【2章完結】超古代技術【ゴーレム】を扱える世界唯一の少年、不当に勇者パーティを追放されるが、戦闘も農業も全自動化し、世界最強に成りあがる!!

音速炒飯

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第18話 ゴーレム技師、勇者パーティーにしつこく「戻ってきてくれ」と言われる&勇者パーティーと決闘することになる

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 冒険者ギルドを立ち去ろうとした僕たちの前に、勇者ハロン一行が立っていた。

 しかし、不思議なことに3人はこちらを見ようとしない。

 もしかして、こっちに気付いていないのだろうか。

「キキ、カカ。2人ともよく聞いてくれ。今日は2人に大事な話がある」

 勇者ハロンが切り出す。やたら大きい声だ。まるで誰か近くにいる人にわざと聞かせようとしているかのように。

「我がパーティーはS級ダンジョンを快調に攻略している。そこでなんと、パーティーメンバーの待遇を向上させることにした。これまでの報酬取り分に加えて、1日1枚、銅貨を支給する」

「ほほほほ本当ですか勇者様! そういえば、前にこのパーティーでゴーレムのメンテナスとか雑用とかやって名前が”ナ”で始まる奴がいたな~」
「兄者、もしかしてそいつ、銅貨につられて戻って来るんじゃないか?」

 チラッチラッ

 3人がこっちの様子をうかがっている。
 
 ……もしかして僕を銅貨で釣ってパーティーに呼び戻そうとしているのか?

 どれだけ費用をケチりたいんだ。

 僕は目を合わせないようにして、3人の横を通り抜ける。

 すると、3人はダッシュで僕の前に回り込み。また僕の方を見ないようにして話し始める。

「それだけではないぞ。なんと頑張ったメンバーには、銀貨1枚のボーナスを出そう!」

「な、なんだってー! そんなことしたら、間違いなく名前が”ナ”で始まるあの男、パーティーに戻って来るじゃないですか」
「そしたら戦闘用ゴーレムの調子もよくなるし、道にも迷わないし素材の剥ぎ取りも上手くいきますよ勇者様! いや、俺はあんな奴に戻ってきてほしくなんかないんですがね?」

 チラッチラッ

 また3人はこっちの様子を見ている。

 そんなものにつられて戻るわけないだろう。

 勇者パーティーにいた頃は、およそ2週間のダンジョン探索で金貨10枚~20枚程度の取り分だった

 金貨1枚は一般市民の一か月の収入だ。

 銀貨はその10分の1。

 銅貨は銀貨の100分の1。酒場で昼飯を食べるとと大体銅貨3,4枚くらいだ。

 銅貨と銀貨1枚ずつと言うのは、勇者パーティーの稼ぎに比べたらはっきり言って誤差みたいなものだ。

 それで戻って来てくれとは、あまりにケチな話だ。

 目をそらしながら僕はまた3人の横を通り過ぎようとする。

「「おいナット、どこ行こうとしてんだ!」」
「うわっ」

 急に僕の目の前にキキとカカが飛び出してきた。

「これだけ待遇よくしてやるって言ってるのに、まだ戻って来ないのか?」
「兄者の言うとおりだ、傲慢な奴め! どれだけ欲深いんだ」

 ケチって銀貨や銅貨程度で人を呼び戻そうとしてるやつに言われたくないぞ。

「戻ってきてほしいのか? 僕がいなくなって困ってるとか?」

 と僕は聞いてみる。

「べべべ、別に何も困ってねーよ ! 戦闘用ゴーレムは元気モリモリだし、ダンジョンの道にも迷わず探索出来てるっつーの」
「兄者の言うとおりだ、探索も毎回黒字でうっはうはだっつーの」

 大分困っているらしいな。

 でも今更僕の知ったことではない。

 というか、よくこんな連中とダンジョン探索出来ていたな、僕。

 追放してくれて本当にありがたい、と今更ながら思う。

「とにかく、戻ってきやがれナット! 別に戻ってきてほしくなんてないけどな」
「兄者の言うとおりだ! 戻ってこないっていうんなら力づくで――」

「――冒険者同士の喧嘩はご法度ですよ、お2人さん♪」

 ぱん、ぱん、と。

 手を叩く音とともに、若い女性が僕と兄弟の間に割り込んできた。

 髪は黒色。カールがかかったショートヘア。軽い口調だが、金色の瞳の奥には獲物を狙う猫のような鋭い眼光が隠れている。口元には、いたずらっぽい笑み。

 いつの間にいたんだろう。周りに他の人の気配なんてなかった。

「私、冒険者ギルド本部所属のリエルと申しまーす。皆さんみたいな、冒険者同士の揉め事を仲裁するお仕事をしています♪」

 冒険者ギルド本部所属だって!?

 全員がプラチナ級冒険者の、超エリート組織じゃないか。

 中には、勇者に匹敵するような大物もいるらしい。

 リエルさんの身のこなしからは、実力が全く読み取れない。完璧にカモフラージュされている。

「話し合いでは解決出来ない問題を、後腐れなく、きれいさっぱり解決する。それが私たちのお仕事です。いかがです? この喧嘩、私に預けてみませんか?」

 僕はうなづく。話し合いでは、粘着質な勇者ハロン達は振り切れそうにない。

 キキとカカもやる気のようだ。

「決まりですね。では、4人で。2VS2で決闘しましょう」

「えっ、決闘!?」

「はい、決闘。直接対決です」

 そう言ってリエルさんは、肉食獣のような、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
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