勇者さま、おもてなし係

草野瀬津璃

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本編

3 お姫様へささげる、スイーツ盛り合わせ 前編

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 夏が終わり、りんごの実がなった頃、アイナはりんごを収穫していた。

「今年もつやつやのりんごさんです~。アップルパイ♪ アップルパイ♪」

 門の前に座っているゴーレムが、アイナの歌にあわせて、手を軽く振る。小型ドラゴンのミリーも、ピイピイとリズムを合わせて鳴いていた。
 そんな午後、またミリーがピーッと甲高い悲鳴を上げ、ゴーレムの背後に隠れた。

「あれ~、どうしたの、ミリーちゃん」
「ピイピイ」
「えっ、またですかぁ?」

 振り返って森の中を抜ける道、遠くに目をこらす。勇者一行が手を振っていた。

「頼もう!」
「そのあいさつ、古いですよ、勇者さん」

 アイナがツッコミを入れると、何故か勇者の青年はぴしりと固まった。色白な肌が耳まで真っ赤に染まったかと思えば、わざとらしく咳払いをして、姿勢を正す。

「これは失礼。アイナの姉か、それとも母だろうか? 俺は勇者のエド……」
「わあああ、なーに魔物に名乗ろうとしているんですか、勇者様! 呪われたらどうするんです」
「む、そうだったな」

 神官の少年が大声を上げて割り込んで、勇者は気まずそうにした。
 確かに名乗らないのは正解だ。名前を元にして呪う魔物がいるのも事実である。
 魔法使いの女が問う。

「結婚記念の旅行からお戻りになったのかしら? アイナはいらっしゃいます?」

 魔法使いの問いに、アイナはきょとんとした。

「え? パパとママはまだ戻ってませんよ~。私がアイナです」
「「「え?」」」
「え?」

 四人そろって首を傾げる。
 アイナは遅れて気が付いた。

「あ、私、この夏に誕生日を迎えて、百歳になったんです。大人です~」

 そうだった、誰にも会わないのですっかり忘れていたけれど、大人のドラゴンになったので、脱皮をして一回り大きくなったのだ。
 人型をとったらこの通り、長い銀髪と赤い目を持った、人間でいう二十歳くらいの外見になったのである。レースのついたファンシーなエプロンドレスはもう卒業して、ママのブラウスと赤いロングスカートにエプロン、腰には革製のコルセットという格好をしている。
 ただ、ママより胸元が余るので、胸元が開いたシャツは着れそうにないから残念だ。
 ボンキュッボンに憧れていたのに、小さな丘が二つ。……悲しい。

「変でしょうか? 誰にも会っていないので、感想を聞けないんですよねえ。レッドドラゴンとしてはちょっと小柄かもしれませんね。でも私の飛行は速いですよ~」

 小回りが利いてスピードが出るので、追いかけっこをしたらまず負けない。うふふっと笑って小首を傾げると、何故か勇者と神官の少年が顔を赤くした。
 魔法使いは面白そうに目を輝かせる。

「へえ、大人になると変化へんげにも反映されるのね。魔物に使っていいか分かんないけど、清楚系で可愛いじゃないの」
「そういう魔法使いさんは、色気たっぷりで素敵です~」
「まっ、本当のことだけどうれしいわ。ありがとう」

 全く遠慮しない辺り、魔法使いは堂々としていてかっこいい。
 彼女はまさしくボンキュッボンにふさわしい体の持ち主だが、露出しているわけではない。赤と黒のおしゃれなローブが似合っている。

「それでまた、今回はどうしました?」

 問いかけるアイナに、勇者は気まずそうに問う。

「ちょっとかくまってくれないかと思って」
「……は? かくまう、ですか?」

 アイナは目を丸くして、人間最強の青年を見つめた。



「へー、お姫様と結婚させられそうなんですかぁ」

 庭のテーブルでお茶をしながら話を聞いたアイナは、勇者の困り顔を眺めた。

(すごい、困っててもかっこいい。勇者ってすごいなあ)

 流石は天空神に愛される存在だと、アイナはひそかに感心した。

「あんまり興味ない感じね」
「魔法使いさんもそんな感じですね」
「だって他人事だし」
「わぁ」

 アイナと魔法使いのやりとりに、神官が眉を吊り上げる。

「ひどい! なんて冷たいご婦人がたでしょう! そもそもこれは、王様による政略結婚なんです。愛がない。ひどい話です」
「なーに言ってんの、あのお姫様は愛があるわよ。勇者にメロメロじゃないの。勇者にっていうか、この人の外面に?」
「わぁ」

 ずけずけと返す魔法使いに、アイナは感嘆の声を上げるばかりだ。毒舌がぴりりとききすぎて反応に困る。

「三人は本当に仲良しですねえ。気軽に物を言い合えて、良い関係だと思いますー」

 アイナが褒めると、三人はちらりと顔を見合わせた。

「……まあ、信頼関係があるから言えることだな」
「そうですね、仲間ですし」
「え? 私は誰に対してもこうよ?」

 無遠慮な魔法使いの言葉に、勇者と神官は白けた視線を送る。アイナはぷっと噴き出した。

「面白いですねえ。ところでなんでまた、政略結婚させられる流れになっちゃったんです?」

 アイナがそもそものことを質問すると、勇者は肩をすくめる。

「俺達が魔物との和平に向けて動いているのが、王様には邪魔だったみたいだな」
「それで勇者様とお姫様を婚約させて、行動を封じようっていうことみたいですよ」

 神官は苦笑した。

「国王としてで言うことを聞かないから、しゅうととしてコントロールしようって腹よ。ほんと私、あのおっさん、嫌い」

 魔法使いは不愉快を露わにして、紅茶をお酒みたいにぐいっと飲んだ。ちょっとリキュールを入れ過ぎたかもしれない。酔っぱらっているように見える。
 アイナはいったん席を離れ、レモンとミントを浮かべた冷たい水を用意して魔法使いの前に置いた。魔法使いはうれしそうにグラスに水をつぎ、やはり酒みたいにあおる。

「でも、それだと逆効果ではないですか~? 勇者さんに権力を持たせちゃうんですよね? お姫様が勇者さんにメロメロなら、お姫様は勇者さんの言うことを聞くわけですし。こう、裏からちょちょいっと手を回せますよね~」
「ふんわりしながらえぐいことを言うわねえ。さっすが魔物」
「えへへー」

 褒められたと喜ぶアイナに、「褒めてないわよ」と魔法使いは呆れ混じりに手を振る。

「俺は好きでもない女と結婚なんかしない。ただでさえ結婚は人生の墓場だと、どこぞの偉人が言ってるってのに、姫が相手じゃもっと面倒くせえだろ」

 勇者はうんざりと溜息を吐く。

「宮廷みたいな所、大嫌いなんですよね、勇者様」
「あそこの良い面なんて、美味い飯が出てくるところくらいだろ」

 神官の言葉に、勇者はけっと付け足す。魔法使いは首を横に振る。

「運んでくるうちに冷めるから、おいしくないわよ。今のところ、お父さんの料理の次は、アイナちゃんの料理が一番かな」
「親のごはんにはかないませんよぉ。でもうれしいです~。それでこちらを避難先に?」
「それもあるけど、ここが政治的には敵対していて、人間側に襲撃されてもレッドドラゴンだから対処できるだろうし、私達も暴れやすいってところね。近くに民家がないから」

 魔法使いの説明は明瞭だ。

「なるほどー、逃げ込んだ先を殲滅するようなかたなんですねー、王様って。故郷のかたは逃がしてきました?」
「身を隠すようには言ったけど、うちはド田舎すぎるから安全よ。知らない奴が踏み込んだら、間違いなく遭難するから」

 魔法使いは笑って言った。勇者が続けて口を開く。

「俺の田舎も辺境なんだよな。でも領主の命令には弱いから、母さん達には魔法使いの田舎に逃げてもらった」
「私の姉さんにもそうしてもらいました。ド田舎というか、魔の山岳地帯ど真ん中なんですけど、集落は整備されていて、住み心地はそこそこ良さそうでしたし、神官は一人しかいないので喜ばれていましたよ」

 いやしの術を使えるのは神の加護を受け、信仰を力に変えられる神官だけだ。集落に一人は欲しい人材である。喜ぶのも当然だ。

「魔物も多く住む、混沌地帯ですね」

 アイナは興味を惹かれた。

「一度、行ってみたい所です。魔物の国では、食材が豊富で有名なんですよ」
「確かに毒草が多いわね。あ、だからあの山って魔物が多いのね」

 魔法使いはポンと手を叩いた。

「ええと、つまり、事態が落ち着くまで、三人を我が家に居候させればいいんですね? 魔物の国に亡命してもらってもいいかもしれませんが……人間には我が国はしんどいでしょうしねえ。日が差しませんし、毒霧が出る日もあるので」

 アイナは岩壁のはるか向こう、黒雲のたなびく辺りを見上げる。勇者が面白そうに問う。

「毒霧ってことは、魔物はさわやかな空気とでも表現するのか?」
「そうです。よくお分かりですね」

 彼らはだいぶ魔物のことを分かってきたようだ。

「構いませんけど、魔王様には報告しますね? それから、家事も手伝ってください。えっと……魔法使いさんはやめてもらって」
「なんで私が、家事が苦手って分かったの!?」

 魔法使いが驚くので、アイナはあははと苦笑いを浮かべる。

「大雑把でしょう? 家を壊されたら困るので……」
「確かに。俺達が手伝うから安心しろ」
「魔法使いさんには日なたぼっこしていてもらうのが一番スムーズです」
「あんた達、私の扱いがひどくない!?」

 魔法使いが怒ったが、アイナ達はそっと目をそらした。

     ◆

 数日後。
 魔法使いは裏庭で、たらいに水を張って洗濯していた。

「まったくもう、あいつら、馬鹿にしてくれちゃって。私だってこれくらい出来るんだからねっ」

 怒りながら石鹸でシーツを洗っていたが、だんだんもみ洗いが面倒になってきた。

「あ、そうだわ。――水よ、渦を巻いて流れとなれ。ウォーター・スプラッ」

 そこで魔法使いの右手を勇者が掴んで空へ向けた。驚きながらも魔法使いは呪文を完成させる。

「シュ!」

 水が渦を巻いて空へ飛び上がり、局所的な雨になって一帯に降り注ぐ。

「……何をやってるんだ、魔法使い。家事に魔法を使うなと、あれだけ言ったよな?」
「だってこんな作業を地味にこなすなんて馬鹿らしいじゃないの。魔法で簡単に出来るんだから、そうしたほうが……いたーいっ、何すんのよ、馬鹿勇者っ」
「そう言って、台所を爆破させようとしたのはいつだった? ん? 昨日の朝だったよな」
「えー、そうだっけ? 三日前じゃ……すみませんでした」

 げんこつを落とされた頭を押さえながら、魔法使いは首を傾げたが、勇者ににらまれて即座に謝った。

「もう、またですか、魔法使いさん! 何もしなくていいって言ってるじゃないですか。むしろ何かしたほうが迷惑なんですっ」

 外に出てきた神官が、魔法使いに釘を刺す。

「だって何もしないって居心地悪くて」
「お願いですから何もしないでください。私のおうちがなくなっちゃいますぅ」

 アイナも二階の窓から顔を出して、魔法使いに声をかける。魔法使いはそれはつまらなさそうに口をとがらせた。

「何よ、役に立ちたいって言ってるだけなのに」
「だから、何もしないのが役に立つんだって言ってるんだ」

 勇者が言い返し、険悪な空気になってきた時、玄関のほうから女のヒステリックな叫び声がした。

「なんなの、いきなり雨が降ってくるなんて! 服が濡れちゃったじゃないのーっ」
「ちょっと姫様、そんなに騒ぐと、偵察の意味が……。うわあああ」
「きゃああああ」

 男と女の悲鳴が聞こえてきた。
 アイナが玄関に行ってみると、ゴーレムにつまみあげられて暴れる三十代くらいの騎士と、膝丈のドレスワンピースを身に纏った少女がいた。豊かな金髪を結い上げ、赤いリボンでまとめている。服と靴も鮮やかな赤だ。

「侵入者ですかぁ? 今、帰るんなら見逃してあげますけど、どうします?」
「違うわよーっ、私は勇者様に会いにきたのっ。ジール王国が第一王女、リリ……」
「わーっ、姫様、駄目ですよ、魔物に名乗っちゃあ!」

 お姫様の名乗りを、騎士が慌ててさえぎる。アイナは裏庭のほうに声をかけた。

「お姫様ですかぁ。勇者様、お客様ですよー」

 シャツにズボンとロングブーツというラフな格好をしている勇者が、魔法使いや神官とともに現われる。申し訳ないと手であいさつされた。アイナは横にずれて、勇者に場をゆずる。

「ああ、聞こえてる。お久しぶりです、姫」
「勇者様、ご無沙汰しておりますわ。キーッ、そこの魔物の女っ、わたくしの婚約者に近付くんじゃなくってよ!」
「……面倒くせえ」

 騒ぐお姫様をうんざりと見上げ、勇者はぼそりと呟いた。
 後ろから魔法使いが指を差して笑う。

「あはははは、お姫ちゃんってば、宙吊りでいい格好ねえ。お猿さんみたいよ」
「出ましたわね、ボインお化け! ほんっと納得いきませんわ。どうして貧相な食事ばかりのド田舎育ちの女がそれで、豊かな食事のわたくしがこうなんですのーっ」
「今日も絶壁だね」
「やかましいですわよーっ」

 涙目で怒鳴るお姫様。
 アイナはちょっとだけ同情した。

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