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伝言1
7 手渡しの大切さ
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原田さんは「殆ど電話で話したことなんだけど」と前置きをしてから、学生時代の話をしだした。
女学校の同級生であった佐久間さんとは同学年ではあるが一度も同じクラスにらなったことはなかった。だが彼女は学年でも頭か良く、成績表を廊下に張り出されるときはいつも1位でさらにテニス部にも入っていてレギュラーで1年生のときからシングルで県大会にもでているような、まさに文武両道な生徒であった。その為、彼女のことはみんな知っていたしもちろん自分もそうだった。だがたかが同級生というだけで話した事もなければ、向こうも自分のことは名前すら知らなかったのだろう。
だが一度だけ、佐久間さんに関わったことがあった。もっとも、“関わった”というだけで間接的にだったから多分佐久間さんは覚えていないだろうが。
それは2年生の夏休み後半のことだった。
原田さんは1年のころからよく図書室に通っていた。もともと本を読むことが好きだったからという単純な理由だったが、一番はこの女学校の膨大な図書室の蔵書数にであった。ここは昔、私立の図書館として長い間利用されていた建物だったのだが所有者の人がどうしても手放さなくてはいけなくなり、当時町で地主をしていた大富豪によって土地ごと買い取られ今の女学校が図書室に併設される形で建てられた。その為、普通の学校の図書室の5倍は蔵書数があって読者好きの原田さんにとっては楽園だった。
その日は、日が高くなって暑くなる前に図書室に向かったためいつもより30分くらいはやく図書室に付き、窓から少しはなれた本棚のと通路の間にある机に座り本を読もうと椅子を引いた。
すると、机の下に一冊のノートが落ちているのを見つけた。原田さんはそれを拾い表紙を見ると、題名の所にはテープのようなものが貼られ下の方にちいさく『Yuki.S』と綺麗な筆記体で書かれていた。
(これって、もしかして佐久間さんのかしら?)
苗字でさ行から始まる人はこの学校に沢山いるが、“ユキ”という名前の子はすくなくとも自分は”佐久間ユキ”しか知らなかった。
(このノート、多分忘れものだよね…届けたほうが良いかしら…でも佐久間さんに直接は無理よね)
そうして悩んだ結果、下駄箱に入れることにした。
(そういえば、中には何が書いてあるのかしら?)
きっと成績優秀な佐久間さんのことだから図書館で勉強していたのだろう。ノートには表紙のような綺麗な字でまとめてあるのかもしれない。
(ちょっとだけ…いいよね)
少し後ろめたさがあるが、表紙を開き一ページ目をめくる。
すると予想していたような文字でぎっしり埋められたノートではなく、縦書きの文章がそこには書かれていた。
「これは…」
私はパラパラとページをめくり、その文章に釘付けになっていた。
「これ、小説じゃない…まさか佐久間さんが書いたの…?」
驚いた原田さんは開く前の戸惑いなど無かったかの勢いでその文を読み進めていく。ノートの3分の2まで書かれた文章はなんと小説だったのだ。まだ完結していないようで行の端に日付けがかかれていた。
(この日付、昨日のだわ…もしかすると此処で毎日書いているのかしら)
きっとここにノートがあるということは昨日佐久間さんがここに来たということだ。この小説はいくらか前から書き始めたのだろうが、ノートを使いきる程小説を書き上げられるなんて控えめに行っても凄い。
しかも、内容もまた惹きつけられるようなものがある。自然な文の中に強い彼女の意思のようなものが筋としてしっかり練りこまれてある。
「ノート、返したほうがいいわよね…。でもどうやって返そうかしら…」
私だって本好きだから少しくらいならと、小説を書いてみたことはある。だから、書いた小説を人に見られるのが恥ずかしいかもしれないということくらい分かる。しかも、故意ではないのなら尚更だ。
悩んだ挙句結局私はそのノートを見なかった事にした。続きは気になるが、自分のせいでこれを完結できなくなってしまっては余計残念だからだった。
そして、学生の原田さんはいつかこの小説の完成を見たいと願ったのだった。
「とまぁ、こんな事もあったのよねぇ…」
「へぇ…原田さんは佐久間さんの小説を見たんですね。同窓会ではその話はしなかったんですか?」
「まあ、この歳でしょう?もう、すっかり忘れちゃってて…。昨日の電話で思い出したのよ」
原田さんはどこか遠くを見つめて言った。
「それでね、一ノ瀬くん」
「(い、一ノ瀬“くん”?)はい、なんでしょうか」
「私が返して欲しいという依頼をしたのには、こういうわけなのよ」
「…といいますと?」
言葉の意味が分からず、一ノ瀬はその言葉をそっくりそのまま聞き返した。
「つまりね、あのとき“手渡し”で返せなくて言えなかった事を貴方に“手渡し”でお願いしたいの」
原田さんは一ノ瀬の目をしっかりと見つめ、しっかりとした口調でそういった。
その時、一ノ瀬は原田さんが“手渡し”が大事だと言った意味を、なんとなくだが分かった気がした。
「…わかりました」
一ノ瀬は原田さんの目を見て言った。
「原田さんの伝言、しっかりと承りました。わたくし、伝言課一ノ瀬が責任持ってお伝えいたします」
「はい、よろしくお願いします」
原田さんは春の日差しの様に、にっこりと笑った。
女学校の同級生であった佐久間さんとは同学年ではあるが一度も同じクラスにらなったことはなかった。だが彼女は学年でも頭か良く、成績表を廊下に張り出されるときはいつも1位でさらにテニス部にも入っていてレギュラーで1年生のときからシングルで県大会にもでているような、まさに文武両道な生徒であった。その為、彼女のことはみんな知っていたしもちろん自分もそうだった。だがたかが同級生というだけで話した事もなければ、向こうも自分のことは名前すら知らなかったのだろう。
だが一度だけ、佐久間さんに関わったことがあった。もっとも、“関わった”というだけで間接的にだったから多分佐久間さんは覚えていないだろうが。
それは2年生の夏休み後半のことだった。
原田さんは1年のころからよく図書室に通っていた。もともと本を読むことが好きだったからという単純な理由だったが、一番はこの女学校の膨大な図書室の蔵書数にであった。ここは昔、私立の図書館として長い間利用されていた建物だったのだが所有者の人がどうしても手放さなくてはいけなくなり、当時町で地主をしていた大富豪によって土地ごと買い取られ今の女学校が図書室に併設される形で建てられた。その為、普通の学校の図書室の5倍は蔵書数があって読者好きの原田さんにとっては楽園だった。
その日は、日が高くなって暑くなる前に図書室に向かったためいつもより30分くらいはやく図書室に付き、窓から少しはなれた本棚のと通路の間にある机に座り本を読もうと椅子を引いた。
すると、机の下に一冊のノートが落ちているのを見つけた。原田さんはそれを拾い表紙を見ると、題名の所にはテープのようなものが貼られ下の方にちいさく『Yuki.S』と綺麗な筆記体で書かれていた。
(これって、もしかして佐久間さんのかしら?)
苗字でさ行から始まる人はこの学校に沢山いるが、“ユキ”という名前の子はすくなくとも自分は”佐久間ユキ”しか知らなかった。
(このノート、多分忘れものだよね…届けたほうが良いかしら…でも佐久間さんに直接は無理よね)
そうして悩んだ結果、下駄箱に入れることにした。
(そういえば、中には何が書いてあるのかしら?)
きっと成績優秀な佐久間さんのことだから図書館で勉強していたのだろう。ノートには表紙のような綺麗な字でまとめてあるのかもしれない。
(ちょっとだけ…いいよね)
少し後ろめたさがあるが、表紙を開き一ページ目をめくる。
すると予想していたような文字でぎっしり埋められたノートではなく、縦書きの文章がそこには書かれていた。
「これは…」
私はパラパラとページをめくり、その文章に釘付けになっていた。
「これ、小説じゃない…まさか佐久間さんが書いたの…?」
驚いた原田さんは開く前の戸惑いなど無かったかの勢いでその文を読み進めていく。ノートの3分の2まで書かれた文章はなんと小説だったのだ。まだ完結していないようで行の端に日付けがかかれていた。
(この日付、昨日のだわ…もしかすると此処で毎日書いているのかしら)
きっとここにノートがあるということは昨日佐久間さんがここに来たということだ。この小説はいくらか前から書き始めたのだろうが、ノートを使いきる程小説を書き上げられるなんて控えめに行っても凄い。
しかも、内容もまた惹きつけられるようなものがある。自然な文の中に強い彼女の意思のようなものが筋としてしっかり練りこまれてある。
「ノート、返したほうがいいわよね…。でもどうやって返そうかしら…」
私だって本好きだから少しくらいならと、小説を書いてみたことはある。だから、書いた小説を人に見られるのが恥ずかしいかもしれないということくらい分かる。しかも、故意ではないのなら尚更だ。
悩んだ挙句結局私はそのノートを見なかった事にした。続きは気になるが、自分のせいでこれを完結できなくなってしまっては余計残念だからだった。
そして、学生の原田さんはいつかこの小説の完成を見たいと願ったのだった。
「とまぁ、こんな事もあったのよねぇ…」
「へぇ…原田さんは佐久間さんの小説を見たんですね。同窓会ではその話はしなかったんですか?」
「まあ、この歳でしょう?もう、すっかり忘れちゃってて…。昨日の電話で思い出したのよ」
原田さんはどこか遠くを見つめて言った。
「それでね、一ノ瀬くん」
「(い、一ノ瀬“くん”?)はい、なんでしょうか」
「私が返して欲しいという依頼をしたのには、こういうわけなのよ」
「…といいますと?」
言葉の意味が分からず、一ノ瀬はその言葉をそっくりそのまま聞き返した。
「つまりね、あのとき“手渡し”で返せなくて言えなかった事を貴方に“手渡し”でお願いしたいの」
原田さんは一ノ瀬の目をしっかりと見つめ、しっかりとした口調でそういった。
その時、一ノ瀬は原田さんが“手渡し”が大事だと言った意味を、なんとなくだが分かった気がした。
「…わかりました」
一ノ瀬は原田さんの目を見て言った。
「原田さんの伝言、しっかりと承りました。わたくし、伝言課一ノ瀬が責任持ってお伝えいたします」
「はい、よろしくお願いします」
原田さんは春の日差しの様に、にっこりと笑った。
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