3 / 17
1巻
1-3
しおりを挟む「は、ぁ……っ!」
温かくてぬめった舌が、首筋を伝って耳元まで上がってくる。そして耳朶に吸いつき、細く尖った舌先で耳のフチを舐めてきた。
ぞくぞくした感覚が体中を襲う。息遣いが荒くなって、頭の中がぐらぐらした。酔っぱらった体はひどく重くて動くのも億劫なのに、不思議と気持ちよさだけは鋭敏に脳へ伝わってくる。
ヤツの表情は妙に冷静だった。ニヤニヤした笑みは浮かべているものの、私が乱れる様を楽しそうに観察している。
私は悔しくなって、ぐっと奥歯を噛んだ。変な声を出して、彼に馬鹿にされたくない。
体中に力を入れて唇を引きしめていると、彼は「ふぅん?」と面白そうに笑い、耳朶に軽く噛みついてきた。
びくっと大きく体が揺れる。ちろちろと耳を舐めながら、彼は手を淫らに動かす。そして胸を捏ねていた指で、つんと頂をはじいてきた。
「あっ!」
初めての感覚に大きな声が上がる。しまったと思ったけれど、遅かった。
私の口に、彼が人差し指を挿し込む。くちゅくちゅと音を立て、口腔をかき回す。
――ぐりりと、頂を強くつねられた。その甘すぎる感覚に上ずった声が出る。
「ふ、あぁ、やぁ……」
指が入っているから、口を閉じることができない。手はおろか口でも抵抗できないようにされて、私は彼の思うがままにはしたない声を上げた。
「最初からそうやって素直に声を出せばいいのに。……まぁ、抵抗されるのは嫌いではない。いじめがいがあるからな」
クックッと笑って、ヤツが身を起こす。ようやく口から指が抜かれ、私はキッと彼を睨んだ。
「最低!」
「どうとでも言え」
ぷつ、と小さな音を立ててスカートのホックが外された。白のフレアスカートをするりと脱がされ、ストッキングもショーツごと剥ぎ取られてしまう。
ものすごく手慣れてる。とんだ遊び人だ。自分の中にあった高柳幸人のイメージがガラガラ音を立てて崩れていく。
「悔しい……っ」
ぎゅっと目を瞑って声を絞り出した。
会社での姿は全部嘘だったのだ。あの優しい笑顔も紳士的な言動も上っ面のものだったのだ。それなのに私は今日こそ勝負しようと、ウキウキしながら服を選んだり頑張ってお化粧したり。髪もきれいに巻いたし、マニキュアだって何度も塗り直して完璧に自分を仕立て上げていた。
そのオチがこれだなんて。自分自身が情けなくて、じわりと涙が滲む。
「いいな、その顔は」
彼がふっと笑う。そして私の頬をゆるやかに撫でてきた。
「悔しさを口にしながらも俺を睨みつける、その表情は好ましい。すぐに諦める人間はつまらないからな。会社での君は毒にも薬にもならんという印象だったが、意外と勝気な性格をしているようだ」
まさに言いたい放題だ。というか、あんなに人のよさそうな笑顔で私に話しかけておいて、腹の中ではそんなことを考えていたのか。
彼は楽しそうに笑い、親指で私の目尻をぬぐう。
「いくら悔しかろうとも、君を解放するつもりはない。俺の本性を知ったからには、覚悟してもらうぞ」
目を細めた彼は私に馬乗りになり、腕時計の留め金をぱちりと外す。
「わ、私は知りたかったわけじゃない。あなたが勝手に見せてきたんじゃない!」
「だが、俺の領域に足を踏み入れたのは君だ。虎穴に入ろうとしなければ、こんなことにはならなかったのに。いや、この場合は藪をつついたという表現のほうが正しいのかな?」
腕時計をベッドのカウンターに置きながらくすくす笑うと、私を檻に閉じ込めるように覆いかぶさり、枕元に両手を置いた。
「単なる会社の同僚なら、君に興味を持つことはなかった。そんな俺に興味を持たせたのは、他ならぬ君自身だ。……おかげで、欲しくなってしまった」
徐々に近づいてくる。優しくて王子様みたいで、でも本性はまったくそうじゃなかった男の顔が――
静かに唇が重なる。小さな水音が耳に届く。
初めてのキスに、私は目を丸くした。
すぐに唇が離される。だけど間髪を容れずに二回目のキスが落とされた。少し角度を変えて、唇と唇がぴったりと重なるようにした、深いキス。
息苦しさに目を瞑る。拘束された手首にぐっと力を入れると、彼はそこに手を添えてきた。あやすように柔らかく握って、もう片方の手を背中に回してくる。
唇をゆっくり滑らせるようなキスが終わって、息を継ぐ間もなく再び唇が重なる。そして、何かとろりとしたものが入り込んできた。
「んっ、んーっ!?」
私は焦って身をよじる。しかし彼の腕がしっかりと腰に巻きついているせいで、ほとんど身動きが取れない。
温かくてとろとろしたもの。それは間違いなく彼の舌だった。彼は暴れる私の体を押さえつけ、ぬるりとした舌で口腔を犯していく。
奥のほうに縮こまっていた私の舌を探り、ゆっくりと味わうように交わらせた。舌先でくすぐられ、ぬるついた舌同士が絡み合う。
いたわるように。いつくしむように。
私を力ずくで押さえているにもかかわらず、彼の舌の動きはひどく緩慢で優しい。
「……鼻で息をするんだ」
彼は唇を少し離して、そんなことを呟く。私の反応から、キスが初めてなのだと気づいたらしい。それに私が応える前にキスの続きが始まり、舌を軽く吸われた。
「はっ、ん」
鼻で息をしろと言われても、それだけではちょっと苦しい。だけどそれ以上に、私は自分自身の変化に戸惑いを感じていた。
ちゅ、と音を立てて唇が離されると、少しだけ寂しくなる。唇が再び合わさると、ホッと安堵した。
ゆっくりとして柔らかな舌の動き、とろけるような舌同士のまぐわいが、私の体をみるみるうちに弛緩させていく。まるで、体中が彼にとろかされたみたいに。
彼は私の背中に腕を回したまま、頬を優しく撫でてきた。
どうして……こんなに優しくしてくれるのだろう。
彼は私が欲しくなったと言っていた。だから優しくしてくれるの? それとも、これがいわゆる「キスがうまい」ということなの?
全てが初めてなので、よくわからない。ただ、温かい湯船につかっているような心地よさと、くらくらする酩酊のせいで、うまく思考が働かなかった。
「経験が少なそうに見えるが、もしかして初めてなのか?」
彼が音もなく唇を離し、至近距離で聞いてくる。私は小さく頷いた。
「そうか」
ふっと彼の目が細められる。今のは笑ったのだろうか。
「処女をいただくのは、さすがに想定外だったな。だが、それすら欲しいと思う。こういう緊張感は、思ったよりも悪くない」
「何それ……どういうこと?」
「君の大事なものをもらうのだから、責任も相応だということだ。君だけでなく、俺も覚悟するべきだろう?」
彼はにっこりと微笑む。だけど私はまだピンとこなかった。
どういうことだろう? 私の初めてと彼の責任。そして覚悟。
酔っている頭を必死に働かせる。やがて言葉の意味を理解した私は、目を大きく見開いた。慌てて身をよじらせ、手足をばたつかせる。
「ちょっと待って! 私、そこまで考えてない! そういう覚悟とか責任とか、結構ですからっ!」
「俺から逃げられるとでも? ははは、安泰な生活が約束されてよかったじゃないか」
「あんたの性格が最悪な時点で、まったく安泰じゃないし!」
冗談じゃないと思いながら反論すると、高柳幸人は少し驚いたように目を丸くした。
「ほう? 君は俺の背後にあるものよりも、俺自身を見ているのか。それはそれは――嬉しいことを言ってくれる」
ニ、と彼は凶悪な笑みを浮かべた。会社にいる時の爽やかな笑みとは程遠い、悪人そのものの笑みだ。
「あ、あなたを喜ばせるようなことを言った覚えはないのですが」
「さらには無自覚ときたか。いや、今まで手つかずだったのは奇跡だな。本来、君のような女は早く売れていく。俺はなかなかの『当たり』を捕まえることができたようだ」
高柳幸人はわざと主軸をずらしたような言い方をしていて、いまいち要領を得なかった。だけど早く売れるだの当たりを捕まえただの、あんまりいいことを言っているようには思えない。
ムッとして彼を睨むと、「そう睨むな」と笑われた。
「俺は純粋に喜んでいるんだ。君にとって大切なものは俺の所有物ではなく俺自身なのだと、君の告白は嘘偽りのないものだったとわかったからな」
彼は私の頬を挟み込むように両手で触れ、目と鼻の先でそんなことを言ってきた。
「あ、あの告白は……そのぅ……」
あくまで表向きの高柳幸人に惚れた私としては、全力で撤回したいところなのだが、彼の表情があまりに幸せそうだから、つい言葉尻を濁してしまう。
そんな顔をしないでほしい。なぜか私まで嬉しくなってしまうではないか。
彼はくすりと笑い、唇を優しく重ねてきた。何度も交わしたキスのせいか濡れていて、少し冷たい私の唇に、生温かい舌が這う。舌先でちろちろと舐められるのは、ちょっとくすぐったい。だけど、不思議と気持ちがよかった。
「できる限り、優しくする」
ぽつりと呟いた彼の舌が、唇から顎に伝い、首筋を通っていく。
震えるほどの快感に、知らなかった興奮。
大きな手が私の体を艶めかしく撫で、胸からお腹、そして下腹部へと向かっていく。
「あ……」
彼の手がどこに行き着くのか、私は本能的にわかっていた。制止の声を上げそうになったところで、唇をふさがれる。
それは噛みつくとか無理矢理とか、そういった感じのものではなくて、ひどく優しいものだった。彼は怖がる私をなだめるように、極めてソフトな口づけを落としてくる。
だからだろうか――。私の反抗心はみるみるとしぼんでいき、彼の唇に体を委ねてしまう。
そこで彼の指先が、スッと繁みに分け入った。
初めて許してしまった男性の指。硬くて、自分のものとは違う他人の手の感覚に、どうしても体中が緊張する。くちりと音を立てて秘裂が開かれ、外気に触れてひやりとした。
「少し濡れているな」
彼が笑い、指先でするりと内襞を撫でてくる。途端に総毛立つような感覚に襲われて、私は「ひゃあっ!」と大きな声を上げてしまった。
彼は耳元で「怖がるな」と呟き、耳朶にキスをしてくる。そのまま食み、尖らせた舌先でぬるりと耳のフチをたどった。
体中がざわざわして、息遣いはあえぐようなものに変わる。抗えない気持ちよさに、思考の数々が散らばっていく。
ちゅ、とリップ音を鳴らして肩にキスを落とした彼は、そのまま舌を這わせ、胸まで下りてきた。そして胸の頂にゆっくりと口づける。
「ああっ!」
びくびくと体が戦慄いた。
それは今までに感じたことのない甘い感覚。何物にも代えがたい快感は、私の体をいとも簡単に支配してしまう。
彼の思いのままに声が上がって、体は震えた。頂を甘く噛み、舌先で捏ねくり回されるたび、私の中から冷静さが失われていく。何も考えずにただこの時を悦べと、体が訴えてくる。
彼は胸の頂を舌でいじりながら、指で秘所を探り始めた。生温かく、とろりとしたものが蜜口からこぼれる。それを彼が指でぬぐい取り、内襞に優しく塗りつけていく。
「ん、……ふ、ぁ」
胸の頂を舌でいじられ、秘裂を指でいじられ、どこに意識を集中させればいいのかわからない。私の体はまさしく翻弄されていた。
「やっ……、あっ……んっ」
彼が私の体に触れ、舌で舐めるたび、拘束された手首にぎりぎりと力が入る。抵抗すら許されない状況で、性の快楽が否応なしに襲ってくる。
「ひゃっ……」
唐突に、ぐいと足を持ち上げられた。それは彼の肩にかけられ、大きく開かれた秘裂の中に人差し指を挿し込まれる。くちゅりと淫らな水音がして、恥ずかしさに目をぎゅっと瞑ってしまった。
「反応が初々しいな。顔を真っ赤にして、実に可愛い」
「んっ……か、可愛い、なんて……」
「本当に、君のような女が売れ残っていたことに驚きを隠せない。相手に経験があるとかないとか、今まで気にしたこともなかったが……君の反応はいいな。くせになりそうだ」
彼が身を屈めたかと思えば、胸元にヂリッと痛みを感じた。
「やぁっ……」
思わず目を開けると、胸元に赤い痣がついている。彼はお腹の辺りにも唇を落とし、もう一つ赤いしるしをつけた。
「君が恥ずかしがるところを、もっと見てみたい」
彼が顔を上げ、私と目を合わせてニヤリと笑う。その目には不思議な感情が浮かんでいた。
何だろう……愛情に似ている気もするけれど、もっと禍々しい。
あえて言葉にするなら、執着、だろうか。
彼は私と目を合わせたまま、蜜口に入れた指を動かし始めた。ゆっくりと奥へ挿し込み、関節を軽く曲げる。それだけで圧迫感が急激に大きくなり、私は思わず身を震わせた。
「はっ、あ……!」
く、と体がのけぞる。自然と顎が上がって、カーディガンで拘束されたままの手をぎゅっと握りしめた。足は彼の肩にかけられている上、しっかりと片腕で固定されているので、動かすことができない。
「ん、んんっ……」
逃れることも抵抗することも許されず、膣内を指でかき回された。少し緩急をつけたような動きで、関節を曲げたまま、指が蜜口から出し入れされる。
「やっ、……ああっ!」
彼が指を動かすたび、ぐちゅ、ぬちゅ、と耳を覆いたくなるような恥ずかしい水音が聞こえてくる。それは紛うことなく私の体から分泌されたものだった。
官能によって秘所が潤うことは、性知識の乏しい私でも知っている。でも、実際に体がそうなると、こんなにも恥ずかしいのだと思い知った。
「よく濡れる。君は感じやすいんだな」
ふふ、と高柳幸人は楽しそうに笑った。馬鹿にされたように感じて、私はぷいと横を向く。
「なぜ拗ねるんだ。褒めたのに」
「んっ……ほ、褒めてない……何か、やらしいって言われたみたい……」
「いやらしいのは悪いことなのか? 俺にとっては喜ばしいんだが。感じているということは、それだけ俺に心を許しているということだろう?」
彼は目を細め、私の膣内に埋めた指をくいくいと動かした。たった一カ所をいじられているだけなのに、体中が痺れたみたいに戦慄く。
「は、あ……っ! そ、そういう……もの、なの?」
「俺としては、そうであってほしい。さすがに一方通行は寂しいからな」
彼は少し切なげに微笑む。酒で酔い潰して、半ば無理矢理コトを始めようとしているくせに、その笑顔はずるい。彼の本性を知って驚く気持ちはもちろんあるけど、だからといって嫌いになったかといえばそうでもないのだ。
まだ好きという気持ちは残っている。だからこそ、絆されそうになってしまう。彼になら体を許してもいいかな、と思い始めていた。
こんな風に体を触られているにもかかわらず、助けを呼んだり噛みついたりしていないのがその証拠だ。そんな私に、自分を受け入れてほしいとでも言いたげな笑顔を見せないでほしい。
「ばか……」
横を向きながら呟く。どうせなら無理矢理すればいいのに。そうしたら私はきっぱりと恋心を断てるのに。彼は妙に優しいから、心が揺れる。
いたわるような口づけと柔らかい愛撫は、私が初めてだからこその気遣いなの? それとも、本当に私が欲しいから優しくしているの?
わからない。わからないまま、体だけが彼の好きなように暴かれていく。彼の望み通りに、秘裂から蜜がとろりとこぼれる。
「ひ、あぁ……」
私の頭が混乱する中、彼は秘裂を大きく開いてきた。そして少しスピードを上げて、人差し指を抜き差しする。くちゅくちゅという水音が激しくなり、膣壁を擦る指の感覚に自然と声が上がる。
「あ、ああっ!」
彼は静かに唇を重ねてきた。指の抽挿がさらに速まり、声が出せず手足の自由も利かないまま、ただただ快感だけが絶え間なく続く。
抗えない、というのは不思議と興奮した。私にそういう趣味があるとは思っていないけど、なぜか余計に気持ちがいいと感じてしまう。
それがバレるのが嫌で、恥ずかしくて、唇に意識を集中させた。口腔を犯してくる彼の舌に応え、たどたどしく自分の舌を動かす。
「はっ、はぁ……は、ん」
「……一生懸命なところが、たまらなく可愛いな。拙いのもいい。……これが、落ちるという感覚か」
ふ、と彼が笑った。落ちるとはどういうことだろう?
「そろそろ挿れるぞ」
カチャリとベルトの留め金を外す音が聞こえる。彼はスラックスのポケットから避妊具を一枚取り出し、びりっと袋を噛みちぎった。
ずいぶんと用意がいい。……ぼんやりとしながら、そんなことを思った。
彼は片手で自分のものに避妊具を取りつけ、ニヤリと笑う。
「色々と考えの足りていない君が、こんなところだけ準備万端だとは思っていない。だから、ちゃんと自分で用意していたよ」
「うぅ……」
「中にはそういったことも含めて計算ずくの人間もいるが、君は違うからな」
にっこりと、彼は満面の笑みを見せてくる。腹が立つけど、その笑顔はまぶしいほど格好いい。
「俺でよかったな? 他の男はこんなに優しく扱ってくれないぞ。初めての相手が俺だったことに感謝するように」
「どの口が言うか……! ん、あぁっ!」
悪態が悲鳴に変わる。彼のものが問答無用で挿入ってきたからだ。硬くて、指とは比べ物にならないほど存在感のある、大きなものが。
「は、あ……っ」
指で慣らされた膣道を、ソレがずむずむと進んでいく。ヂリッと引きつるような痛みを感じて、目にじわりと涙が浮かんだ。
――これが、初めての痛みなのかな。
「くっ、あ、いた……ぁっ……」
「最初はどうやっても痛む。できるだけ、ゆっくり動くから」
「うん、だいじょうぶ……まだ、あ、んっ」
体が痙攣するみたいにびくびくと震える。最奥まで挿し込むと、彼はようやく息をつき、ぎゅうっと私を抱きしめた。
否応なく感じる体内の異物に、意識の全てが集中する。思わずぐっと下肢に力を入れると、彼がわずかに顔をしかめた。
「……っ、初めてのわりに、咥え込むのがうまいな」
「んっ……え?」
「無自覚か。まったく。抜けているように見えて、こういうところだけは魔性を感じるな」
ふ、と微笑み、彼がゆっくりと身を引く。ずるずると抜かれていく杭が膣内の粘膜を擦り、体が勝手に強張る。
「っ……」
やがて全てを引き抜いた彼が、再び先端から侵入してきた。えらの張ったところが狭い蜜口を広げ、にゅぷりと挿入ってくる。
「ふ、あ……あっ」
ひときわ太い部分が、入り口の浅いところを何度も往復する。甘い痺れと、ジリジリと蓄積されていく快感。たまらなくなって、嬌声が次第に大きくなっていく。
「あんっ、あ、ふぁっ……!」
彼は私の腰を抱き、その行為を続けた。焦らされて、切なくなって、私は懇願するように声を上げる。
「や、たか……やなぎ、さん、おねが……っ」
「こういう時は、名前を呼ぶものだ」
「……幸人さんっ、お願いだから、ちゃんと、して!」
はぁっと息を吐きながら、はしたない願いを口にする。――私は一体、何を言っているんだろう。
彼は意地悪そうに目を細めた。そして片手で私の蜜口を広げ、ぐりりと杭を埋めてくる。容赦なく、乱暴に、ぐっと最奥まで貫かれた。
「ああっ!」
私の喉から高い声が上がる。体が弓なりになって、びくびくと震える。
彼は私の腰を強く掴み、スピードに乗って抽挿を始めた。柔肉を擦り、狭い膣道をこじ開けるように往復し、最奥をごつごつと突いてくる。
「く……はっ、あぁっ!」
それは暴力的なほど甘い快感。嬌声はやがて声にならない悲鳴になり、私は目をぎゅっと瞑って縛られた手を握り込む。
自分の体じゃないみたいに、がくがくと揺さぶられた。頭がぐらぐらして、カーディガンがきしんだ音を上げる。
「あ、だめ……っ、ゆきと……この手、外して……っ」
もっと感じたい。彼に触れたい。一緒に快感を追い求めたい。そんな気持ちでいっぱいになって、私は強く懇願した。
高柳幸人は抽挿を続けながら口元をゆるめる。そして私の手首を拘束していたカーディガンをしゅるりと外した。
自由になった私は思わず彼を抱きしめる。頭で考えたわけではなく、本能で求めるように体が動いていた。
ごつ、と最奥まで貫かれる。そのまま付け根をぐりぐりと擦りつけられ、下腹部にきゅう、と痛みを感じた。それは破瓜の痛みとは違って、ひどく鈍い痛みだ。気持ちよさが混じった痛みというか、喜びにも似ている。
「あ、やぁ、んんっ……」
彼の表情が、余裕のないものに変わっていく。腰の動きも一層乱暴になって、私を気遣うよりも自分自身の快楽を求めるものに変わっていく。
「ゆき、と……さ……はぁっ……」
「天音……っ」
苦しげな声と共に、性の交わりは唐突に終わりを告げた。
彼はきつく私を抱きしめ、びくりと体を震わせる。膜越しに、白い欲望が勢いよく吐き出されるのがわかった。
とろとろしたまどろみから、ゆっくりと目覚める。見慣れない天井、広いベッド、パノラマの景色が美しい壁一面の窓。
ぼーっとそれらを眺めていた私は、唐突にハッと目を見開いた。
「ここは!」
がばっと起きて辺りをきょろきょろ見回す。それと同時に昨晩のことを一気に思い出した。
そうだ。私は、うちの会社の御曹司とホテルで肌を重ねたんだ。それで……
「おはよう」
「ぎゃああ!!」
耳元で朝の挨拶を囁かれ、思わず飛び上がってしまった。振り向くと、そこには笑顔の高柳幸人が寝そべっている。ちなみに全裸であった。
……いや、何と言いますか、体がすごく引きしまってて腹筋も割れてて、コイツは脱いでも格好いいんだな……って、イケメン観賞してる場合ではない!
「わ、わ、私、失礼させていただきます!」
「もう? 君は晴れて俺の恋人になったんだから、そんなに慌てずゆっくりしていけばいいだろう。そうだ、朝食でも頼もうか」
「ええっ、朝食!? ……じゃなくて、恋人とは何を仰っているのか! ハッハッハッ、意味がわかりかねますなぁ」
乾いた笑い声を上げて、ベッドの上でじりじりと後退する。ホテルの朝食は正直とても食べたかったけど、それより一刻も早く逃げ出したい。
しかし、彼はニヤリと意地悪そうに目を細めた。
「裸で出ていくつもりか?」
「はっ!!」
自分の体を見下ろすと、私は生まれたままの姿をしていた。慌てて服を探したら、ソファのところにまとめてあった。
私はシーツで体を隠しつつゆっくりとベッドから下り、カニ歩きでソファへ移動する。そんな私を、高柳幸人は面白そうに眺めていた。
「昨日、あんなにまっすぐな告白をしてくれたというのに、あれは嘘だったのか?」
「あ、あれは、だって」
「俺と付き合いたいと言ってたな。俺としては大歓迎だから、よろしくやろうじゃないか」
「いやいや、よろしくやりません! あの時はあなたがこういう人だなんて知らなかったし! 告白は撤回いたします!」
ソファの後ろに回り込んで、とりあえずショーツを掴む。高柳幸人に向かってがなり立てつつショーツを穿いて、ブラジャーを身につけた。
「……そうなのか? 嬉しかったのにな。所詮、俺は表向きの顔と社長息子という肩書きにしか価値がないということか。君なら、俺のことをわかってくれると思ったんだが……」
彼は、ふっと寂しげに目を伏せる。ストッキングを穿いてからスカートを着ていた私は、「えっ」と声を上げた。
何でそんな、同情を誘うようなことを言うんだ。騙されないぞ。絶対何か企んでいるだろ。高柳幸人の上っ面にすっかり騙された私には、彼の言動が全て怪しく見えて仕方がない。
「そっ、そんな顔したって信じないから! 昨日はつい流されてセックスなどを致してしまいましたが、忘れてください! 気の迷いでした! それでは失礼します、お疲れ様でしたーっ!」
ニットを着てカーディガンを引っ掴み、カバンを持ってぴゅーっと去る。
本当に私、何をやっていたんだろう。シラフになってよく考えてみたら、普通に断ればよかったのだ。私が本気で嫌がったら、きっと彼は最後までしなかったはず。そこまで極悪人では……ないと思う。多分。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。