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13 乙女ゲームの世界か
しおりを挟むさて、それで、大聖堂を無罪放免された私は、今度は放流されなかった。
「ハルデンベルク侯爵がエマ様をぜひ養女にと仰せでございます」
何と私を引き取ってくれる貴族家があったのだ。それも侯爵家だ。高位貴族だ。
侍女見習いのカチヤをラーニングした時に、貴族情報があったが、その寄子を率いるのがハルデンベルク侯爵家であった。
「ええと、私は平民でございますけれど」
「学校に行くのに身元引受人がいた方がよろしゅうございます。ハルデンベルク侯爵家にはお嬢様がいらっしゃらないので丁度よろしゅうございましょう」
いや、よろしゅうございましょうと舌噛みそうな事言われても。
「大丈夫でございますよ。実は侯爵様も奥様もエマ様をご覧になって是非にと仰っておいでです」
「はあ」
何時見られていたのかね。しかし、この話し方、太刀打ちできない。ラーニングではなく本人の素養とか、資質の問題だろうか。
一応、教会の方も身元保証人になるという。その上で貴族家とも繋がりがあった方がいいらしい。少しは利用価値があるのだろうか、このアルンシュタット王国は私を放流しない事にしたようだ。
ハルデンベルク侯爵家に引き取られ、養子縁組をする。貴族学校の試験を受けて合格ということで、侯爵家のタウンハウスから王都の貴族学校に通うことになった。この世界は待ってくれない。神様と一緒で、私を無視して予定をサッサと消化する。ベルトコンベアに乗せられている気分ね。
侯爵家で部屋を与えられ、ハイデとカチヤが私付きの侍女になった。もちろんカステル伯爵夫人も教育係兼側付きとして側にいる。
侯爵夫妻とは最初にお茶をしただけで、広いお屋敷ではほとんど顔を合わさない。跡継ぎの長男が結婚して別宅に居を構えて子供も生まれお家は安泰、次男は他家の婿養子になっている。私は侯爵夫妻の気まぐれか暇つぶしの相手だろうか。
そういう訳で落ち着く間もなく学校に通う。
「貴族学校は入学料も授業料も寄付金もとてもお高いのでございますよ」
カステル伯爵夫人にキッチリ言われた。
「はい、頑張ります」
この世界で育っていない私は、この世界の常識というものが分からない。どっちに向かって頑張ればいいのだろう。
貴族学校は王宮を取り巻くように貴族街があり、貴族街の外れの森に囲まれた閑静で広大な敷地に建っている。学生寮があるけれど私は通学することが決まっていた。生徒は十二歳から十八歳までで、私は秋からの新学期に合わせての編入で四年生になった。ー学年にクラスは三つでひとクラス二十数人だ。
学校までの送り迎えは侍女と護衛が付いているけれど校内ではひとりだ。四年生から高等部で他校からの転入生もあるけれど、クラスでは何となく敬遠される。
私が入ったのは高位貴族のクラスで、すでにグループが出来上がっていた。誰も遠巻きにしてこそこそ話してはチラリと様子を窺う。
ピンクの髪の聖女っぽい美少女な私。これは逆断罪ヒロインコースだろうか。
屋敷に帰ると侯爵様の奥方が待っていて「月末に王宮舞踏会があるので準備をしなさい」と申し渡される。
「奥様、私は夜会に出たことがございません」と答えると目を丸くして、それから徐に言った。
「わたくしはあなたの母になったの。お母様と呼びなさい」
ハルデンベルク侯爵夫人はとても威厳があって貫禄もあって、彼女を母親と呼ぶのにはあまり抵抗を感じないが。
「はい、お義母様」
「そう、いい子ね」
候爵夫人は軽く私の頭を撫でて「あら」と少し嬉しそうな顔をして、今度は本格的に髪をぐしゃぐしゃにした。驚いて少しだけジタバタする。
「髪が柔らかくてほわほわして気持ちがいいわ」
そして名残惜しそうに離れて行った。
「エマお嬢様の髪はふわふわして柔らかくて触るのが楽しいです」
少し仲良くなった侍女のカチヤが髪を直しながら言ってくれる。
「でも、纏めるのは大変なんですよ」
ハイデが腕まくりの真似をする。そうね、慣れるまで大変ね。学校もその内慣れるだろうか。お友達ができればいいのだけれど、しばらくは様子見だろうな。
王宮舞踏会の前に、一度王宮に行くことになった。王妃様がお茶会を開いて下さるそうで、ハルデンベルク侯爵夫人と共に王宮に行く。
私、思うんだけど、いや今更思うのはどうかと思うんだけど、ドレスなの。
王宮に行くというので侍女の二人が着付けてくれたのは、ピンクの髪に似合う地模様のあるミントグリーンのドレスだった。非常に落ち着いて、それでいて全体に施された刺繍とレースやフリルが効果的にあしらってあって若々しくもある。
舞踏会に行くのなら当然ドレスがいる訳で、侍女が次々に出してくる高価そうなドレスや装身具がとても恐ろしい。私にそんな価値があるのだろうか。聞きたいけれどとても聞けない、このジレンマ。カステル伯爵夫人に聞けば、はっきりとお高いのでございますと言ってくれるだろうが、一体私に何を求めているのだろうか。
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