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旅に出よう、彼女の元へ、行けるように
しろをぬけだして
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まずは何処へ行こう?ヴィーの元へ行くための手がかりは、今のところライラのお母さんか、魔王を倒したあの場所ぐらいしか思い付かない。
…あの地へ行ってみようか。
掃除をしに来てくれる侍女さん達の話では、魔物はどんどん弱体化していると言っていた。どこまで行けるかは分からないけれど、まずはヴィーが闇に拐われたあの地へ行ってみよう。
途中泉があれば寄ることにして、カバンを肩に掛ける。そっと窓を開けてバルコニーへと歩いていく。大丈夫。私がいなくなったところで、世界は変わらない。ここでの私の役目は終わったのだから。
薄暗い中、手摺りから下を覗き込む。この位ならば多分行けるだろう。握った杖を靴へとかざす。
「…移り気な自由。纏いし羽は解放を、気まぐれな笑みは我に微笑む«ウィングブラスト»」
足が床から離れる。咄嗟に手摺りを掴んでぐらつくのをなんとか堪えて、空気を蹴る。
ふわりと浮かんだ身体を、掴んだ手摺りを中心に回転させて、空中へと投げ出す。カバンから物が落ちないかヒヤヒヤしたけれど、なんとかそのまま持っていられたようだ。
靴に掛けられた魔力を少しずつ減らしていく。それに合わせて私の身体は下降していった。逆さまのままは怖いけれど、全身に掛けられる程の魔力も技術も無いし、風属性の魔法も得意ではない。元々身体に付与する魔法は高度な技術がいるのに加えて私の魔力と相性が悪いのだ。失敗しなかっただけ、上出来だと思うしかない。
「っと。危ない…。」
窓から光が溢れている。空中を蹴りながら、暗がりへと落ちていく。共にあの森へ入った騎士はあと1人。警備を強化していてもいつの間にか騎士は死んでいるという。それでも、警備をしない訳にはいかない。今日はそちらを厳重にしているから、比較的城からの脱出は容易い。
今日、最後の1人が殺されるだろう。助けたいとも、可哀想とも思わない私は、もう人間ではなくなってしまったのかもしれない。
背中が地面に着いたところで、魔法を解く。カバンからローブを取り出して羽織ってから、足早に門を目指す。そこには門番がいた。流石にここは人を置くか、と納得しながら、歩く。そのまま抜けようとすると、案の定呼び止められてしまった。
「こんな夜更けにどちらへ?」
「宮廷医師様より薬草の調達に。」
「そうか、ご苦労。」
用意してきたセリフを言えば、案外あっさりと通してくれた。日常茶飯事なのだろう。少しの同情が窺えた。
「気をつけてな。」
「ありがとうございます。」
背中にかけられた声は優しくて、彼が罰を受ける事がないように、なんて、私が悪いくせに、そう祈った。
今日は、近くの森へ向かおう。野宿はあまり好きではないけれど、城が近いのに人に見られるのはリスキーだ。
こんな時、姿を消す魔法や、気配を薄くする魔法が使えたらいいのにと、ジルを羨ましく思う。闇属性は私には使えないから。闇と光は適正がある人が少ないのだ。
でもそういえば、ジャヴィさんは全ての属性を使えていたっけ。魔法を得意とするエルフなのだから、使えて当たり前だなんて言っていたけれど、それがエルフだからなのか、ジャヴィさんだからなのかは他のエルフを知らない私には分からなかった。
人気のない道を歩きながら魔法について考える。ヴィーの使った移転魔法も、私には使えない。あんな大人数を色々な街へ飛ばすなんて、ヴィーは本当に凄い。戦う術が魔法しかないくせに雷以外あまり使えない私には、到底出来そうにない。
もし私に移転魔法が使えたら、今すぐヴィーの元へ飛んでいくのに。
「«パーティ解除»」
最後のヴィーの魔法を唱えてみるけれど、やっぱり私には、使えなかった。
…あの地へ行ってみようか。
掃除をしに来てくれる侍女さん達の話では、魔物はどんどん弱体化していると言っていた。どこまで行けるかは分からないけれど、まずはヴィーが闇に拐われたあの地へ行ってみよう。
途中泉があれば寄ることにして、カバンを肩に掛ける。そっと窓を開けてバルコニーへと歩いていく。大丈夫。私がいなくなったところで、世界は変わらない。ここでの私の役目は終わったのだから。
薄暗い中、手摺りから下を覗き込む。この位ならば多分行けるだろう。握った杖を靴へとかざす。
「…移り気な自由。纏いし羽は解放を、気まぐれな笑みは我に微笑む«ウィングブラスト»」
足が床から離れる。咄嗟に手摺りを掴んでぐらつくのをなんとか堪えて、空気を蹴る。
ふわりと浮かんだ身体を、掴んだ手摺りを中心に回転させて、空中へと投げ出す。カバンから物が落ちないかヒヤヒヤしたけれど、なんとかそのまま持っていられたようだ。
靴に掛けられた魔力を少しずつ減らしていく。それに合わせて私の身体は下降していった。逆さまのままは怖いけれど、全身に掛けられる程の魔力も技術も無いし、風属性の魔法も得意ではない。元々身体に付与する魔法は高度な技術がいるのに加えて私の魔力と相性が悪いのだ。失敗しなかっただけ、上出来だと思うしかない。
「っと。危ない…。」
窓から光が溢れている。空中を蹴りながら、暗がりへと落ちていく。共にあの森へ入った騎士はあと1人。警備を強化していてもいつの間にか騎士は死んでいるという。それでも、警備をしない訳にはいかない。今日はそちらを厳重にしているから、比較的城からの脱出は容易い。
今日、最後の1人が殺されるだろう。助けたいとも、可哀想とも思わない私は、もう人間ではなくなってしまったのかもしれない。
背中が地面に着いたところで、魔法を解く。カバンからローブを取り出して羽織ってから、足早に門を目指す。そこには門番がいた。流石にここは人を置くか、と納得しながら、歩く。そのまま抜けようとすると、案の定呼び止められてしまった。
「こんな夜更けにどちらへ?」
「宮廷医師様より薬草の調達に。」
「そうか、ご苦労。」
用意してきたセリフを言えば、案外あっさりと通してくれた。日常茶飯事なのだろう。少しの同情が窺えた。
「気をつけてな。」
「ありがとうございます。」
背中にかけられた声は優しくて、彼が罰を受ける事がないように、なんて、私が悪いくせに、そう祈った。
今日は、近くの森へ向かおう。野宿はあまり好きではないけれど、城が近いのに人に見られるのはリスキーだ。
こんな時、姿を消す魔法や、気配を薄くする魔法が使えたらいいのにと、ジルを羨ましく思う。闇属性は私には使えないから。闇と光は適正がある人が少ないのだ。
でもそういえば、ジャヴィさんは全ての属性を使えていたっけ。魔法を得意とするエルフなのだから、使えて当たり前だなんて言っていたけれど、それがエルフだからなのか、ジャヴィさんだからなのかは他のエルフを知らない私には分からなかった。
人気のない道を歩きながら魔法について考える。ヴィーの使った移転魔法も、私には使えない。あんな大人数を色々な街へ飛ばすなんて、ヴィーは本当に凄い。戦う術が魔法しかないくせに雷以外あまり使えない私には、到底出来そうにない。
もし私に移転魔法が使えたら、今すぐヴィーの元へ飛んでいくのに。
「«パーティ解除»」
最後のヴィーの魔法を唱えてみるけれど、やっぱり私には、使えなかった。
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