
二人の話を聞いてやってきたんよ」

色瀬夜真
「そう!そう!ハンターギルド行った時に
話しかけて来て、色々教えてもらったんだ!」

KILO
「そうだったんすね!てか、
俺らまだ、ハンターギルド行った事ない」

緋月よる
「そうなん?。じゃあ
次の目的地は……嵐の尾根の出口やな」

風が少しだけ弱まり、
4人は再び歩き出した。
険しい尾根の道の向こう、
わずかに広がる夕焼け空が見えた。

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