主人公なんかに、なってほしくはなかった

onyx

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私は、独り、帰ってきた

わたしのしんゆう

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結局みんな同じくらい村の事が大好きだと落ち着いた頃、子供達と別れて、八百屋さんへ向かう。道すがら声をかけられては応え、遅々とした歩みで進んでいく。八百屋さんに着く頃には、すっかり日は傾き、辺りはオレンジに染まっていた。

八百屋さんの前には私の親友が仁王立ちして待っていた。

「…遅い。」

「ごめん。」

「あんたの家からここまで来るのにどんだけ時間かかってんのよ。あんたっていつまでたってもノロマね。」

「…うん。」

「私に言うことは?」

「遅くなってごめ「違うでしょ。」」

ほら、とアシェルは腕を広げる。
その動作に、声に、私は今日何度目かも分からない雫を零しながら飛び込んだ。

「っただいま。」

「おかえり、マリー。」

「シェリー、ヴィーが、ヴィー、が。」

「だから言ったのよ。一緒に行ってもいいことなんかひとつもないって、あんたが辛い思いをするだけだって。」

「っ、シェリー…。」

「マリーゴールド。これが貴女の選んだ結果よ。受け止めなさい。貴女とヴィオレットが、いいえ私達が選んだ結果。泣こうが喚こうが変わらない。分かっているでしょう?」

「うん…っ。」

アシェルの言葉はいつも鋭くて、厳しい現実を私に突きつける。彼は本当の事しか言わないから、耳を塞いでしまいたくなる。でもそれは彼の優しさだ。

「でも、ここまでよく頑張ったわね。ノロマなあんたが、ヴィオの為に沢山、沢山努力した事、私は知ってるわ。」

ゆっくりと頭を撫でてくれる手は優しくて暖かくて、いつだって相手の為にある。

「あんたとヴィオのおかげで、私達は今日を生きていられる。ありがとう。」

私は、彼女が目の前で消えた時から初めて大声を上げて泣いた。
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