異世界召喚鍛冶師

蛇神

文字の大きさ
49 / 64
第二章 悪魔と妖精

グルード

しおりを挟む
「おい、人を呼んできたぞ。だから泣きやめ」

 悪魔は口ではそういうものの、オロオロとしていた。私は手の痛みで声を出せず、頷くことしか出来なかった。

 悪魔は私が手をブッツリ深く切った時、カチンと固まって、どうすればいいんだ?人って簡単に死んじゃうんだよな?と混乱のためか、そんなことをブツブツ呟きながら、私の周りをストレスの溜まった熊のようにグルグルと歩き回った。しばらくして、あっ!アイツなら…!!と叫んだかと思ったらポンと弾け飛んで消えた。

 …そして今に至る。

「お前なら回復系の魔法が使えたよな。そこに突っ立ってないで早くこいつの傷を治してくれ」

 私は悪魔が呼んできた人を顔を上げて確認した。

「え?」
「やっぱりユキちん!?」
 
 悪魔が呼んできた人は、キルさんでした。

「なんだお前ら知り合いか」

 どうやら悪魔はキルさんの知り合いの悪魔だったらしい。

「君が慌てて私を呼ぶもんだから、いったいどんな人だろうと思ったら…まさかユキちゃんだったとはねぇ~」

 そういうと、キルさんは私の手を掴んで傷をつついた。

「っっつ~~~~!?」

 私は服をかんで声を必死に抑えた。隣で悪魔がオロオロとして、だ、大丈夫か!?死ぬのか!?と悪魔らしからぬ情けない姿を披露していた。

「うわ~…血管ぶちぶちだ…。骨もちょっとやってるかもね…。どんだけ力入れたのさ…」
「呑気に言ってないで早く治してください!!…ってて」

 少し大きな声を出したら、骨に響いて傷からピュっと血が吹き出た。

「はいはい、落ち着いて~。ほら君、力貸して」
「お、俺か!?」
「他に誰がいるの?僕は魔術師なんだから君の力が必要なんだよ」

 そう言うとキルさんは私の傷を手で覆った。悪魔も私の傷の上をキルさん越しに手で覆った。じんわり手が暖かくなるのを感じた。内側から春の光を浴びせられているような感じがする。優しい…そしてどこか懐かしい…そう感じられる暖かさだ。
 
「はいできた!治療完了~!!」
「もう?え!うわ、凄い…!!」

 見ると、パックりグロテスクに割かれていた大きな傷はすっかり無くなり、ただただ手が血で汚れているだけになった。

「手をグーパーしたり、いろんな動きをしてみて。動かしにくく感じたり、どこか痺れがあったりする?いつもと違う感じがしたりする?」
「…大丈夫です。ちゃんと動きます」

 はー、と悪魔とキルさんは二人して大きなため息をついた。安堵や呆れを含んだため息だ。

「全く、アルが知ったら僕が殺される…」

 キルさんは青い顔でワナワナ震えた。

「一つ貸しだからねユキちゃん。…そうだ!」

 キルさんは指をツイと動かした。その途端、床に広がった私の血が空中に集まり、大きな一つの赤黒いフワフワ浮かぶ血ができた。

「道すがら聞いたよ。ユキちゃん、悪魔と契約するためにこんなことになったんだよね…。ほら、君!言っていた君の血が入ってる瓶を出して!」
「…ほら」

 悪魔は瓶の蓋を開けてコチラへ向けた。そうすると、私の血がスーと瓶の中へ入っていった。

「余りは…処分ね」

 パチンとキルさんは指を鳴らした。血はボンと音を立て消えた。そして私と悪魔をじっと見つめた。

「ユキちゃん、もうコイツやだ!死んでしまえ!って思ったらすぐ僕のところにおいで~。すぐ消してあげるから」
「な!お前よくも!!」

 と悪魔はとても怒っているようだが、キルさんに手を上げたりはしなかった。やっぱりこの悪魔優しい。いや、ただたんに何かキルさんに弱みを握られているの…か…?

「大丈夫ですよ。そんな事ない…とは言いきれませんが、頑張ります」
「そ、そこは言い切ってくれ!じゃないと俺の命が危ない…!!」

 悪魔は顔を青ざめて叫んだ。

「いや、ジョーダンですよジョーダンですって」

 そんなやりとりをする私たちをキルさんはふーんとでも言うかのように笑ってみていた。

「ほら、君達もう夜遅いんだし…ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう~」

 僕の久々の睡眠を妨害したんだから…しっかり最後までやってくれないと困るんだよ。…と、キルさんはドスの効いた声で囁いた。

 「「へ、へい…。サーセンした…」」

 悪魔は空中に浮きっぱなしの羽根ペンを手に取って、私と悪魔の血をペン先につけた。そして、それにサラサラと変な文字を書き始めた。なんて書かれているかは分からないけど、契約書っぽい感じに仕上がった。

「…ここに名前を書く。お前、あっちの世界での…漢字?で書けよ。ここに書くのは魂に刻まれた名だからな。ちゃんと真名としてあっちのものを使え」

 言ってることはよくわかんないけど…漢字で名前を書けばいいんだね!

 悪魔は二つある傍線の上に契約書に書かれた変な文字でサラサラと文字を書いた。これがこの悪魔の名前なんだろう…けど、なんて読むんだろう…?

「ほら」

 悪魔はチョンチョンと血をまたつけて、私に羽ペンを手渡した。

 私は、それを受け取り慣れない羽根ペンで名前を書いた。悪魔のようにサラサラとではなく、カリカリと音を立てて書いた。それを見て、キルさんと悪魔はプププと笑った。

 しょうがないでしょー!初めて使ったんだからー!ここの世界では万年筆みたいなのしか使ってないんじゃー!

「…書いたよ」

 私は羊皮紙と羽根ペンを不貞腐れながら悪魔に返した。悪魔は満足そうに羊皮紙を眺めた。

「契約完了だ」

 そう言うと羊皮紙がフワ~ンと淡く光ったかと思うと、赤いミミズみたいなのがシュルシュルと出てきた。

 それは、私と悪魔、それぞれの前に分かれて浮かんだ。

「バサイ・グルード」
「天野崎雪」

 私には悪魔の名前が、悪魔には私の名前がそれぞれ現れた。

「グルード…でいいのかな」
「天野崎雪…どこで区切るんだ…?」

 あ、私…苗字と名前区別しないで書いちゃった。

「天野崎、雪。で分けてね!ユキって呼んで!」
「おぉ、そうか。わかったユキ」
 
  グルードは嬉しそうにユキユキユキユキと名前を呼んでくる。

 羊皮紙と羽根ペンはいつの間にかに消えていた。

 これで私とグルードは契約関係ということで、私はいつでもグルードを呼び出せるらしい。

「じゃ、僕もう戻るね。僕は明日早いんだ…ユキちゃんも早く寝なさいね」

 はーい、と私は返事をした。

「ではでは、おやすみ」
「おやすみなさい」

 キルさんは思い扉を軽々と押し、スタスタと歩いていってしまった。なにかあの扉は開け方にコツがあるのだろうか…?

「じゃ、私もう行くね…って、グルードはこれからどうするの?」
「いや、普通に普段通りに生活する。契約関係だからって言って、そんなに俺は縛られたりしない。もちろんユキも。…でも、ホイホイ呼び出されちゃ、普段通りに…とは行かないかもな」

 なるほど…?では、必要最低限度に呼び出しは控えさせていただきます。

「じゃ、俺は戻る。ちゃんと健康でいてくれよ?魔力が不味くなるからな!!」

 そういうと、グルードは黒い粒となって弾けちった。

「…私も戻るとしますか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...