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19 義印
しおりを挟むここはとある料亭の一室。
「予算が取れないんだ。削られるかもしれない。デパートにプールしていた余剰金も発覚したし、コレでは会議の後の豪華松花堂弁当どころか幕の内も危うい。酒なんぞは出せもしない」
上座に座った男が呟いた。その男にゴマすり揉み手の男が言った。
「喧嘩(でいり)をやらせりゃあいいですよ」
「しかしこの辺りは如月組が牛耳っていて無風地帯といわれているが……。課長、何かいい案があるのかね」
「部長。実は如月組の若頭の義純という男が血気盛んな上に、つい最近養子を取ったんですがね。それがもう若くて非常に可愛いと評判でして」
「ほう……」部長の顔がしまり無く緩んだ。
この部長は結婚しているが実は隠れホモである。署内のめぼしい男は皆漁って、最近新しい男を欲しがっていた。
「ううむ、そうかね。まあうまくやってくれたまえ」
男はそれ以上言わず盃を口に運んだ。料亭の一室で男二人がしのび笑い。
* * *
その日暖斗を迎えに来たのはいつもの脩二ではなかった。
「修二さんがお出かけで」と車のドアを開けた男に見覚えは無かった。
暖斗がためらうと後ろから男が暖斗を車の中に突き飛ばした。車の中にいた男達が暖斗を取り押さえる。そのまま車は発進した。
「若頭領!! 大変だ! 姐さんが!」
暖斗が攫われたと知った脩二は、建設会社如月工務店の常務をやっている義純の所に駆け込んだ。
「一体誰がそんなバカな事を」
義純は仕事をほっぽらかして立ち上がった。そこに屋敷から子分さんが手紙を持って駆けつける。
『如月暖斗は預かった』
「くっそー!! どこの組のヤツでい!」
手紙を持って来た子分さんが「それがどうも極勢会の下っ端のヤツのようでして」と首を捻りながら答えた。極勢会は新興の勢力だが、そこの会長は狡賢くて如月組と事を構えるほど無謀とは思えないのだが。
しかし、すっかり頭に血が上った義純はそれを聞くなり常務室を飛び出した。梅田やら脩二やらが慌てて引き止めようとするが間に合わない。
しかし会社を出ようとした所で甚五郎さんに引き止められた。
「どこに行くんでい、義!」
気難しそうな顔をしているが実は温厚な甚五郎さんだが、こういう時の声は腹からの声でよく響く。これにはいくら頭に血が上っている義純も答えない訳にはいかなかった。
「社長、はるが攫われた。俺はこれから極勢会まで行って来る」
そう言って義純が出ようとするのを甚五郎さんは引き止めた。
「ガセじゃあねえのか。よく調べたのか?」その言葉に義純はグッと詰まる。
「よく考えろい。おめえともあろうもんがよ」
脩二がすかさず「姐さんは携帯を持っておいでです。場所が分かります」と義純に言う。
「この時期、ヤクザが喧嘩して嬉しいのはお上じゃあないですか?」と秘書の梅田も進言した。
* * *
その頃、暖斗は……。
とある料亭の一室に手足を縛られて転がされていた。
ガラッとふすまが開いて渋い男が現れた。男は暖斗を見てニヤリと唇を歪めた。
「何だよあんた! 何するんだよ! さっさとこれを解けよ!」
暖斗がキッと男を睨んで言うと、男はニヤニヤと笑ったまま暖斗の側に寄った。
「聞いていた以上に可愛いな。元気のいいぴちぴちした子は私の好みだ」
そう言って暖斗の顎を捉えて顔をあちこち向けて観賞した挙句、その唇にブチューとかまそうとした。暖斗はギャー!!と藻掻きまくって男の手から逃れ出た。
男はあっさり暖斗から手を離して「オジサンはイキのいい若いのを大人しくさせるのが好きなんだ」と言うと立ち上がって服を脱ぎだした。
(なんなんだよ、このオヤジは・・・)
「お前なんかのお粗末なモノに犯られるか!」
暖斗は服を脱いでいる男をキッと睨んで言い放った。
「そうか?」とすっかり服を脱いだ男が振り向く。下から見上げた暖斗の目に黒光りして刀身のように反り返った一物が……。
(こ、こいつ露出狂か・・・?)
「そ、そんな粗品、いらねえやい! とっとと鞘に収めて失せやがれ!!」
暖斗は縛られた体で芋虫のように逃げながら喚いたが、男はさっさと暖斗を捕まえて布団に投げ込んだ。そして暖斗の上に伸し掛かって押さえ込みをかけてくる。
「ぐえっ!!」
「さあて、どこから脱がそうかな~♪」
男は押さえつけた暖斗のシャツのボタンを外して胸を曝し「ほう♪」と目を輝かせた。滑らかな白い胸にピンクのかわゆい乳首がフルフルと震えている。暖斗の身体に押さえ込みをかけて、胸やら乳首をレロレロと舐めまくった。
「ふんぎゃあ!!」
嫌だった。気持ちが悪かった。いつも義純にされているのに……。
(何でだ……?)
必死になって逃れようと暴れたら、今度は男の手は暖斗の下半身の方に来た。下半身は嫌だった。この前彫ったばかりの刺青がある。絶対に見せたくない。あんなモノ。
(こいつが見て笑ったら、殺してやる!!!)
男の手がズボンを下ろしパンツを引き剥がそうとする。
「やっ、止めろっ!! 義さあああーーーん!!!」
暖斗の祈りが通じたのかその時ふすまがターーン!と開いた。義純がふすまの向こうで仁王立ちしている。
「わっ!! お前は!!」
暖斗に伸し掛かっていた男は振り返って慌てて逃げようとしたが、義純は男をふん捕まえて紐で縛った。
「てめえ! こいつは俺の女房だ。今度こういう真似をしたら背中のこいつが黙っちゃいねえぞ!」と縛りつけた男に背を向けてもろ肌脱いで啖呵を切った。
(か、カッコいいようー!!)
「しかしこのまま帰ったんじゃあ可哀想だ。特別出血大サービスと行くか」
「えっ!?」
義純は縛られた暖斗の紐を解くと、半脱ぎの服を全部脱がして暖斗を抱え上げた。男には暖斗の体が見えないように自分の体で遮って、暖斗の体を解しゆっくりと押し入った。
「ああん……義さん……」
義純に危ない所を救ってもらったし、かっこいい啖呵も見た。男に見られているということも、このさいは相乗効果となって暖斗の官能を煽った。
二人は男の目の前でせっせと愛の行為に励んだ。
二人に見せ付けられた男が懲りたかどうかは又別の問題である。
後日、暖斗もあんなかっこいい啖呵を切りたいと思った。しかし、もし自分がやったら……。
お尻をペロンと出して「このお尻の義さん印が目に入らないか!」って言うのだろうか……。
(ものすごーく! カッコわりいぜ・・・)
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