55 / 65
【ざまぁ回】第55話 黒幕、1週間、馬車馬のように雑用をさせられる羽目になる
しおりを挟む
ゴーレム研究院の本部は、首都にほど近い街にある。
というより、街1つが丸ごとゴーレム研究院の施設になっていた。
この街に住むのは、ゴーレム研究院に所属する研究者か、研究者の生活を支えるための衣食住に関する仕事をしている者である。
そして、街の中央にある、ひときわ大きい塔。
その最上階に、ボイルは呼び出されている
呼び出したのは、ゴーレム研究院の院長。紗幕の奥にいて姿は見えない。
そして、部屋の中央にボイルは正座していた。
「さて、ボイル。ナットに直接対決を挑み、我がゴーレム研究院に引き込む作戦は失敗したらしいな?」
紗幕の奥から、院長の低い声が響く。
「は。申し訳ございません。失敗しました」
額に汗をかきながらボイルは答える。
「ゴーレム対決で完全敗北。ゴーレム研究院の名を汚したと」
「はい、完全敗北しました」
「しかも聞いたぞ? 甲冑を被ってゴーレムのフリをしたらしいな」
「はい、ゴーレムのフリをしました」
「そして、貴重な研究資料である卵を、賭けで奪われたと」
「はい、卵を奪われました……。申し訳ありません」
地面に頭をこすりつけてボイルは謝る。背中には冷や汗がダラダラと流れていた。
「いや、面白い」
「へ?」
「自分自身がゴーレムになるというそのアイデア、面白いじゃないか」
「あ、ありがとうございます……?」
思っていたのと違う反応に、ボイルは混乱する。
「ボイル、お前はゴーレムになれ」
部屋の扉を開けて、1人の低い階級の研究員が木製の札を持ってきた。
札には、『私はゴーレムです。皆さんのいうことをなんでも聞きます』と書かれていた。
「ボイル、お前は1週間、ゴーレムだ。その札を首からかけて、周りの人間の命令を聞け。それが終わったら、次の作戦に移ることを許可してやる」
研究員がボイルの首から紐で札をぶら下げる。
「おいゴーレム、肩を揉めよ」
突然、下っ端研究員が言い放つ。
「なに!? 貴様、下っ端の分際で、俺に命令だと?」
目下に偉そうに命令されたボイルが、顔を真っ赤にして怒る。
だが、
「なんだボイル? お前はゴーレムのくせに口応えするのか?」
院長に聞かれて、言い返せない。
「そこの君。いうことを聞かないゴーレムは、どうするべきかなぁ?」
「不良品でございますね。土に分解して庭にでも撒くのが妥当な処置かと思います」
こうなってはボイルは黙るしかなかった。
命令されるまま、ボイルは下っ端研究員の肩をもむ。
指が痛くなるまで肩をもんだところで、ようやく解放される。
「では、これで失礼します」
ボイルは部屋を立ち去ろうとする。
(おのれぇ! これもすべて、あのクソガキ、ナットのせいだ! 1週間経ったら、更に綿密な作戦を立てて、貴様を今度こそ陥れてやる!)
などと考えながら扉を開けるボイル。
扉を開けると、行列ができていた。
「これは、一体……」
「みんなゴーレムに命令してみたくってワクワクしてるんだ」
並んでいるのは、全てボイルの知っている、ボイルより下の立場の研究員や清掃員だった。
「今日から1週間、ボイルはゴーレムなんだって? 代金渡すから、昼飯のサンドイッチ買ってこいよ」
「私は畑の手入れをお願いしに来たの」
「通りの掃除をしておいて」
「退屈だから面白い話してよ」
次々に仕事を言い渡されるボイル。
こうしてボイルは、1週間下の立場の人間にこき使われまくった。
というより、街1つが丸ごとゴーレム研究院の施設になっていた。
この街に住むのは、ゴーレム研究院に所属する研究者か、研究者の生活を支えるための衣食住に関する仕事をしている者である。
そして、街の中央にある、ひときわ大きい塔。
その最上階に、ボイルは呼び出されている
呼び出したのは、ゴーレム研究院の院長。紗幕の奥にいて姿は見えない。
そして、部屋の中央にボイルは正座していた。
「さて、ボイル。ナットに直接対決を挑み、我がゴーレム研究院に引き込む作戦は失敗したらしいな?」
紗幕の奥から、院長の低い声が響く。
「は。申し訳ございません。失敗しました」
額に汗をかきながらボイルは答える。
「ゴーレム対決で完全敗北。ゴーレム研究院の名を汚したと」
「はい、完全敗北しました」
「しかも聞いたぞ? 甲冑を被ってゴーレムのフリをしたらしいな」
「はい、ゴーレムのフリをしました」
「そして、貴重な研究資料である卵を、賭けで奪われたと」
「はい、卵を奪われました……。申し訳ありません」
地面に頭をこすりつけてボイルは謝る。背中には冷や汗がダラダラと流れていた。
「いや、面白い」
「へ?」
「自分自身がゴーレムになるというそのアイデア、面白いじゃないか」
「あ、ありがとうございます……?」
思っていたのと違う反応に、ボイルは混乱する。
「ボイル、お前はゴーレムになれ」
部屋の扉を開けて、1人の低い階級の研究員が木製の札を持ってきた。
札には、『私はゴーレムです。皆さんのいうことをなんでも聞きます』と書かれていた。
「ボイル、お前は1週間、ゴーレムだ。その札を首からかけて、周りの人間の命令を聞け。それが終わったら、次の作戦に移ることを許可してやる」
研究員がボイルの首から紐で札をぶら下げる。
「おいゴーレム、肩を揉めよ」
突然、下っ端研究員が言い放つ。
「なに!? 貴様、下っ端の分際で、俺に命令だと?」
目下に偉そうに命令されたボイルが、顔を真っ赤にして怒る。
だが、
「なんだボイル? お前はゴーレムのくせに口応えするのか?」
院長に聞かれて、言い返せない。
「そこの君。いうことを聞かないゴーレムは、どうするべきかなぁ?」
「不良品でございますね。土に分解して庭にでも撒くのが妥当な処置かと思います」
こうなってはボイルは黙るしかなかった。
命令されるまま、ボイルは下っ端研究員の肩をもむ。
指が痛くなるまで肩をもんだところで、ようやく解放される。
「では、これで失礼します」
ボイルは部屋を立ち去ろうとする。
(おのれぇ! これもすべて、あのクソガキ、ナットのせいだ! 1週間経ったら、更に綿密な作戦を立てて、貴様を今度こそ陥れてやる!)
などと考えながら扉を開けるボイル。
扉を開けると、行列ができていた。
「これは、一体……」
「みんなゴーレムに命令してみたくってワクワクしてるんだ」
並んでいるのは、全てボイルの知っている、ボイルより下の立場の研究員や清掃員だった。
「今日から1週間、ボイルはゴーレムなんだって? 代金渡すから、昼飯のサンドイッチ買ってこいよ」
「私は畑の手入れをお願いしに来たの」
「通りの掃除をしておいて」
「退屈だから面白い話してよ」
次々に仕事を言い渡されるボイル。
こうしてボイルは、1週間下の立場の人間にこき使われまくった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる