光の声~このたび異世界に渡り、人間辞めて魔物が上司のブラック企業に就職しました

黒葉 武士

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第1章 光と「クロード・ハーザキー」

23話 食料問題

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  俺が魔石と同化したあの日から、7日が経過した。

 今日は一人で湧き水を汲みに来ている。

 魔物は周囲300メートルの範囲に、度々現われているが、なんとなく近づかないようにしているので、あれ以来、まだ出会っていなかった。

――正直、一捻りと言われても怖いものは、怖い

 ヒカリによると、俺が同化した魔石のサイズは、この周辺の魔物と比べてかなり大きいため、魔物の方が恐れて近づかないらしい。

 それを言うなら、ヒカリの魔石の方が絶対大きい・・・と思ったが、ヒカリは完全な生物ではない上に、パソコンのボディで覆われているため、魔素がそこまで漏れ出していないとのこと。
 もっと強い魔物になら、漏れ出している魔素を感知されるかも知れないが、この近くには、そんな魔物はいないので問題ないらしい。

 ヒカリの言う強い魔物が、どの程度の強さの事を言っているのかは分からないが、マンションを襲った、あの岩の男オーガとかが来たら、あっさり死んでしまう未来しか見えないので、出会わないことを祈ると同時に、万が一出会ってしまったら、全力で逃げたいと思う。

 魔物と出会わない生活は結構楽しかった。

 魔石のおかけで、身体能力も飛躍的に伸びている。

 湧き水のおかげなのかは分からないが、日に日に調子も良くなっていた。
 昨日走るスピードより、今日走るスピードのほうが速く感じる。

 ヒカリは、同化が進んでいる証拠だと言っていた。

 それに、魔物を倒して魔素を吸収すれば、もっと効率よく強くなるとも言っていたが、正直、今の分に結構満足しているので、そこまで欲張る必要はないかな・・・と思う。
 結局は、強いのがきたら全力で逃げちゃうし。

 ただ、一つだけ心配なことはある。
 食糧の在庫だ。
 
 ぼ毎日、非常食とインスタント食品。
 
 き水のおかげなのか、魔石のおかげなのかは分からないが、健康そのものであったが、食糧に限りがあることが重大な問題だった。

 あちこちの家から集めてきた分も、1日1食の計算でだいたい3週間が限界。
 1日に3食食べると、あと1週間しか持たない。

 ヒカリによると、魔石の効果により周囲の魔素を取り込んでいるので、空腹さえ我慢出来れば、今までよりは長く生きられるらしい。

 まぁ、多少長く生きられても、そのまま何も食べなければ、遅かれ早かれ死んでしまうことには変わりないので、結果は同じなのだが・・・。

 ヒカリ自身もソーラーパネルで充電しなくても1週間くらいは持つらしいしが、俺が突然死んだりすると、やはり充電出来ずに力尽きてしまう。

 食糧は大切だ。

 ここで生活するにしても、移動して人里を目指すにしても、そろそろ考えなければならない時期に来ていた。

 洞窟に戻り、ヒカリに相談してみる。

「ヒカリ、食糧のことなんだけどさ」

 椅子の上に置かれたヒカリが答える
『はい?』

「これからどうすればいいと思う?」

『一番現実的なのは、やはり狩りをすることです。動物か魔石喰いの魔物なら肉が獲れますので、解体すれば、そこのバーベキューセットで焼けます。幸い焼肉のタレ残っていますし』

「タレって・・・そこ大事か? でもやっぱり狩りか・・・やっぱりそれが一番現実的だよね。でも出来るかな?」

『戦闘力としては問題ないと思います』

「でも動物って、普通、弓とかで狩るんじゃないの?」

『そうですね。でも玄人くろとさんの身体能力であれば簡単です。走って捕まえてキュッて感じですよ』

「素手で動物とか殺せないよ・・・ほんと」

『じゃナイフでなら』

「そういう事でもないんだよな・・・問題は距離かな。近くで血が見れないかも。遠くからナイフ投げるくらいが限界かな」

『そもそも、ナイフを投げて仕留めるのは難しいと思いますよ』

「そうだよな。それに仮に成功したとして、解体が無理だよ。それは100%無理」

『そうですか・・・でしたら思い切って街を探しに旅立ちますか? 文明の進み具合は分かりませんが、うまくいけば、食糧も手に入りますし』

「そうか・・・やっぱりそっちの方が現実的か・・・」
 ヒカリの提案に真剣に悩んでしまう。

『では、まずは行動範囲を拡げてみましょう。もし人間が感知に引っかかれば、街まで行ける可能性が上がりますし、最悪、道さえ見つけられればなんとかなるかも知れません』

「そうか、道か・・・。だいたいここがどこで、周囲がどうなってるかさえ分からないし。移動も洞窟周辺だけで、遠出をしたことがなかったからな。感知出来る3キロ圏内でさえ未知の世界だよ」

『そうですね。では、今日は、荷物を整理して、明日探検に行きましょう』

「そうだね」

 その後、早めに夕食を作った。
 いつもより多めに作ったのは明日のためだ。
 
 食事が終わってからは、洞窟の中を少し整理した。

 防災リュックの中身と、他のカバンの中身も取り出して、一度全てを拡げてから種類別にしまうことにした。
 予想外なところから、半端な食糧は出てきたが、5~6食分増えただけで大きな足しにはならなかった。

 使える衣服を分けて、使えそうにないものと別にする。
 きれいなタオルと服は貴重なので丁寧にカバンにしまっておく。
 
 塩や醤油などの調味料は全てひとまとめにして袋にしまった。

 薬類と貴金属、電池など頻繁に使わないものは、同じカバンに詰め直した。

 普段使いの鍋などの調理器具や食器類、ガスボンベなどは、使っていないバーベキューセットの網の上に置いておく。

 武器になる包丁やモップ槍は、机の上に。

 ヒカリはそのまま椅子の上が定位置だ。

 使い終わったガスボンベなどのゴミは、外に出して目立つのも嫌なので、洞窟の一番奥に並べておいた。

 整理してみるとよく分かる。
 持ってきた荷物も、かなり減っていた。

 それにしても、よく今まで生活できていたものだ。
 ヒカリには改めて感謝を伝えなければならないと思う。
『私こそ感謝していますよ』

――あっ・・・また、聞かれてた。

 ただ考える場合と、伝えたくて考える場合の違いが全く分からない。
 早急に考えるべきは、食糧よりも、こっちの方が先なのかもしれない。
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