【2章完結】超古代技術【ゴーレム】を扱える世界唯一の少年、不当に勇者パーティを追放されるが、戦闘も農業も全自動化し、世界最強に成りあがる!!

音速炒飯

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第2章 S級ダンジョン攻略編

第63話 激突!! 湖に棲む階層守護モンスター VS 湖の水を全部抜いちゃうゴーレム技師

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――ゴーレム研究院本部、最上階の部屋。

 1週間の労働から解放されたボイルは、院長に新しい作戦を報告しに来ていた。

「今回の作戦は、戦わずしてナットのダンジョン探索を妨害するものです」

「ほう? 申してみろ」

 紗幕の奥から、院長の低い声が返ってくる。

「冒険者の命綱は、ずばり”回復ポーション”です。これを断ちます」

「考えたではないか。具体的には?」

「ポーションの原材料である薬草が生える場所は限られております。そこを冒険者ギルドを通さず裏で冒険者を雇い、採取します。取りつくせはしないでしょうが数をかなり減らせるかと。

 そして同時に、冒険者ギルドの報酬以上の価格で裏で薬草の買取を行います」

「すると冒険者たちが冒険者ギルドを通さず個人で薬草を採取しに行き、更に薬草が減る。そして回復ポーションが流通しなくなる、と」

「その通りでございます。そして回復ポーションが手に入らなくなったナットは、ダンジョン探索出来なくなり、金に困る。そこへ我々が優しく声をかけ、金でゴーレム研究院に引き入れるのです。遠回りですが、確実性のある作戦かと」

 ボイルは知らない。今まさにこの瞬間、ナットがS級ダンジョンの中で上質な薬草の栽培に成功していることを。 

「つきましては、まず手始めに金貨50枚を作戦資金として頂きたく。なに、作戦終了後に薬草を売り払えば、全て返ってきます。どころか、ポーションが高騰しているので利益が出るかもしれませぬ」

「いいだろう、許可する」

「ありがとうございます。真に優れた軍師とは、戦わずして勝つもの。今度こそ、戦わずに鮮やかに勝利して御覧に入れましょう」

 部屋にボイルと院長のくっくっくという笑い声が響く。

 しかしこの作戦で、ボイルとゴーレム研究院はまたまた自分の首を締めることになるのだった。

――――

 S級ダンジョン1層最奥。

 僕たちは、メネストサウルス討伐のための作戦を進めていた。

 2週間以内にやるべきことは3つ。

1つ目:湖の水抜き

2つ目:戦闘用ゴーレムの量産

3つ目:遠距離戦闘用の武器の準備と、アルカの新形態モード追加

 これを全てクリアして、ようやくメネストサウルスと戦えるようになる。

 まずは1つ目。湖の水抜き。

 大型インスタントゴーレムを呼び出し、ひたすらに地面を掘る。

 メネストサウルスのいる湖には、3本の川が流れ込み、1本の川が流れ出ている。まず土を掘り、流れ込んでいる川の流れを変えて、流れ出ている川に接続する。

 これで湖に入る水をなくすのだが、ゴーレムを総動員しても中々に大変な作業だ。

「ナット様、取ってきたのニャ!」

 マロンが皮の小袋いっぱいの魔石をもって駆けてきた。

 地面を掘っている間、マロンには近くのモンスターを狩って、魔石を取ってきてもらっているのだ。

 この魔石を動力源にして、ゴーレム達で土木工事を進める。

 ――5日後、やっと川の迂回水路が完成した。

 上流の川の水をこの迂回水路に流すと、徐々に湖の水位が減り始める。

 ついでに下流側の川も工事して、太く、深くすることで流れ出る水の量を増やしてある。

 これだけでも、決戦の日までには湖の水を半分程度までは減らせるだろう。

 そして次の策だ。

「よし、頼んだぞ、耐水ゴーレム」

 湖の底でも活動できるようにしたインスタントゴーレムが、大荷物を背負って湖にはいっていく。

 持たせているのは、皮を縫い合わせて作った、丸太ほどの太さのチューブ。

 このチューブに湖の水を満たし、片側を縛って湖から揚げる。もう片側は湖の底に沈めておく。

 そして、縛った側だけを下流側の川に持って行ってほどく。すると何の力も加えていないのに、チューブから湖の水が流れ出す。

 細かい原理の説明は省略するが、湖側のチューブには水圧がかかり、その力で水が押し出されて、川側のチューブ出口から出ていくのだ。

 これを10セット用意する。

 流石にダンジョンの中のモンスターの素材だけではチューブを作る皮が足りなかったので、一度アルカとガレックに街に戻って大量に買い付けてもらった。

 拠点を守るためのゴーレムやマロンがいるので、僕がモンスターに襲われる心配もないし。

 チューブによって、更に水抜きのスピードは上がるだろう。

 計算通りなら、2週間後には湖の水は空とまではいかなくても1、2割程度に減らせるはずだ。

 その程度の水位なら、湖の魚は生きられるだろうし、巨大なメネストサウルスは身動きがかなりしにくくなるだろう。

「よし、2つ目の戦闘用ゴーレムの量産に移ろう」

 これはやることは簡単。いつも通りインスタントゴーレムを作るだけ。

 なのだが、数がとても多い。

 マロンに取ってきてもらった魔石を原動力にするので、僕の魔力の限界を超えた数を動かせる。

 用意するのは、これまでで最高の300体。

 しかも耐水加工が必要なので、結構手間がかかる。

 この作業は丸4日かかってしまった。

 ここまでの作業で9日。

――そして残りの5日で、アルカの改造とゴーレム用武器の作成をなんとか完了させた。

 迎えた決戦の日。

 湖の水はかなり減っているが、腰か肩くらいまでの深さはありそうだ。

 水面を見ると、すぐ下を魚が沢山泳いでいる。ちらほらと、大型の水棲モンスターが水不足で動けなくなっている。

 そして階層守護モンスターであるメネストサウルスも、身体の下の方が水に浸かっているだけの状態になっていた。

 前に見たときには水に隠れていて見えなかったが、メネストサウルスの身体には、手足の代わりにヒレが付いていた。予想通りだ。

 これなら、いまはせいぜい這いまわることくらいしかできないだろう。機動力は圧倒的にこちらが上だ。

「行くぞ、アルカ、マロン」

 こうしてついに、階層守護モンスターとの対決が幕を開けた。
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