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真里編:第2章 別れ
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池のほとり、あの夢だ。
ただ、いつもと違う、梅が一輪も咲いていなかった。
あたりを見回して後ろ姿を見つけた、僕はあの子に駆け寄る、一体何があったんだ……!
近づいて気づいた、あの顔を僕は知ってる。
あの顔はあの日、僕が鏡で見た顔と同じだ。
"憎い……アイツらが憎い、全部! 全部壊してやる!"
どうして……いつの間にこんな事になってしまったんだ、感情が憎しみでいっぱいになっている。周囲に暗い闇が立ち込めてきた、こんな酷い心象風景は初めてだ、助けなきゃ!
あと少しで手が届くところまできた時、突然それは現れた。
短い漆黒の髪、光を宿さない瞳、尖った耳とその根元から生える角、男とも女とも分からない容姿、引きずるほど長くて黒い外套。
コイツ……さっき部屋に居た? そうだ! なんで僕の部屋に知らない悪魔が! もしかして眠らされた!?
漆黒の悪魔はあの子を包み込み、闇で覆い、そして一振りの刀を手渡した。
「それを受け取ってはダメだ!」
どんなに叫んでも、僕の声は届かないようだった。
「お願い! 気付いて!!」
途端に周囲が僕と漆黒の悪魔を除いて、早送りのように流れはじめた、今まで見たこともない情景や、一緒に過ごした夢が頭の中に流れ込んできた、なにこれ!?
"さぁ、選びなさい"
漆黒の悪魔は子供のような声で言い放ち、僕を指差して不敵に笑いながら消えた。
景色は一気に晴れて、周囲は真っ白になる。
目の前には血のように赤い紅梅が咲き乱れる中、刀を持ったあの子……いや、もう幼さは残らない、大人になった"彼"がいた。彼の着物にも鮮やかな紅梅が狂い咲いていた。
「これで全て終わりだ」
彼はまた涙を流しながら自らの首に刀をあてがった、諦めるのか自分の命を! 違う、まだ諦めきれていないから泣くのだ、彼はいつもそうだった。
「どうして君はいつも!」
走って走って走って、一向に縮まらない距離に焦った。足元を見るとそこは血の海だった……ゾッとした、周りの紅梅は、全て死体の山と化していた。
彼の着物の柄は梅などではなかった、あれは全て……返り血だったんだ。
なんだ……これ、なんなんだこの光景は。
いつのまにか、僕の腕の中には小さい子供が……出会ったばかりの頃くらいの、小さな彼が震えていた。小さな彼をぎゅと抱きしめながら、もう一人の彼に手を伸ばした、届かない——っ! 届かないよ!!
彼の白い首筋に刀が深く入る、やめろ! やめろダメだ!
「雪景っ!」
彼の名を叫んだ瞬間、目が覚めた。僕の部屋のベッドの上……目の前には天井と、心配そうに覗きこむ顔があった。
起き上がりながら両手で彼の頬を掴んだ、さっきまで必死で伸ばした手が届いた!
「ど、どうした? 真里?」
彼の首、目立つ太い首輪をズラすと確かにあった……どう見ても致命傷であろう左の首筋の傷跡が。
どうして今まで気付かなかったんだろう、こんなに近くに居たっていうのに!
「雪景……君なのか」
ただ、いつもと違う、梅が一輪も咲いていなかった。
あたりを見回して後ろ姿を見つけた、僕はあの子に駆け寄る、一体何があったんだ……!
近づいて気づいた、あの顔を僕は知ってる。
あの顔はあの日、僕が鏡で見た顔と同じだ。
"憎い……アイツらが憎い、全部! 全部壊してやる!"
どうして……いつの間にこんな事になってしまったんだ、感情が憎しみでいっぱいになっている。周囲に暗い闇が立ち込めてきた、こんな酷い心象風景は初めてだ、助けなきゃ!
あと少しで手が届くところまできた時、突然それは現れた。
短い漆黒の髪、光を宿さない瞳、尖った耳とその根元から生える角、男とも女とも分からない容姿、引きずるほど長くて黒い外套。
コイツ……さっき部屋に居た? そうだ! なんで僕の部屋に知らない悪魔が! もしかして眠らされた!?
漆黒の悪魔はあの子を包み込み、闇で覆い、そして一振りの刀を手渡した。
「それを受け取ってはダメだ!」
どんなに叫んでも、僕の声は届かないようだった。
「お願い! 気付いて!!」
途端に周囲が僕と漆黒の悪魔を除いて、早送りのように流れはじめた、今まで見たこともない情景や、一緒に過ごした夢が頭の中に流れ込んできた、なにこれ!?
"さぁ、選びなさい"
漆黒の悪魔は子供のような声で言い放ち、僕を指差して不敵に笑いながら消えた。
景色は一気に晴れて、周囲は真っ白になる。
目の前には血のように赤い紅梅が咲き乱れる中、刀を持ったあの子……いや、もう幼さは残らない、大人になった"彼"がいた。彼の着物にも鮮やかな紅梅が狂い咲いていた。
「これで全て終わりだ」
彼はまた涙を流しながら自らの首に刀をあてがった、諦めるのか自分の命を! 違う、まだ諦めきれていないから泣くのだ、彼はいつもそうだった。
「どうして君はいつも!」
走って走って走って、一向に縮まらない距離に焦った。足元を見るとそこは血の海だった……ゾッとした、周りの紅梅は、全て死体の山と化していた。
彼の着物の柄は梅などではなかった、あれは全て……返り血だったんだ。
なんだ……これ、なんなんだこの光景は。
いつのまにか、僕の腕の中には小さい子供が……出会ったばかりの頃くらいの、小さな彼が震えていた。小さな彼をぎゅと抱きしめながら、もう一人の彼に手を伸ばした、届かない——っ! 届かないよ!!
彼の白い首筋に刀が深く入る、やめろ! やめろダメだ!
「雪景っ!」
彼の名を叫んだ瞬間、目が覚めた。僕の部屋のベッドの上……目の前には天井と、心配そうに覗きこむ顔があった。
起き上がりながら両手で彼の頬を掴んだ、さっきまで必死で伸ばした手が届いた!
「ど、どうした? 真里?」
彼の首、目立つ太い首輪をズラすと確かにあった……どう見ても致命傷であろう左の首筋の傷跡が。
どうして今まで気付かなかったんだろう、こんなに近くに居たっていうのに!
「雪景……君なのか」
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