はい、こちら伝言課

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伝言1

5 お給料に見合う労働です

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「なるほど。それでこんなにも部屋が綺麗なのかー…いや、ご苦労さん」

「はぁー…課長、一体何処で何してたんですか」

 あれから時間が経ち、既に終業時間1時間前になっている。つい10分前に三井が帰ってきて“なんでこんな綺麗なの…?”なんて言うもんだから今日一日何をしていたかを一ノ瀬が説明していたのだった。

「いや、業務で外回りしてたんだよ」

「じゃあ、ひと言掛けるかどうかして下さいよ。書庫から上がってきたら課長がいなくてびっくりしたんですからね。少し待ってたけど帰ってこないし…今日俺、業務日誌の内容が掃除だけなんですからね」

「あー…それは悪いことしたね。ごめんごめん」

 もお、気おつけて下さいよと一ノ瀬が言おうとした。だが次の三井の言葉でその言葉は口から出なくなった。

「まあ、次からもこんな事あるだろうから察してくれ」 

「ええ、分かりまし…はぁ!?」

 いやいや、危うく“わかりました”って言いかけたけど。次もあるのか!てか、察しろってナニ?

「課長!まって下さい。俺、課長が外回りいつするとか分かりませんし、第一職務内容すらしらないんですけど」

「あれ?言ってなかったっけ?」

(この前『そのうち』って言ってたじゃないか!忘れたのか、オイ!)

 「聞いてません。課長が『そのうち』っておっしゃったから、俺は今日教えてもらうつもりだったんですが」

「うーん、でも業務内容といってもなあ……あれ、これどうしたの?」

「ああ、それは今日電話が掛かってきて…」

 机の上に置いてあった紙に気づいた三井が一ノ瀬に聞いてきたので、今日電話があった内容を紙に書いてあることを補足しながら説明をする。

「俺、メモの取り方とか分かんなくて。一応片付けしてた途中に見た書式に似せて書いてはいるんですけど、違う部分とかあったら教えてくだされば訂正しますんで。ああ、その電話して下さった原田さん、ここの常連さんなんですね。お陰で初めての対応でも大丈夫でした」

 全く、課長が教えてくれないからあたふたしたんですよ、という言葉はすんでのところで飲み込む。すると紙をじっと紙を見ていた三井がガバッと顔を上げ、一ノ瀬のほうを驚いた顔で見つめてきた。

「え、なに。なんです?なにか不備が「あんた、すごいよ」え?」

「こんな一発で書き取り上手く行く人初めて見た。しかも長々とした伝言内容をきっちりと纏めるセンスもあると来た…」

 なんだか分からないけどどうやら三井は褒めているらしい。一ノ瀬はわけが分からないのだが。

「あ、ありがとうございます?」

「…一ノ瀬」

「はい」

 三井が真剣な表情をしてこちらを見てくるので、一ノ瀬は自然と背筋がのびる。

「業務内容を教えてあげよう」

「え、本当ですか!ありがとうございます。まずはなにから…」

「明日、朝一でここに来るように。オフィスには顔を出さなくていいから」

 はい、と渡された紙には住所が書いてあった。どうやら一ノ瀬の家から徒歩10分くらいの距離のようだ。

「あれ、ここ俺んちから近いですよ。徒歩で行けます」

「なら都合がいい。じゃあ、明日忘れずに来るように、業務内容の事はそれからだ」

「え?今から教えてくれるんじゃないんですか?」

 てっきりそのつもりでいたので、少々気が抜けてしまった。

 顔を上げて課長を見ると何やらバックの中から一つのカードを出して、一ノ瀬の手に握らせてきた。それと同時に終業のチャイムが鳴りだす。

「なんですか、これ?」

「今日の業務時間はまもなく終了だから私は帰るわ。明日このカードキーを使ってそのメモにある建物内に入って」

 それじゃ、というと三井はさっさと部屋から出て行ってしまった。きっと去り際に掛けた言葉も聞こえていないだろう。

「あ、お疲れ様で……行っちゃった。帰るの早いな」

 結局このキーは明日の朝使うのだろうが業務内容になんの関係があるのだろうか?というか原田さんの伝言内容についての処理業務はよかったのだろうか。

 今日で伝言課に来て3日になるが、全く業務がわからない。というか掃除くらいしかしていなくて、本当に此処は俺の職場なのかと不安になってきた。

(俺の仕事って、“掃除係”兼“書類整理担当”だよな……これ、お給料内で収まる仕事か…?)


 自分の行く末が日に日に心配になる一ノ瀬であった。
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