58 / 65
第2章 S級ダンジョン攻略編
第58話 ゴーレム技師、ゴーレムで強力なモンスターを蹴散らしていく
しおりを挟む
ダンジョン探索で一番苦しいのは、前回探索した地点まで進むことだ。
前回の最高突立つ地点にたどり着くまでに、食料や水をかなり消耗する。
最短ルートが分かるので前回より楽にたどり着けるはずだが、それでもかなりしんどい。
前回の探索でモンスターの数を減らしたところで、ダンジョンの中の生息数からしたら誤差みたいなものだ。
そこで僕は、ダンジョンの中に拠点を作り、そこで食料などを生産できるようにしようと考えたのだ。
拠点づくりのために、ガレックには自分の体に近いサイズの荷物を背負ってもらっている。人間だったらまず運べない重さだが、ゴーレムにとってはたいした苦では無い。
まずは、ハロンパーティー時代の最奥到達地点を目指す。
地図はハロンパーティーを離脱するときに渡してしまったが、最短ルートはしっかり覚えている。なにせ地図作成と道案内を担当していたのは僕だったから。
そして、早速僕らの行く手を阻むモンスターが現れる。
キラースコーピオン。
ハサミで人の胴を両断できるほど巨大なサソリだ。
S級ダンジョンだけあって、スピードもパワーも毒性も1級品だ。守りも硬く、あの甲殻は鍛冶職人がハンマーで叩いても壊せない。
C級程度のダンジョンのボス相手なら、余裕で勝つだろう。
「私が行きますね」
だが、毒の効かないアルカなら負ける心配はない。
「戦乙女形態」
近接戦闘形態に切り替えたアルカが、ハサミと尻尾の素早い攻撃を軽やかにかわす。
繰り出される連撃。そのすべてを紙一重で見切る。そして、
「【ピンポイントスラスト】」
――一撃。
素早く動くキラースコーピオンの、動作の際に発生するわずかな甲殻の隙間を縫って、急所を1刺し。
一撃で仕留めた。
モンスターの襲撃を警戒して、アルカが索敵形態に移行する。
「マスター、気配を消していますが、あそこに大型のモンスターが潜んでいます」
ウサ耳を揺らしながらアルカが大きな樹を指さす。
この辺りで大型モンスター、気配を消している……とくれば。
「ペトリファイ・アナコンダか……」
視線に石化効果がある危険な蛇モンスターだ。
体長は10メートルを超え、もし締め付けられたらまず命はない。
が、ゴーレムには石化の状態異常なんぞまるで意味がない。
「ガレック、まかせた。お前なら大丈夫だ」
背負っていた荷物を一旦地面に置き、ガレックが樹の裏に突撃。
飛び出してきたペトリファイ・アナコンダがガレックに巻きつく。そして、至近距離から睨みつけて石化させようとする。しかし、無駄だ。
アナコンダは得意の石化が効かないことに気付いたのか、今度は締め付ける力を強くする。
だがガレックの青銅の鎧は締め付けられてもビクともしない。
「ガレック、逆に締め付けてやるんだ!」
太い腕を使ってガレックがアナコンダの首を捕まえる。
最大出力で締め上げると、アナコンダは容易に絶命した。
こんな調子で、僕たちはモンスターを蹴散らして進んでいく。
――――
夕方には、ハロンパーティー時代に3日かけていた道のりを進むことができた。
明日には最奥到達点まで辿りつけるだろう。
「よし、今日はここで休もう」
丁度良い具合に開けた場所を見つけたので、テントを張ることにする。
アルカが探索モードで見張りをしてくれているので、モンスターに奇襲される心配はない。
僕は安心して料理に集中する。持ち込んだ食材と、道中倒した食べられるモンスターの肉を調味料と一緒に煮込む。
「マスターの料理は美味しいです。お皿洗いはお任せ下さい」
食後、僕は近くにあった倒木に腰掛ける。
もう日は落ちていて、静かだ。
ハロンパーティー時代には雑用を全部やらされていた上にみんなうるさかったからな。こうやって、ぼうっと静かさに身を委ねられる時間はなかった。
アルカも横に座ってきた。
「マスター、魔力供給をお願いします」
アルカがもたれかかってくる。
僕はアルカの背中に手を置く。バニーガールの時のアルカは背中をあらわにしているので、脱いでもらう必要がなくて助かる。
アルカの背中に魔力を流していく。
「私、マスターの話が聞きたいです。勇者パーティーに入る前は、どんな暮らしをしていたのですか?」
そういえば、あんまり昔の話をしたことがなかったな。
僕は星を眺めながら色々な話をした。
ゴーレムを作ろうとしたきっかけだとか、
近所の古代文字を解読できるお姉さんに文献を読んでもらった話だとか、
作り始めのゴーレムの話だとか。
そんな話をしているうちに、夜も更けてきた。
「僕はそろそろ寝るよ、おやすみ、アルカ」
「見張りはお任せください、マスター」
そして翌日の昼、ついに最奥到達点に来た。
ここからは完全に未踏の領域だ。
見た目はこれまでの樹海とかわらない。だが、どんなモンスターや罠が潜んでいるかは分からない。
「よし。探索に挑む前に、ここに拠点を建てよう」
前回の最高突立つ地点にたどり着くまでに、食料や水をかなり消耗する。
最短ルートが分かるので前回より楽にたどり着けるはずだが、それでもかなりしんどい。
前回の探索でモンスターの数を減らしたところで、ダンジョンの中の生息数からしたら誤差みたいなものだ。
そこで僕は、ダンジョンの中に拠点を作り、そこで食料などを生産できるようにしようと考えたのだ。
拠点づくりのために、ガレックには自分の体に近いサイズの荷物を背負ってもらっている。人間だったらまず運べない重さだが、ゴーレムにとってはたいした苦では無い。
まずは、ハロンパーティー時代の最奥到達地点を目指す。
地図はハロンパーティーを離脱するときに渡してしまったが、最短ルートはしっかり覚えている。なにせ地図作成と道案内を担当していたのは僕だったから。
そして、早速僕らの行く手を阻むモンスターが現れる。
キラースコーピオン。
ハサミで人の胴を両断できるほど巨大なサソリだ。
S級ダンジョンだけあって、スピードもパワーも毒性も1級品だ。守りも硬く、あの甲殻は鍛冶職人がハンマーで叩いても壊せない。
C級程度のダンジョンのボス相手なら、余裕で勝つだろう。
「私が行きますね」
だが、毒の効かないアルカなら負ける心配はない。
「戦乙女形態」
近接戦闘形態に切り替えたアルカが、ハサミと尻尾の素早い攻撃を軽やかにかわす。
繰り出される連撃。そのすべてを紙一重で見切る。そして、
「【ピンポイントスラスト】」
――一撃。
素早く動くキラースコーピオンの、動作の際に発生するわずかな甲殻の隙間を縫って、急所を1刺し。
一撃で仕留めた。
モンスターの襲撃を警戒して、アルカが索敵形態に移行する。
「マスター、気配を消していますが、あそこに大型のモンスターが潜んでいます」
ウサ耳を揺らしながらアルカが大きな樹を指さす。
この辺りで大型モンスター、気配を消している……とくれば。
「ペトリファイ・アナコンダか……」
視線に石化効果がある危険な蛇モンスターだ。
体長は10メートルを超え、もし締め付けられたらまず命はない。
が、ゴーレムには石化の状態異常なんぞまるで意味がない。
「ガレック、まかせた。お前なら大丈夫だ」
背負っていた荷物を一旦地面に置き、ガレックが樹の裏に突撃。
飛び出してきたペトリファイ・アナコンダがガレックに巻きつく。そして、至近距離から睨みつけて石化させようとする。しかし、無駄だ。
アナコンダは得意の石化が効かないことに気付いたのか、今度は締め付ける力を強くする。
だがガレックの青銅の鎧は締め付けられてもビクともしない。
「ガレック、逆に締め付けてやるんだ!」
太い腕を使ってガレックがアナコンダの首を捕まえる。
最大出力で締め上げると、アナコンダは容易に絶命した。
こんな調子で、僕たちはモンスターを蹴散らして進んでいく。
――――
夕方には、ハロンパーティー時代に3日かけていた道のりを進むことができた。
明日には最奥到達点まで辿りつけるだろう。
「よし、今日はここで休もう」
丁度良い具合に開けた場所を見つけたので、テントを張ることにする。
アルカが探索モードで見張りをしてくれているので、モンスターに奇襲される心配はない。
僕は安心して料理に集中する。持ち込んだ食材と、道中倒した食べられるモンスターの肉を調味料と一緒に煮込む。
「マスターの料理は美味しいです。お皿洗いはお任せ下さい」
食後、僕は近くにあった倒木に腰掛ける。
もう日は落ちていて、静かだ。
ハロンパーティー時代には雑用を全部やらされていた上にみんなうるさかったからな。こうやって、ぼうっと静かさに身を委ねられる時間はなかった。
アルカも横に座ってきた。
「マスター、魔力供給をお願いします」
アルカがもたれかかってくる。
僕はアルカの背中に手を置く。バニーガールの時のアルカは背中をあらわにしているので、脱いでもらう必要がなくて助かる。
アルカの背中に魔力を流していく。
「私、マスターの話が聞きたいです。勇者パーティーに入る前は、どんな暮らしをしていたのですか?」
そういえば、あんまり昔の話をしたことがなかったな。
僕は星を眺めながら色々な話をした。
ゴーレムを作ろうとしたきっかけだとか、
近所の古代文字を解読できるお姉さんに文献を読んでもらった話だとか、
作り始めのゴーレムの話だとか。
そんな話をしているうちに、夜も更けてきた。
「僕はそろそろ寝るよ、おやすみ、アルカ」
「見張りはお任せください、マスター」
そして翌日の昼、ついに最奥到達点に来た。
ここからは完全に未踏の領域だ。
見た目はこれまでの樹海とかわらない。だが、どんなモンスターや罠が潜んでいるかは分からない。
「よし。探索に挑む前に、ここに拠点を建てよう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる