黄昏一番星

更科二八

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序章 新天地と仲間との出会い

80話 嫉妬と悪印象

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「私が聞きたかった事は聴けたわ。
ありがとう。」
スズナの話は終わったようだ。
俺はひとつ気になっていたことがあるので聞いてみる。

「結局何から逃げて来たんだ?」
「聖女よ、いや旦那かしら?」

いまいち話が読めん。
「夫婦仲悪いのか?」
「悪くないわ、愛してるわ。
でもちょっと最近聖女のために入れ込みすぎだと思うのよね。美人だし。
だからちょっと私のささやかな反抗ね。
妬いてるのよ」
「大変だな」
「大変よ疎かになった仕事も私がやるのよ!」
「うわ」
そこからスズナは止まらなかった。
聖女の文句、仕事の愚痴、使用人への不満、他の貴族たちへの怒り、昔の俺の嫌いなところ。
次々に出てくる愚痴にただ聞き役に徹した。
女って恐ろしい。

それでも家族への不満は語らないからほんとに愛してるんだろう。
スズナが帰る時間が来てそれで愚痴聞きタイムは終了した。

「じゃあね、会えて良かったわ」
「ああ、俺も嬉しかった」
そしてスズナは去っていった。
目的はあったが駄弁りにきただけって感じだ。
昔の品がどうこううるさく言っていたのはなんだったのか。
多分昔は俺は一応貴族だか今はなんでもない奴だしどうでもいいか、ぐらいだったのかもな。



ランダバウト辺境伯邸へ帰る馬車の中でスズナは先程の事を思い出していた。
8年ぶりだっただろうか、彼に会うのは。
最初に彼に会ったのは確か私が16の初夏の頃だった。
一つ下の彼の双子の姉百花とは小さかころから仲が良く、頻繁に会っていた。

百花が双子の弟が上京してくると言うので私も気になり首都の外の街道まで2人で迎えに行ったのだった。
彼は生まれてすぐに親元を離されて遠くにいる祖父に預けられていた。
百花も父親でさえこれまでに数回しか会った事は無いと言っていた。
理由はこの頃は知らなかったが、特殊な家なので気にしてはいなかった。
百花から弟は面白いやつだと言われ、少し不安になりながら到着を待ったがその不安は的中した。

街道の先からやって来たのは大きな熊の魔物の死体とそれを引きずるゴツい男。
こちらに気付いたゴツい男はあろう事か褌一つで体も泥まみれ、異様に膨らみの目立つ褌を揺らしながら私たちの下へ笑顔で駆け寄って来たのだ。
それを見た百花は爆笑していた。
私はこんなにも品の無い男を見たのが初めてで全身鳥肌が立っていた。
この時は2度と会いたく無いとまで思ったが、家の付き合いなどで度々会うことになってしまった。

その時も相変わらず品がなく彼の印象は良くなる事はなかった。
しかし実力は認めざるを得なかった。

急に家督を捨て素性を隠して軍に入隊した彼はわずか1年足らずで軍の最高位部隊の副隊長まで上り詰めていた。その後素性はバレていたが、親の威光に頼らず、平民として貴族の家の人間で溢れる軍の上位に入り込んだ事は異例で彼の実力を物語っていた。

その時には相変わらず好きにはなれないが、彼の強さはだけは頼りになるとは思っていた。
そして今日感じた事は昔と変わらずゴツく男臭く近寄り辛い印象だったが今の方が落ち着いた様に感じ少し頼り甲斐もあるかと思った。
ただ、いいコマにはならないだろう。
扱い方を間違えれば家が燃やされかねない
そう言うことするやつだ。

「話し相手ぐらいが充分ね」

思ってること吐き出したらすごくスッキリした。
たまにはこうするべきだなと思った。
「今度は家に呼んで旦那に許嫁候補だったと言って合わせたら嫉妬してくれるかしら・・」

ちょっとした仕返しを考える。
いや、もし旦那が対抗意識を燃やしてしまったら。タイガは旦那と勝負をするだろう。タイガは強い。旦那の漢としての尊厳が傷つくかも知れない。逆にタイガに感化されてしまったら、旦那が漢くさくなってしまう。
今が丁度いいのだ。
「合わせてはいけないわ」
タイガは危険
スズナの中での印象は結局昔と変わらない位置で落ち着いた。
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