綴り継ぐ寓話

土地争い

　シロクマとアナグマの間に争いが起きました。
　２匹の家は隣どうしでしたが、自分の土地を広げたくなったシロクマが、アナグマを力ずくで追い出し、土地を奪おうとしたのです。
　アナグマは、必死に抵抗しましたが、体が大きく力の強いシロクマにはとてもかないません。ついに家の中に逃げ込み、閉じこもりました。アナグマの家は、地面に掘った穴の奥にあり、入り口は狭いので、体の大きなシロクマは簡単には中に入ってこられません。
　シロクマはアナグマの土地に居座り、「早くこの土地から、出ていけ」と、毎日アナグマの家のドアを叩き続けます。ドアは今にも壊れそうです。
　アナグマは、ほとほと困ってしまいました。
　その様子を見ていたハゲタカが２匹の所にやって来て、「私が争いを解決してあげますよ」と言った。
　ハゲタカは、「アナグマさん、あなたの土地にある池には魚がたくさん泳いでいますね。それを私に毎日１匹ずつ食べさせてくれるなら、シロクマさんの乱暴を止めさせましょう。とドアの外から言いました。
　ハゲタカは、乱暴を止めさせると言っただけで、シロクマをアナグマの土地から出て行かせるとは言っていません。その事に気づいたアナグマでしたが、それでもハゲタカの言葉に心が傾きました。それほど追い詰められていたのです。
「その条件を飲みます、ですから…」とアナグマが言いかけた時、ハゲタカに話しかけるシロクマの声が、ドアの外から聞こえてきました。
「ハゲタカさん、私がこの土地を手に入れたら、池の魚を毎日１匹食べさせてあげます。だから、アナグマさんを追い出すじゃまをしないでください。」と。
「ほう、何もしないで魚が手に入る。それは悪くない話だ。」と、ハゲタカは返事をしました。
　それを聞いていたアナグマは、どう転んでも自分ひとりが損をして、シロクマと横から割り込んできたハゲタカに、土地や魚を奪われる理不尽に気が付き、暗い穴の中で、頭を抱えてしまいました。